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しおりを挟む「ほらほらほら! あの時の兵士たちだよ! オレたちを解放しにきたって言ってたじゃん!」
「………………ば、馬鹿弟。あんなのは……その嘘に決まっているだろう! 私たちを奴隷にするために連れ出そうとしていたに決まっている!」
「ああもう! 馬鹿妹に従ったせいで、無実の罪がマジの罪になっちゃったじゃんか!」
……そういえば、兵士たちが攻撃されてそのまま逃亡されてたな、ゲームだと。
恐らくセイリンが勘違いして、二人で兵士を攻撃してそのまま近くの地下水路へと逃げ込んだのだろう。
顔を赤くしていたセイリンだったが、ぴくりと反応する。
俺もすぐにフィーリア様を抱え、空間魔法へと飛び込んだ。
「え!?」
フィーリア様の驚きの声が響いた瞬間、俺たちがいた場所を何かが過ぎ去った。
俺はスザクたちの近くへと移動しながら、顔を顰める。
「うわ、なにこれお化けか!?」
スザクが叫びながら、長剣を構える。
「グランドレイスだ。この地下水路に住み着いている、とは聞いていたが……まさかここまでくるとはな」
ボス戦自体はもう少し先で発生していたのだが、俺たちに気づいてやってきてしまったのかもしれない。
「……どうするんだ?」
問いかけてきたセイリンはすでに戦闘態勢へと入っている。フィーリア様も剣を構えている状況だ。
……原作通りなら、スザクとセイリンで一応倒せるボスだ。
そこに俺もいるのだから、問題なく倒せる相手ではある。
「俺の魔法で逃げてもいいが、万が一こいつが外に出たら一般市民にとっては大変なことになる。ここで仕留めるのに協力してくれ」
「了解だ」
セイリンがすぐに魔銃を構え、放つ。グランドレイスの体にあたり、わずかにダメージを与える。
……魔法攻撃は当たるのだが、グランドレイスは向こうが攻撃をしてくる時以外は実体がないんだよな。
なので、突っ込もうとしたスザクの首根っこを捕まえる。
「うぎ!? 何するんだよ……っ」
「グランドレイスは魔法攻撃以外は当たらないから、無理に攻撃はするな。カウンターを狙うようにしてくれ」
「まじかよ……っ! それってめちゃくちゃ大変じゃないか?」
「大変だが……すぐ終わらせる」
グランドレイスは、魔銃で攻撃するセイリンとすでに魔法攻撃を行っているフィーリア様に狙いをつけているようだ。
「……そっちにいくぞ!」
「おいおい、どうやって攻撃止めるんだ!?」
セイリンとスザクの声が響くなか、フィーリア様が迎え撃つために剣を構える。
ただまあ……真っ直ぐに動いてくれるなら狙うのは簡単だ。
俺は空間魔法を発動する。
すぐさま、俺に気づいたようだが、遅い。
その体を真っ二つにするように空間魔法で切り裂いた。
「ぎいいいい!?」
大きな悲鳴をあげながら、体を激しく左右に揺らす。
その体がゆっくりと消えていき、あとにはドロップアイテムだけが残った。
空間魔法による切断も、魔法攻撃に含まれてくれるんだな。
「……あれほどの魔物を一撃、か」
セイリンは魔族としての力が強いからか、魔力の探知能力がかなり高いようだ。
魔物が倒されたことで、スザクは安堵した様子でその場に座り込んだ。
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