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しおりを挟む……熱い。
肌を焼くような熱が襲う。
目を開けると、そこには火が見えた。
ここは村ってところか? 家が燃えている。
周囲を見ると、人々が逃げていた。かなり、本物の異世界人、という感じだ。
異世界体験者として、合格点をあげたい。
「と、盗賊が襲ってきた! 逃げろ!」
……声も恐らくAIが作成したのだろうが、違和感ない。
最近のAI技術は凄まじいからな。
「おい、あんた」
俺は近くに走ってきた人に声をかける。
女性は慌てたような表情とともに声をかけてくる。
「あ、あなたは異邦人ですね!? すぐに逃げてください! この村を盗賊が襲ってきたんです!」
神様も言っていたが、俺たちプレイヤーは異邦人、と呼ばれるらしいな。
「捕まったらどうなるんだ?」
「そ、それはもう……その……」
顔を青ざめている。
……へぇ。かなりAIがしっかり話すんだな。
まるで本物の人間だ。表情の変化や、焦りに合わせた汗。火によって汚れた服の作り込みも凄い。
こんなもの、一つを3Dで動かすのも大変だろうに、俺が一年間地球を留守にしている間にずいぶんと技術も発達したものだ。
「へへ、女ぁ! お兄さんと遊ぼうぜ」
「ひっ!」
「おい、盗賊? この女は俺が先に目をつけたんだよぉ!」
「ひっ!」
女性が俺と盗賊どちらにも悲鳴を上げる。
もちろん、冗談だからな? そんな、どっちから逃げればいいの!? みたいな顔をしないでほしい。
それにしても、本当に人間味あふれるキャラクターだな。
「はっ、貧相な異邦人に何ができる!? 死ねや!」
盗賊、レベル1か。
俺のレベルは……ステータスを見てみると、同じくレベル1。
まあ、チュートリアルだしな。
正面から斬りかかってきた盗賊の攻撃を……俺はあっさりとかわし、その首を跳ね飛ばした。
血は出ない、がデータのようなものが粒子のようになって現れ、そのまま盗賊は死んだ。
弱点を攻撃すると大ダメージを与えられるようだな。
人間相手だと、首を跳ねれば死ぬ、と。
『称号【初めてのクリティカル(Gランク)】を獲得しました。ステータスポイントを1獲得!』
……なんだこれは?
そう思った次の瞬間、詳細が出てきた。
『この世界では、あなたの行動に合わせて称号を獲得可能です。称号を獲得するとステータスを強化するためのポイントを獲得することができます。称号の中にはプレイヤーの中でも数名しか獲得できないものもあります。そういった称号は譲渡も可能ですので、自分にとって有利になるようにゲームプレイを楽しんでください』
……これが個性ってか。
MMOといえば基本的には平等なのだが……これはまったく違うな。
そもそも、VRの時点でそうか。
実際に扱うのは自分の肉体だ。よほど現実世界でしっかり鍛えていないと、今の盗賊との戦闘でもかなり苦労するはずだ。
俺のように、現実より動きにくい、と感じるのなんて軍人とかスポーツ選手みたいに普段から鍛えているような人たちくらいだろう。
肉を切った感触も手に残っている。これ、慣れるまで素人は嫌だろうな。
でも、リアルさがないと、それはそれで現実でも実行しようとする輩とかも出てくるのだろうか?
とにかくまあ、俺には全部懐かしい感覚になってしまうのが、悲しいぜ。
盗賊を一人倒した俺は、すぐに周囲へと視線を向ける。
……リアルなら索敵魔法で周囲の敵も把握できるのだが、今は分からない。
だが、この仮想現実は本物に限りなく近い。
耳をすませば、声や足音が聞こえる。気配を探れば、空気の動く音などが伝わってくる。
音を拾えば敵の位置も正確に把握できる。把握した俺は、建物の陰から様子を伺う。
いた。盗賊二名だ。女を捕まえて、完全に油断しているな。
すぐに地面を蹴り、盗賊の背後へと迫り、その喉元を背後から斬った。
「がっ!?」
「てめぇ!?」
「遅ぇよ!」
剣を振りぬいてきたが、俺は左手の短剣で受け流し、右の短剣で首を跳ねた。
……ここまで自由に人殺しをしてもいいなんて、異世界でもなかったからな。
この世界はゲームなので、異世界よりもさらに自由だ。
「胸とかは……さすがにもめないか?」
盗賊に捕まって怯えていた女の胸に触れてみたが何も感触はなかった。
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