42 / 63
42
しおりを挟む「お兄様……すごかったです……! ばーってやって、首が飛ぶところとか、興奮しました……っ」
「え? 首が飛ぶところに?」
「はい……っ! 綺麗でした!」
「……」
首が飛ぶ、といっても斬りつけた瞬間に消滅するようになっているのだが……ルルラは興奮した様子で叫んでいる。
そこで興奮するのは、危険な匂いがするが俺は触れないでおいた。
「さて……えーと、空城院? 大丈夫か?」
「……うえ? う、うん。大丈夫、だけど……」
なんだか彼女は呆けた様子でこちらを見ていた。
もしかして、ビビられてる?
「大丈夫だ。PKKはするけど、PKはしないからな。安心してくれ」
「……あっ。ありがとね……助けてくれて。友達と一緒にやってたんだけど、その……先にやられちゃって……」
「あ? 友達とやってたのか?」
「う、うん……その私たちも、VTuberで『メニーフレンド』っていう事務所に所属してて……二人で配信してたんだけど、さっきの奴らに襲われちゃって……」
なるほどなぁ。
さすがに話題のゲームだし、みんなやってるんだな。
そんでもって、配信しながらやってるもんだから、ああいう輩に狙われる、と。
「不運だったな、狙われて」
「……売名目的、だったんだと思う、かな?」
「まあ、何もなくて良かったな」
いや、何かはあったか。
お友達はやられてしまったわけで、もしかしたらドロップしたアイテムの中にあるかもしれないな。
「この中にその子の装備はあるのか? ゴールドはどんくらい取られた?」
「……え? あー、これかな?」
剣と盾が一つずつだ。まだ始めたばかりではあるが、魔物からドロップしたのかちょっといい装備ではある。
あと、ゴールドも10000ゴールドほど。恐らく、チュートリアルクリアでもらったあと、スキルブックを購入して残った分とかだろう。
「それなら、これは友達に渡しておいてくれ」
「え? 助けてもらって武器までもらうなんて悪いよ!」
「いやいや、別に俺は投擲以外じゃ使い道ねえし。これ、配信中なんだろ?」
「え? ……あっ、ご、ごめんなさい! ずっと映しちゃってて!」
「別にいいって。どうせ素顔隠してるわけだし。それじゃあ、装備返す分、ちょっと宣伝していいか?」
「え? あ、うん……大丈夫だよ」
「それじゃあ。俺の妹がキリキリマイって名前で活動してるんだ。チャンネル登録よろしくな! よし、オッケーっと」
「……えーと、あなたのはいいの?」
「あっ、忘れてた。俺は今、ひょっとこ兄貴ってチャンネル作ってあるんだけど、そのうち動画投稿と配信やってくから今のうちに登録しておいてくれ。あっ、ルルラっていうフェアリーが歌って踊ってるショート動画があるから、そのチャンネルだな」
「お、お兄様!? 本当にあげちゃったんですか!?」
「ああ、そうだ。ばっちり宣伝しておいてやったから感謝してくれ」
「は、恥ずかしいからやめてほしいって言ったのにぃ……」
ルルラはそう言ってるが、人目に慣れればきっと内気も治るはずだ。
とりあえず、これで宣伝は終わりでいいだろう。彼女に装備を返却したあと、俺は息を吐いた。
「とりあえず、俺の目的も終わったし、街まで送って行こうか? 友達にも合流しやすいだろ?」
「え? ……う、うん。送ってもらえるなら、送ってほしいんだけど……街まで遠くない?」
「俺はいま、【ワープ】の転売中なのは知ってるか? これが一つあれば、パーティー単位でなら移動できるからな」
「あっ、【ワープ】は50000ゴールドになります。欲しかったらいつでも言ってください」
ルルラが慣れた様子で宣伝し、ぺこりと頭を下げる。
それを見て空城院はようやく、心からの笑顔を浮かべた。
「それじゃあ、えーっとパーティー登録お願いしてもいい、かな?」
「ああ。そんじゃ、アンタレスに移動するぞ」
俺は、彼女をパーティーに誘い、アンタレスへと移動した。
「……なつみっ!」
アンタレス噴水広場に移動すると、恐らくは空城院の友人と思われる子が抱きついていた。
「……マナ。ごめんね、心配させちゃって」
「いやっ、それはこっちのセリフっす! ウチがもっと強かったら、なつみをあんな目に合わせなくて済んだのに……っ! あっ、そうっす! ありがとうございます、ひょっとこの兄貴さん!」
ぺこりと深く頭を下げてきたマナと呼ばれた子に、俺は苦笑する。
「いや、俺は別に初心者狩りをする奴らが気に食わないっていう個人的な理由もあるからな」
「素晴らしいっす……ひょっとこの兄貴! あっ、ウチもチャンネル登録しておいたっす! これから楽しみにしておきます!」
ひょっとこの兄貴、ではまた意味が変わらないだろうか?
目を輝かせるマナに苦笑していると、何やら人があつまってきた。
「……あんまりここにいると目立ちそうだし、そろそろ俺はこの辺で」
「本当に、ありがとね」
「ありがとっす!」
人が集まってくる前に、俺はイレルナへと【ワープ】で移動して逃げた。
PKは別にいいが、やるなら強いプレイヤーを狙え、というのが俺の考えだ。
初心者狩りは、ゲームのプレイ人口に関わってくる大問題でもあるからな。
プレイ人口が減れば、ゴールドの現金への換金率も下がるはずだ。
人気ゲームじゃないものに、課金する人間はそれほどいないからな。
……初心者狩り、か。
異世界でも似たようなことがあったな……魔族の奴らは、俺が成長する前に殺そうとしてきたものだ。
思い出したら、ムカついてきたぞ。
320
お気に入りに追加
619
あなたにおすすめの小説
クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える
ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─
これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる