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第34話
しおりを挟む舞踏会に来てから、一週間が経過した。
私の父が授かった領地は、ルフェルの領地の一部だった。
たまたま、村を管理する人がいないということで小さくはあるがその領地を管理することになった。
さすがに田舎すぎるのでは? と都会暮らしが長かった私は思ったが。
「このくらいのほうがゆったりして落ち着くよ」
「そうね。それに村の人たちも優しいしね」
両親はたいそう嬉しそうだったので、良かった。
そんな私は両親とはともに暮らさず、ルフェルの屋敷でお世話になった。
私の名前はアルフェア・アルースト。ルフェル・アルーストの妻として。
お互い成人していることもあり、すぐに結婚という形になった。正式な式はいずれあげるとして、今はダイル国から押し寄せる魔物の対応に忙しかった。
「アルフェア様! ダイル国の国境沿いで出現した魔物が、こちらへと向かってきています!」
「分かったわ。すぐにルフェルとともに出撃するわ。騎士も準備してちょうだい」
「分かりました!」
騎士にそう指示を出してから、私はすでに準備しているであろうルフェルのもとへと向かう。
ルフェルの書斎をノックすると、彼はやはりすでに出撃の準備を整えていた。
「ルフェル、今日も魔物が大量発生しているみたいだわ」
「そうだね。とはいえ、フェンリルの加護があるからそこまでの脅威ではないけれど……さすがに連日こうも魔物に襲われるとなると大変だね」
「体が鈍らなくていいんじゃないかしら?」
「それもそうだね。キミは随分と元気だね。……さて、とりあえずさっさと終わらせて昼までにはこの屋敷に戻らないとね」
「……ええ、そうね」
昼に、ダイル国から来客の予定がある。
とても重要な相手だ。元々は王都で引き受けるはずだったのだが、オリッカ王からすべての対応はそちらに任せるという判断をもらったため、そういうことになっている。
「ルフェル、それじゃあ……その出撃前に少し、いつものし、してもいいかしら?」
「あ、ああ……」
私はルフェルをちらと見てから、その顔を見る。透き通った彼は少しだから体を下げてきた。
お互いに初めはゆっくりと顔を近づけ、それから……唇を触れた。
軽いキスだ。それでお互い耳まで熱くなってしまった。
「る、ルフェル……いい加減慣れてよ。顔真っ赤よ?」
「……そ、それはキミだってそうじゃないか」
「……そんなことはないわ。私はもう慣れました」
「嘘をつかないでくれよ……とりあえず、出撃しようか」
こくり、と頷いてから私たちは手を繋いで部屋を出る。
と、入り口のところで待っていたフェンリルが私たちの隣に並ぶ。その頭をなでると心地よさそうにしていた。
「いつ入ろうから迷っちゃったよ。お二人とも、仲良しなんだもん」
「……わ、わざわざ口にしなくていいからっ」
フェンリルがからかうように言ってきたので、とにかく頭と顎の下を撫でまくってその口を閉じさせた。
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