13 / 63
13
しおりを挟む【鋭い感覚】を発動してみる。
なるほどな。これまで俺が自力でやっていた索敵の範囲が伸びる感じか。
リアルならもっと広範囲の索敵ができるのだが、それはスキルレベルが上がっていけばまた変わるのかもしれない。
あとは、【影遁の術】か。相手の感知などに引っ掛かることがなくなるようだが、どうなんだろう。
とりあえず、足音や足跡は完全に消えている。……ただ、今の段階だと効果時間が短いか。
村人の横を過ぎたが、特に視線を向けられることもない。
「ちょっといいか?」
「うお!? びっくりした!?」
……村人にはどうやら俺の姿が見えていなかったようだ。
消えている、わけではなく路傍の石のようになっているのだろう。
意識すれば見られる、一度発見されてから再度発動しても消えるようなことはできない。
あくまで、標的の意識にいない間に使うスキルか。
これならリアルで使えるステルス魔法の方が使い勝手がいいなぁ。まあ、まだ【暗殺者】になったばかりだし、あれこれ求めてはダメか。
残りのスキルは戦闘中に使用するものだろうし、あとはオークを待つだけだな。
そんなことを考えていたときだった。村人たちから悲鳴が上がった。
「お、オークが来たぞ!!」
「……またかよ!?」
「クソっ! すぐに戦えるものは準備をしろ!」
そんな叫びが聞こえてきた。
おっ、村人たちも戦ってくれるのか。
村人たちが装備を持って村の外へと向かうのに合わせ、俺もその後を追う。
外に向かうと、すぐにオークを見つけられた。
クエスト限定のオークなのだろうか? 通常とは少し違う個体のようで名前が『ユニークオーク』と表示されている。
じっと様子を眺めていると、村人たちとオークとの交戦が始まったのだが、村人たちに勝てる要素はなさそうだ。
……現地人は死ねばそこで終わりなんだったか。
ゲームとはいえ、まじで悲鳴を上げられたり傷に痛む姿を見せられるのはあまりいい気がしないな。ほら、俺元勇者だし。
そういうわけで、俺は【影遁の術】を発動しながら、ユニークオークへと突っ込む。村人たちがデコイになってくれているおかげで、まったくこちらに気づいていない。
まずは一撃を与えよう。【致命的な一撃】を発動すると、ユニークオークの弱点と思われる部位に星のようなマークが見えた。
脇腹か。
一気に地面を蹴り付け、【音の先へ】を発動して突っ込む。
身体強化の魔法みたいな感じか。ただ、速度しか上がらないから使い勝手はそこまで良くなさそうだけど。
突き出した短剣がユニークオークの弱点に寸分違わず突き刺さる。
「グア!?」
悲鳴を上げよろめいたユニークオークへ、俺は追撃の短剣を振り抜きながら、【暗殺宣告】を発動する。
これで、ドロップアイテムが増加するはずだ。
「あっ、あなたは先ほどの……!」
「もしや、村の英雄ではありませんか!?」
……ああ、もしかして称号のことか?
ここは村近くなので、称号の効果も発動している。おかげで、レベル1だというのにユニークオークにもかなりのダメージを与えることができているようだ。
「ああ、そうだ! おまえらは魔法とか遠距離武器で援護してくれ! 俺が引きつけてやるからよ!」
「わ、わかりました!」
そういうと、持っていた弓や石を投げて攻撃していく。
……別に、俺一人で倒す必要はないもんな。
村人たちの攻撃によるダメージは微々たるものだが、それでも注意を分散させてくれるのはありがたいな。
「ガアア!」
ユニークオークが苛立ったように周囲を睨みつけるが、その隙に俺が一気に距離を詰めて短剣を振り抜いた。
短剣術には慣れているからな。無駄なく切り続けると、苛立ったように持っていた棍棒を振り抜いてくる。
リアルの体よりスペックが低いので、動きは先読みしてかわさないといけないな。
ただ、慣れてくればユニークオークの動きは単調で、かわすのは難しくない。
弱攻撃、弱攻撃、強攻撃……それの繰り返しだ。
小さく棍棒を二回振ったら、一度思い切り振り抜いて隙が生まれるので、そこで一気に短剣を叩き込めばいい。
なんなら、弱攻撃といっても、ユニークオークの動きに無駄があるので、紙一重でかわしながら腕を斬るなどもできる。
……簡単すぎるな。
ただ、たまにちょっと溜めてその場で回転攻撃をするので、それを見たら突っ込んではいけない。
「ぐ、アアア!」
俺の連撃にユニークオークがよろめきながら、悲鳴をあげる。
44
お気に入りに追加
617
あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる