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しおりを挟む「どうした? 寒いのか?」
「お、お兄様。あんな挑発的な動画あげちゃって大丈夫ですか? 狙われたりしないですか?」
「そのときはルルラを盾にして逃げるから大丈夫だ」
「私が大丈夫じゃないです!」
「まあ、大丈夫だ。これで向こうが乗っかってきて、戦争じゃないが戦いに発展するならそれはそれでいい」
向こうが全軍をあげて攻撃してくるというのなら、それに応じて戦うだけだ。
今PKをされて萎えている人たちや、ゲームをやめようとしている人たちの憂さ晴らしのコンテンツ。そして、俺が『アサシンブレイク』を仕留めることによって、再びゲーム世界に平穏が訪れる……みたいな流れを作れれば、プレイヤーが減るということもないだろう。
俺はこの動画を宣戦布告のつもりであげてるからな。
それにしても、登録者数はあっという間に三万人を突破か。
ルルラのショート動画はちょこちょことあげているのだが、こちらからの登録者はあまりいないな。
いいねの数や再生回数は回るのだが、ショート動画はあまり登録者数を稼ぐのには向かないのかもしれない。
そんなことを考えながら、俺はアンタレスの街近くで情報を集めていた。
掲示板に、『アサシンブレイク』の目撃情報はいくらでもある。
こちらで、最新の目撃情報を確認し、奴らを狩っていく。
……お、ちょうど近くにいるみたいだな。
すぐにそちらへと移動すると、冒険者を追っている男女のパーティーを見つけた。
必死に逃げている初心者をいたぶるように追いかけているな。
逃げているプレイヤーたちは、まだゲームを始めたばかりなんだろう。
装備品はチュートリアルを終えたばかりのものであるため、あれは確かにターゲットにされるな。
「そろそろ、仕留めるかぁ?」
弓を構え、嬉しそうな声をあげる男の喉を――俺は背後からかっさばいた。
グロテスクな表現はなく、クリティカルで処理され、弓使いは死ぬ。
「な!? てめ、ひょっとこ兄貴か!」
「すぐに仲間をよべ! ターゲットが出たぞ!」
三人が武器を構えながら、俺を見る。
逃げていた冒険者たちが足をとめ、驚いたように俺を見てくる。
「さっさと逃げな」
「は、はい! ありがとうございます!」
ここで残られても面倒だ。
『アサシンブレイク』も追うつもりはないようだ。
俺の前に立つ三人は、笑みを浮かべる。
「ひょっとこ兄貴……おまえ今、うちで賞金かけられてるの知ってるか?」
「知らん。興味もない」
「おまえを倒せば、三十万ゴールドと好きな装備がもらえるのさ!」
「それ俺が自首したら俺にくれるとかないのか?」
「あるわけねぇだろ!」
大剣を持った男が叫びながら地面を蹴ると、残っていた二人も動き出す。
「知ってるか!? 対人戦にはレベル差なんてあってないようなものなんだよ!」
「その弱点丸出しの首をはねてやるわよ!」
そう言って俺に向かって大剣を振り下ろしてくる男。
そんなものが当たるわけがないだろう。俺がかわそうとすると、脇から女性が飛びかかってくる。
こいつも短剣使いか。
振り抜かれた一撃をかわしながら、目を切り裂いた。
大剣を思い切り振ってきたが、短剣で撫でるように軌道を逸らすと、突っ込んできていた男に当たりそうになる。
「クソ! 【パワーストライク】!」
大剣使いがスキルを発動すると、体が勝手に動き出し、無理やりに俺の方へ大剣を振り抜いてくる。
スキルによって、無理やりに俺をターゲットにして軌道を逸らしたのか。
そういう使い方もできるんだなぁ。
俺に向かって振り下ろされた一撃だったが、それはもちろんかわさせてもらう。
【パリィ】で弾ける技かどうかは、ちょっと分からないくらいの重圧だったからな。
スキル発動後の硬直時間があるのだろう。隙だらけのその首元へと短剣を振り抜こうとすると、槍を持っていた男が突っ込んできた。
槍、ね。ただの突撃攻撃なので、俺はそれを左手の短剣で先を逸らし、そのままカウンターで首を切る。
「さっきから……首を切るのに躊躇いなさすぎないか!?」
「手っ取り早いからな」
だって、数百の魔族と戦ったこともあるんだぞ? 一体一体丁寧に仕留めてたら時間がかかって仕方ないもん。
さっと、右の短剣でまだ動けていない大剣使いの首を切りつけたところで、こちらに矢が飛んできた。
短剣で弾く。さらに連続で矢が放たれるが、すべて見切って弾く。
遅れて、火魔法が飛んでくる。リアルなら魔法も魔力をまとった短剣で切れるのだが、今のところそういうスキルはないんだよな。
仕方なく攻撃をかわすと、目の赤い集団が十人ほど現れた。
さっき、彼が言っていた援軍だろう。
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