ゲームの悪役に転生した俺が、影の英雄ムーブを楽しんでたら、俺のことが大嫌いな許嫁にバレてしまった

木嶋隆太

文字の大きさ
上 下
23 / 107

23

しおりを挟む

 確かにどこかで見覚えがあると思ったら、先週くらいに助けた冒険者じゃないか。
 どうやら俺と同一人物とは気づいていないようだ。
 
 ふふふ。いかんいかん。ニヤけそうになるのを必死に澄ました表情で誤魔化す。
 表と裏からこのヴァリドー領を支えていくのは案外悪くないかもしれないな。
 普段は普通の貴族として振る舞いつつ、裏ではそういった英雄的活動を行う。
 やっと、俺がやりたかった異世界での生活ができはじめているな。

「俺もその情報については聞いていて、調べてはいるんだが……なかなかなくてな。むしろ、こちらが知りたいくらいだったんだ。何か分かったら教えてくれ」
「へい! もちろんです!」

 最近は、ギルドで依頼を受けることも多くあるからか冒険者たちともうまく交流をできている。
 とりあえず、そこまでの話を聞いた俺は人目のつかないところで空間魔法を発動して目的のダンジョンへと移動した。



 依頼の場所は、ガルナ廃坑と呼ばれている。
 悪逆の森第二層を攻略できる今の俺なら、恐れるような魔物はいない。

 早速、ダンジョン内部を調査していく。
 廃坑内はいくつかの道があるのだが、俺の脳内には完璧な地図がある。
 宝箱はまだ残っているのだろうか……? 興味本位で見てみると、すべて残っているな。

 とりあえず、適当に回収しつつ先に進む。……といっても、特別いいアイテムはないんだけど。
 この世界の宝箱は魔物のように自然に発生することがあるらしい。入手するとしばらくは消滅して、またいずれ再出現するのだとか。

 これを、神様の恵み、と呼んでいるらしい。

 宝箱を回収しながらボス部屋へと繋がる最後の道を抜けると、そこは円形の広場だった。
 まるでボス戦がここでありますよ、とばかりの造りだ。
 実際、ここにボスモンスターが出現するわけで、嫌な気配に顔を向けると、天井から一体の魔物がふってきた。
 不意打ちの先制攻撃をかわすと、そいつは苛立ったように声を荒らげる。

「キシャアアア!」

 落ちてきたのは巨大なクモのようなボスモンスター、スパイダーソードだ。

 そのモンスターは、細長い脚が不気味に広がり、その先は鋭利に尖っている。
 見た目はクモのような魔物だが、こいつの武器は系よりもその足だ。

 その鋭い足先をナイフのように扱って攻撃してくる。
 スパイダーソードは跳躍すると、重力とともに鋭い足先を突き出してきた。

 こいつ自体は、他の魔物よりも強い。
 とはいえ、俺にとっては格下だ。
 連続で襲いかかる攻撃をすべてかわし、俺は持っていた両手の短剣を振るう。
 スパイダーソードの足元、関節部分を切り付けると僅かに体が沈む。

 バランスを崩したスパイダーソードは態勢を戻そうとするが、追撃でナイフを振り抜く。
 スパイダーソードの顔面へと振り抜くと、痛みから逃れるように、大きくのけぞった。

 俺がさらに斬りつけようとすると、スパイダーソードは逃げるように跳躍する。
 天井付近にまで移動したスパイダーソードは、その口元をもごもごと動かす。
 糸を吐いてくるつもりだ。

 もちろん俺としては正面から受けるつもりはない。
 空間魔法を俺の体全面に展開すると、スパイダーソードが口から糸を吐いてくる。
 真っ直ぐに襲いかかってきた糸は凄まじい速度だ。
 あれは地面に穴を開けるくらいには威力も頑丈さがある。

 そんなスパイダーソードの一撃に空間魔法をあてる。
 真っ直ぐに伸びてきた系は、俺の空間魔法を貫き、そして――スパイダーソードの体を貫いた。

「ギィ!?」

 この魔法の使い方は便利だな。
しおりを挟む
感想 82

あなたにおすすめの小説

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

ハズレ召喚として追放されたボクは、拡大縮小カメラアプリで異世界無双

さこゼロ
ファンタジー
突然、異世界に転生召喚された4人の少年少女たち。儀式を行った者たちに言われるがまま、手に持っていたスマホのアプリを起動させる。 ある者は聖騎士の剣と盾、 ある者は聖女のローブ、 それぞれのスマホからアイテムが出現する。 そんな中、ひとりの少年のスマホには、画面にカメラアプリが起動しただけ。 ハズレ者として追放されたこの少年は、これからどうなるのでしょうか… if分岐の続編として、 「帰還した勇者を護るため、今度は私が転移します!」を公開しています(^^)

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

悪役貴族だけど、俺のスキルがバグって最強になった

ポテトフライ
ファンタジー
異世界ゲーム『インフィニティ・キングダム』の悪役貴族クラウス・フォン・アルベリヒに転生した俺。しかし、この世界の設定がバグっており、俺のスキルが異常な強さになっていた——『魔王級魔力(SSS)』『戦闘技術(SSS)』『経済操作(SSS)』……チートのオンパレード!? ゲームでは主人公に敗北し、悲惨な最期を迎えるはずだった俺だが、こんなスキルを持っているなら話は別だ。侵攻してくる王国軍を迎え撃ち、領地を発展させ、俺の支配下に置く。 悪役? いや、もはや“魔王”だ。 世界を手中に収めるため、バグスキルを駆使した最強の統治が今、始まる!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...