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 領主としての問題は、ひとまず片付いた……というかあとは時間経過を待っての結果を見てからだ。
 ゲームなら時間スキップもできるんだが、さすがにそういった機能はない。

 次の問題は……ゲーム本編開始が、近づいてきているということだ。

 俺はこのゲームのシステム面は好きだった。
 自分の好きな武器を作ったり、拠点を強化、拡大していき、自分の好きな仲間を集めて育成していく。

 そういった部分がとても気に入っていたのだが、不満点もある。
 それは、ストーリーだ。

 このゲームではマルチエンディングを採用しており、エンディングの数は細かいものまで集めればかなり存在している。

 ただ、その大半はバッドエンドだ。……まあ、主人公の出生や登場人物たちの設定を考えると、なかなかハッピーエンドにはなりにくい問題もあるんだが、それにしたって多すぎるのだ。

 たぶんだが、主人公が死ぬようなエンドを製作陣が好きなんだろうな。

 つまりまあ、俺はレイスくんに転生して絶望していたが……もしも主人公に転生していたとしたら、それはそれで絶望していたことだろう。
 ぶっちゃけていうなら、別のゲーム世界に転生したかった、というのが本音だ。
 それこそ、脳死で遊べるようなエロゲーとか、ギャルゲーとか。俺の嫁、ともいえるようなキャラクターが出てくる作品の世界だったらどれほど良かっただろうか……。

 まあ、ゲーム世界に転生できただけでも贅沢な話なんだから、これ以上の望みは言うまい。

 ゲーム世界にでも転生していなければ、今のような立場で生活なんて不可能だろうしな。

 ひとまず、破滅のきっかけの一つを変えることができた今の俺としては……できれば、この物語をハッピーエンドで終えてほしいのだが……主人公がどのルートを選んで物語を進めるか分からないんだよなぁ。

 下手すると、世界そのものが破滅する可能性もあるわけで……なるべく早めに主人公を見つけ、やばいルートに踏み込もうとしていたら、ストップをかけたいんだよな。

 主人公にはハッピーエンドで終えて欲しいのだ。俺のためにも。

 だから、これから俺は……主人公をハッピーエンドに誘導するために干渉していくつもりなのだが、一体どこで主人公に出会えばいいのやら。

 なんだかんだ、家を継いでしまったので……士官学校にも通う理由がないどころかその余裕もない状況だ。

 今後、どのようにするかはまだ決めあぐねているが、主人公の居場所を特定しておいたほうが便利だとは思うのだが……まだ見つかってないんだよな。

 一応、ゲームでのデフォルトネームである「スザク」で探してもらっているのだが、情報がない。
 まあ、この世界的に個人名まできちんと管理していることは少ないからな。
 見つからないのは仕方ない。

 ただ、俺は今年の士官学園に受験者たちのリストを見ながら、思わず呟いてしまう。

「……スザク、いないな」

 主人公のデフォルトネームが……そこにはなかった。
 考えられる可能性は二つ。
 スザクが受験しなかったか、別の名前で受験したのかどうか。
 
 別の名前だとしたら、もしかしたらスザクも転生者という可能性もある。
 もしも転生者なら喜ばしい限りだ。ちょっと原作キャラクターを奪ってしまっているが、是非ともハッピーエンドまで自力で向かってほしい。

 ……ただ、俺はそこまで楽観的ではいられなかった。
 俺の脳裏には、最悪の可能性が浮かんでいた。

「……まさか、な」

 スザクが士官学園に受験しないストーリーも……ある。
 ただ、そのストーリーは、すべてのエンディングを見た後に行ける隠しルートだ。……隠しルートではあるのだが、ストーリーはかなりしっかりとある。

 ――スザクが、すべての生物を破滅へと導くルートだ。
 このゲームの基本的なストーリーは、魔族と人間の陣営のどちらかにスザクが力を貸していくというものだ。
 スザクは実は魔族と人間の混血であろ、選択肢によって魔族か人間のどちらに協力するかを選べるのだが……この隠しルートではスザクがそのどちらも滅ぼし、最後には自身も死ぬという最悪なルートになる。

 これが製作陣が最も好きなルートらしいので……正史ルートになる可能性は十分にあるかもしれないが……だとしたら、早めに手を打たないといけない。

 士官学園に入学しないとなると、スザクの居場所はゲームでは名言されていないから、出会える可能性が格段に下がる。

 こうなったら、情報屋に当たるしかないか。

 ゲームでは、知らないことがないというほどの凄腕の情報屋だったので、接触できれば……恐らく情報を得られるはずだ。
 ただ、厄介な相手でもある。情報屋の物語を進めていけば、ゲーム終盤で仲間にできるのだが……それだけハイスペックなキャラクターでもあるわけだ。

 警戒、されるかもなぁ。

 とはいえ、スザクがいつ頃から動いているのか分からないが、悠長にはしていられない。
 情報屋だって、情報をすぐに仕入れられるわけではないので、俺は早速情報屋を探しに向かうための準備を開始した。
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