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 目を開けると、そこは俺の部屋だった。
 肉体は……完全に俺のものだ。部屋の鏡を見てみると、そこにはちゃんと俺がいるのだが、格好が問題だ。

 最後に魔王と戦闘したときの格好そのままである。
 完全に見た目は暗殺者、少し忍者に寄せたような姿。
 もしもこれがコスプレならば最高の出来だろう。今すぐに夏コミに申し込んで忍者のコスプレです、とでも言えば外国人にバカ受けするはずだ。

「はずっ」

 異世界では違和感なかったが、こんなコスプレ丸出しの格好で出歩くことはさすがにできない。
 ……まあ、俺の勇者としての力も維持されているので、姿を隠蔽することは容易だ。
 だとしてもこのまま外を歩くわけにはいかない。
 装備を全て脱いで、アイテムボックスにしまいつつ、部屋にあったよれたシャツに身を包む。
 ……なんでこんなシワシワのやつしかないんだ?

「とりあえず……どうするかな。……そういや、女神は俺が一年間生活していたってことになるとかなんとかほざいてたよな」

 女神が初めて俺を召喚した時にそんなことを言っていた。
 だから、「あなたが魔王を討伐して元の世界に戻っても、違和感はありません!」って自信満々な様子で話していたんだよな。

 ……それってどういうことなんだろうな?

 さっぱり状況は分からない。
 そんなことを考えながら、俺は部屋を見回す。
 ていうか、なんだこの部屋は。まるで想像した引きこもりの部屋そのまんまじゃねぇか。

 ……嫌な予感がしてきたぞ?
 俺はそれを確認するため、部屋の扉をゆっくりと開けた。
 とりあえず、俺の一年間の状況を知るには俺のことを知る相手に聞くのが一番だ。
 
 俺は自分の部屋を出て、一階に感じられる気配へと向かって歩いていく。
 勇者としての能力がそのまま残っているおかげなのか、せいなのか……周囲の状況が手に取るように分かってしまう。

 リビングに行くと……見慣れない女性がいた。
 茶髪のショートヘアの女の子だ。……なんだかヤンキーみたいな見た目をしているのだが、その顔には面影がある。

 いや、まさか……

「舞、か?」

 自分の義妹の名前を、呼ぶ。
 親父の再婚相手の連れ子だった舞。

 俺たちが小学生のときに再婚したのだが、俺が舞を甘やかすほどに優しくしていたせいか、めちゃくちゃ懐いてくれていた舞。

 それが、なんでこんなヤンキーみたいな見た目に……。
 向こうはびくっとした様子で肩を跳ね上げる。そして、食べていた棒付きキャンディーを落としながら彼女は驚いたような目を向けてきた。

「……え? あ、兄貴? な、なんで……?」

 ……なんで、ってどういうことだ?
 まるで、久しぶりに出会ったみたいな返事の仕方である。
 俺がその反応をするのはいいよ? 実際事実だし。では、なぜマイエンジェルもこんな反応になるんだ?

 おい、女神ー? 俺が異世界に行っていた一年間、どうなっていたんですかね?
 天界に殴り込みをかけたい気持ちを抑えつつ、ひとまず俺は舞を見る。

「いや、その……えーと……もしかして……お久しぶり?」

 ちょっとふざけた調子で聞いてみると、

「あ、兄貴ぃ! わ、あああああん!」

 涙を流しながら、舞が抱きついてきた。
 愛しの舞のハグに狂喜乱舞しつつも、脳は冷静に状況を判断していく。

 舞、おむね、ちょっと大きくなった。
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