帰還した元勇者はVRMMOで無双する。〜目指すはVTuber義妹を推して推しまくる生活~

木嶋隆太

文字の大きさ
上 下
8 / 63

8

しおりを挟む


 ……熱い。
 肌を焼くような熱が襲う。
 目を開けると、そこには火が見えた。

 ここは村ってところか? 家が燃えている。
 周囲を見ると、人々が逃げていた。かなり、本物の異世界人、という感じだ。
 異世界体験者として、合格点をあげたい。

「と、盗賊が襲ってきた! 逃げろ!」

 ……声も恐らくAIが作成したのだろうが、違和感ない。
 最近のAI技術は凄まじいからな。

「おい、あんた」

 俺は近くに走ってきた人に声をかける。
 女性は慌てたような表情とともに声をかけてくる。

「あ、あなたは異邦人ですね!? すぐに逃げてください! この村を盗賊が襲ってきたんです!」

 神様も言っていたが、俺たちプレイヤーは異邦人、と呼ばれるらしいな。

「捕まったらどうなるんだ?」
「そ、それはもう……その……」

 顔を青ざめている。
 ……へぇ。かなりAIがしっかり話すんだな。
 まるで本物の人間だ。表情の変化や、焦りに合わせた汗。火によって汚れた服の作り込みも凄い。

 こんなもの、一つを3Dで動かすのも大変だろうに、俺が一年間地球を留守にしている間にずいぶんと技術も発達したものだ。

「へへ、女ぁ! お兄さんと遊ぼうぜ」
「ひっ!」
「おい、盗賊? この女は俺が先に目をつけたんだよぉ!」
「ひっ!」

 女性が俺と盗賊どちらにも悲鳴を上げる。
 もちろん、冗談だからな? そんな、どっちから逃げればいいの!? みたいな顔をしないでほしい。
 それにしても、本当に人間味あふれるキャラクターだな。

「はっ、貧相な異邦人に何ができる!? 死ねや!」

 盗賊、レベル1か。
 俺のレベルは……ステータスを見てみると、同じくレベル1。
 まあ、チュートリアルだしな。
 正面から斬りかかってきた盗賊の攻撃を……俺はあっさりとかわし、その首を跳ね飛ばした。

 血は出ない、がデータのようなものが粒子のようになって現れ、そのまま盗賊は死んだ。
 弱点を攻撃すると大ダメージを与えられるようだな。
 人間相手だと、首を跳ねれば死ぬ、と。

『称号【初めてのクリティカル(Gランク)】を獲得しました。ステータスポイントを1獲得!』

 ……なんだこれは?
 そう思った次の瞬間、詳細が出てきた。

『この世界では、あなたの行動に合わせて称号を獲得可能です。称号を獲得するとステータスを強化するためのポイントを獲得することができます。称号の中にはプレイヤーの中でも数名しか獲得できないものもあります。そういった称号は譲渡も可能ですので、自分にとって有利になるようにゲームプレイを楽しんでください』

 ……これが個性ってか。
 MMOといえば基本的には平等なのだが……これはまったく違うな。
 そもそも、VRの時点でそうか。

 実際に扱うのは自分の肉体だ。よほど現実世界でしっかり鍛えていないと、今の盗賊との戦闘でもかなり苦労するはずだ。
 俺のように、現実より動きにくい、と感じるのなんて軍人とかスポーツ選手みたいに普段から鍛えているような人たちくらいだろう。

 肉を切った感触も手に残っている。これ、慣れるまで素人は嫌だろうな。
 でも、リアルさがないと、それはそれで現実でも実行しようとする輩とかも出てくるのだろうか?
 とにかくまあ、俺には全部懐かしい感覚になってしまうのが、悲しいぜ。

 盗賊を一人倒した俺は、すぐに周囲へと視線を向ける。

 ……リアルなら索敵魔法で周囲の敵も把握できるのだが、今は分からない。
 だが、この仮想現実は本物に限りなく近い。
 耳をすませば、声や足音が聞こえる。気配を探れば、空気の動く音などが伝わってくる。

 音を拾えば敵の位置も正確に把握できる。把握した俺は、建物の陰から様子を伺う。
 いた。盗賊二名だ。女を捕まえて、完全に油断しているな。
 すぐに地面を蹴り、盗賊の背後へと迫り、その喉元を背後から斬った。

「がっ!?」
「てめぇ!?」
「遅ぇよ!」

 剣を振りぬいてきたが、俺は左手の短剣で受け流し、右の短剣で首を跳ねた。
 ……ここまで自由に人殺しをしてもいいなんて、異世界でもなかったからな。
 この世界はゲームなので、異世界よりもさらに自由だ。

「胸とかは……さすがにもめないか?」

 盗賊に捕まって怯えていた女の胸に触れてみたが何も感触はなかった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

処理中です...