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 俺が嫌な気配を感じて庭に出ると、そこには一体の魔物が来ていた。
 彼を止めるため、兵士たちが戦っていた。
 ……皆、足止めをするための陣形だ。それだけ、その魔族がやばい存在というのがわかる。
 俺も、軽く絶望していた。

「このタイミングで動くのは、もっと下っ端の魔族だと思っていたんだがな」
「レイス様……! お逃げください!」

 こちらに無機質な目を向けてきたのは……魔族の中でも超高難易度と呼ばれるフォッスル。
 その美貌は女性プレイヤーに人気のある美しいものだが、フォッスルの強さは絶望的だ。

 スザクとセイリンの二人で対応するはずのこのストーリーでももう少しあとで対峙することになる魔族なのだが、やはり少し物語がおかしくなっている。

 街の方にも、一体魔族が入り込んでいるな。強大な魔力が恐らくそれだろう。
 そちらも心配ではあったが……ザンゲルとルーフが向かってくれているようだ。
 彼らを信じて、任せてしまえばいいだろう。

「おまえがここの主か」

 フォッスルがこちらを見てくる。

「そうだ」
「ここにセイリンという魔族がいるはずだ」
「知らないな」

 俺がそういうと、フォッスルから発せられる魔力が跳ね上がった。

 ……正直言って、勝てるかどうかは分からない。
 だって、原作でも俺は何度もやられてコンティニューしてたし。

 もしものために、リームたち含めてフィーリア様のところに逃しておいて良かったな。
 フィーリア様のもとにはヘルからの干渉があるかもしれないからな。
 リーム、スザク、セイリンがいれば……さすがに何かあっても対応できるはずだ。

 ……さて、俺はこいつに集中しないとな。

 フォッスルは腰に下げていた刀へと手をやった次の瞬間、俺の眼前に迫っていた。
 ……出たよ、即死攻撃の居合一閃。
 俺はその攻撃を知っていたため、短剣を合わせて弾いた。

 後退しながらフォッスルの次の動きをみる。
 彼は魔力を爆発させて生まれたエネルギーを利用した超高速移動が得意、だそうだ。
 どうやってるのかは分からないが、それによる速度はステータス以上のものであり、はっきり言ってゲームで見ていなければどれも初見で対応は難しいものばかりだ。
 
 連続で襲いかかってきた刀をすべて紙一重で捌き切った俺は、短剣を振り抜く。
 かすかにフォッスルの頬を掠め、彼は後退する。

「……人間のわりに、なかなかやるな」
「それはどうも……」

 ……正直、俺も驚いている。フォッスルの強さに。
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