上 下
20 / 63

20

しおりを挟む
 ……どこから声を出しているのか分からないが、ガイコツキングが咆哮をあげ、さっと槍を構える。
 すぐにこちらへと突っ込んできて、槍を突き出してくる。

 思っていたより速いな。横に跳んでかわすと、すぐに再び槍が迫る。
 速度はまだ俺のほうが上だが、それでも今までの魔物に比べると動きに無駄がないな。
 突き出された槍に短剣を合わせるが、すっと力の向きを変えるように受け流す。

 槍を一度捌けば、懐に踏み込みやすい。一気に距離をつめ、【致命的な一撃】を発動する。
 弱点は人間の心臓と同じか。見れば、他のガイコツ兵とは違い、怪しく光る魔石があった。

 これが弱点か、分かりやすくいいねぇ。
 ついつい笑顔になってしまいながら、俺はそこに短剣を叩き込む。
 と、ガイコツキングが悲鳴のようなものをあげる。

「ガアアア!」

 ダメージに苦しむような声をあげながらも、ガイコツキングが槍を振り抜いてくる。
 攻撃をかわしながら、短剣でダメージを与えていく。
 この調子なら、どうにかなりそうだな。

 そう思った瞬間、ガイコツキングの体が光った。
 ……なんだ?
 そう思った次の瞬間、ガイコツキングの槍が分裂するように振り抜かれた。

 ……スキルか!
 普通ならばあり得ない槍の三連撃を、必要最低限短剣で捌き、致命傷にならない一撃だけを体に掠めながら受ける。

 このスキル、異世界でも似たようなものを見たことがあるなぁ、とかのんびり考えながら、スキル発動後の隙に、俺は両手の短剣を叩き込んだ。

「ガッ!?」

 ガイコツキングが大きく吹き飛ぶ。
 ガイコツキングが体を起こす前に、【音の先へ】で一気に近づいて追撃ダメージを稼ぐ。

 ……そろそろか?
 ガイコツキングがよろよろと立ち上がるが、明らかに疲労している。
 ダンジョンボスは、HPが多いのが厄介だな。ガイコツ兵の十倍は攻撃を叩き込んで、ようやくここまで削れるって感じか。
 でも、やっていることは基本的に変わらない。
 まあ、戦いなんてそんなものだ。いかに自分の得意な攻撃をするかどうかだ。

「ガアアアア!」

 ガイコツキングが叫ぶと、その体からオーラのようなものが現れる。
 ……ステータス強化系のスキルでも使用したのか?
 それを示すように、ガイコツキングの体が加速した。

 普通に対応していたら、このゲームの体では余裕を持って捌くのは難しそうだな。
 ガイコツキングの歩幅、視線、構えから……その先を読み、槍が突き出されたのとほぼ同時に回避、反撃を放つ。

 ガイコツキングは俺の反撃を測していなかったようで、驚いたように槍を構える。
 ……さっきよりもダメージが通りにくくなっている気がするな。
 
 振り抜かれる槍も速く、俺は集中力を上げていって先読みでどうにかやり過ごす。
 ギリギリまで引きつけての回避は、俺にとっても危険だがガイコツキングにとってもそれは同じ。
 ギリギリでかわされれば、大きな隙が生まれるってわけであり。

 ――ここだ。

 近距離で【音の先へ】と【致命的な一撃】を合わせた一撃をガイコツキングの胸の魔石に叩き込む。

「ガアアアアアアアァァァ……」

 大きな悲鳴を上げながら、ガイコツキングの体が崩れ落ちた。
 
 よし、討伐完了だな。
 戦闘前にちゃんと【暗殺宣告】も発動していたからか、装備品も手に入った。
 アクセサリーか。ガイコツキングのネックレス……効果は敏捷+40ってこれはかなり優秀な装備だな。
 舞に貢ぎたいところだが、こいつは俺が装備しよう。すまない……舞。
 いい装備が手に入ったら送るからな!

【ソロのダンジョン攻略者】
【最速ダンジョン攻略者】
【ガイコツキング討伐者】

 称号も一気に手に入ったな。……この称号ゲットが地味に嬉しいんだよな。
 なんというか、図鑑の穴埋めをしている感覚だ。
 といっても、すでにかなり取り逃がしているのだが、すべての称号を端から端までとること自体がほぼ不可能だろう。

 レベルも24に上がったしこのままダンジョンを抜けていけばいいだろう。

 大広間を抜けると、一直線だが道は続いているようだ。
 そうだ。舞に送っておいたメッセージを見ておこうか。

『槍手に入れたけど、誰か使うやつか?』
『あたしの友達が使ってるから借りてもいい???』

 どうやら、俺がガイコツキングと戦っている間に返信がきていたようだ。
 ……舞の友人っていうと、たぶんVTuberの人か。

『そんじゃこれ一本送っとくけど、二刀流で槍使うか?』

 ガイコツ兵から獲得した槍は全部で五本ある。思ったよりもドロップ率が良かったんだよな。
 もしかしたら二刀流で戦う輩がいるかもしれないので、俺は返信が来る前に槍二本を送っておいた。

 まあ、槍を両手に装備するわけがないよなーとか半分冗談気味にな。

 メッセージをやり取りしながら、現れたガイコツ兵を倒したらまた槍がドロップした。
 ドロップ率が高いのならいいんだけど、たまたま運が上振れていたら嫌だな。
 俺が欲しいのは短剣と斧。その時に運が上振れることを期待しよう。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

白雪姫の元継母は氷の公爵との結婚を破棄したい

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:46

元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,400pt お気に入り:10,926

奇跡の力を持つ第二王子様!~神様が人間に成り代わり!~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:697pt お気に入り:6

偽聖女はもふもふちびっこ獣人を守るママ聖女となる

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,299pt お気に入り:3,992

たぶんコレが一番強いと思います!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:893

処理中です...