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しおりを挟む速すぎるな。ゲームでも何度もみたこの連撃。
1秒も無駄のないボタン操作で捌き続けなければいけない死にゲー。
コンマ単位で敵の攻撃に合わせる必要のあるアクションの連続を俺は短剣で受け流し続ける。
これがイベントバトルと同様の扱いだとすれば、このまま耐え続けていけば、いずれ俺の勝利条件が満たされる。
だがまあ――やられっぱなしは好きじゃない。
刀の連撃に両手の短剣を合わせた俺は、力強く攻撃を打ち上げた。
次の動作までに隙を見せたフォッスルの顔面に、短剣を振り抜いた際の力を利用して蹴りを放ち、弾きとばす。
ゲーム通り、素直に従うと思わないことだな……!
叫んでやりたかったが、部下たちに頭がおかしくなってしまったと思われるわけにはいかないので、
心で叫ぶ。
ゲームの未来を少しでも良くするために、俺はゲーム世界で頑張り続けた。
だが……結局エンディングは変わらない。
制作者の用意した以上の物語はどこにもない。
……どれも誰かが悲しまなければエンディングしかなかった。
だが、今はその未来を変えることだってできる。
ゲーム通りに物語が進まないというイレギュラーがあったとしても、それはつまり俺の知るエンディング以外に辿り着ける可能性が高まっているわけでもある。
「……おまえは――」
フォッスルは顔を撫でてから……刀を手に持ち、翼を大きく広げた。
大きく飛び上がった彼は俺をじっと見てから、街の外へと飛び立った。
「れ、レイス様が……あれほどの魔族を撃退させるなんて……」
北の大陸の戦争では魔族一人に対して、人間複数で対応しているみたいだからな。
まあ、魔族にもレベル差があるからなんとも言えないが。
周囲の兵士たちの歓声があがるなか、慌てた様子でこちらに駆け寄ってくる。
「……れ、レイス様! お怪我はありませんか!?」
「何もできず……申し訳ございませんでした……」
「いや、気にするな。むしろ、下手に動かれて狙われたら庇いきれなかった可能性もある。いい判断をしてくれた」
実際、フォッスルが周囲を狙っていたら俺はその対応で今よりも危機的状況に陥っていた可能性は高い。
「……レイス様! 魔族が逃亡しましたが……どうしますか?」
「……無理に追う必要はない。それよりも街に異常がないか見回りに行ってくれ」
「わ、分かりました!」
フォッスルを生かしておくことは、のちのちに何かしらで助けになってくれるかもしれないからな。
第一、フォッスルはまだ本気ではないし、追いかけて本気モードになられたらどうなるか分からない。
物語を大きく変わることになるかもしれないが、それがよりいい方向に変わるように俺としてはしたいからな。
わざわざ敵を本来倒さなくてもいい場面で倒して、その先をピンチにしなくてもいい。
俺はひとまず、フィーリア様たちと合流するため、空間魔法を発動した。
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