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しおりを挟むルルラにだけ見えるように設定をし、カメラの位置もルルラが映るように調整する。
〈ひょっとこ兄貴初めまして!〉
〈おお、とうとう配信開始したのか!〉
配信を開始してすぐに視聴者が500人を超えた。
平日の昼間というのに、暇人が多いようだ。まあ、今の時期だと春休みに入っている学生も多いみたいだしな。
まだまだ視聴者は増えていて、この調子なら1000人は超えそうだな。
ルルラはじっと俺の方を見ている。もう配信が始まっているのだが、まだわかっていないようだ。
〈ルルラちゃん可愛い〉
〈何この生き物……天使か?〉
「え? あ、あれ? お兄様? もしかしてもう配信始まってますか?」
「ああ、そうだ。これから頼むな」
「うえ!? 始まっていたのなら、教えてください!」
〈慌ててるルルラちゃんも可愛い……〉
〈ルルラちゃんの声めっちゃ癒されるわ……〉
〈ていうか、ひょっとこ兄貴のことお兄様って呼んでるのか?〉
「は、はいそうです。何となくそれが一番呼びやすいなって思ったので……」
〈いいなぁ、ひょっとこお兄様……〉
〈もしかして、フェアリーと契約した時に呼び方とかって決められるのか?〉
早速質問が来ている。ルルラは戸惑いながらも丁寧に相槌を打つ。
「聞いてみてください。フェアリーによって、呼びたい言い方とか……色々あると思いますので」
〈ひょっとこ兄貴ー! ルルラちゃんをお嫁にくださいー!〉
「お、お兄様! なんだか、変なコメントさんがきてますけどどうしますか!?」
「嫁に行きたかったらどうぞ自由にしてくれ」
俺が答えると、ルルラはすぐに申し訳なさそうに頭を下げる。
「ご、ごめんなさい。私、今お兄様と契約してますから……」
〈フラれてて草〉
〈羨ましいなひょっとこ兄貴〉
〈ああ、俺も早くフェアリーたんと契約してぇ〉
〈ひょっとこ兄貴! マイたんを僕にください!〉
「おい、今コメントしたやつぶち殺してやるから住所書け!」
「お兄様!?」
ルルラが驚いたように声をあげる。
しまった。俺としたことが。
こほんと咳払いをしてから、勇者の力を使いコメントをしたやつの住所を冷静に特定しておいた。勇者の力って便利。
〈やっぱりこの人シスコンだ〉
〈それも常軌を逸したレベルのなw〉
コメントを分身を通して確認していると、ルルラがむーっと頬を膨らませる。
「お兄様。私のときはまったく怒ってくれなかったですね」
「え? この、よくも俺のルルラにー、怒っちゃうぞー」
「感情、全くこもってないです」
むすーっと余計にルルラは怒ってしまった。
〈仲ええな……〉
〈羨ましいなまじで〉
〈ここまでしっかりしているキャラクターがいるのがやっぱ凄いなこのゲーム〉
〈ていうか、さっきからひょっとこ兄貴なんか戦ってね?〉
〈こいつら『アサシンブレイク』じゃねぇか!〉
コメント欄でルルラたちがやりとりしている間に、『アサシンブレイク』のメンバーを発見したのでひとまず攻撃を仕掛けておいた。
「きょ、今日のお兄様は『アサシンブレイク』の人たちがまた暴れ出したってことで、止めに来てます! 配信の進行は基本的に私がしますね!」
〈おおまじか!〉
〈あいつらメンテ前にまた暴れ出したからな〉
〈ひょっとこ兄貴に助けられました! ありがとうございます!〉
〈やっちまってくださいひょっとこ兄貴!〉
そんな感じで応援されているので、俺はさくっと彼らを仕留める。
……弱すぎた。
対人経験の少なさはもちろん、装備が弱い。
「お兄様が、えっと……頑張って倒しました!」
〈おお、相変わらずひょっとこ兄貴強いな〉
〈ひょっとこ兄貴って何か格闘技とかしてたのか?〉
「お兄様! 質問来てます!」
「格闘技の経験はないが、異世界でちょっと勇者をやっててな……」
「お兄様! またふざけないでください!」
ルルラがむすーっと俺のいつもの冗談だと思っているようだ。
いやいや、本気だぞ? まあでも、本気と思われないような口調や態度で言ったけど。
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