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 ただ、今回は別に戦うためにきたわけじゃない。アレクシアが地図をみながら、指差す。

「あっ、そちら真っ直ぐですね。足元から魔物が出現しますので対応お願いします」

 迷宮から出現する魔物まで正確に把握できるなんて、俺の知っている聖女よりもかなり能力高いな。
 ……ま、まあミハエルは聖女としての能力はかなり低い方だった。

 この世界が元になったゲームでは、何人かのパーティーメンバー候補がいて、自由に仲間を決めて冒険できるものだった。

 俺は、どうせ自分が最前線で戦いまくるので、縛りプレイ気味に遊んでいたので、皆の基本性能はそこまで高くない。

 普通にレベルを上げているだけでは、そこまで強くならないのだが、そこからはドーピングアイテムで強化している。
 どのキャラクターもすべてのステータスを限界まで上げきってはいたのだが、各キャラクターたちには成長限界があり、主人公に比べれば低かった。

 そんなことを考えながら、現れた魔物が攻撃体制を整える前に刀を振り抜いて仕留める。

「あっ、次は天井から降りてきます」
「……モグラ叩きみたいだな」

 すっと頭が出たばかりの魔物の首を刎ねる。
 迷宮内の魔物が死んだ場合は素材のみがドロップする。
 なので、解体とかの必要がないので非常にラクだ。

 あと、迷宮内の魔物しかドロップしないアイテムの方が多いので、基本的に素材集めは迷宮で行うほうがいいとされている。
 この時代の迷宮や魔物は……見たことがないやつもいる。

 ……新しい図鑑、どこかで手に入らないものだろうか?
 カイン時代の魔物図鑑はすべて埋め切ってあるので、また新しいものが欲しいところだった。

「そういえば、スチル。戦闘のときに武器を取り出していますが、収納魔法を持っていますよね?」
「まあな」

 この世界には収納魔法というものがある。俺のアイテムボックスとは違い、入れられる量には制限があるのだが似たようなものなので俺も収納魔法として名乗っている。

「事前に、あなたのことは調べたのですが……スチルは才能なしという評価を受けていましたよね? 特に目立った魔法なども持たず、能力も低かったはずです。何か、能力測定において問題があったのですか?」
「理由は分からないが、俺の測定結果だけ微妙なことになるんだよ」
「そうなんですね。ですが、それだけの力を見せれば、家から追い出されることもなかったのではないのですか?」

 アレクシアが言う通り、ではある。
 俺の力を使えば、おそらくモスクリア家の面々は手のひらを返して俺を受け入れていたはずだ。
 ただ、その道は考えているよりも面倒だろう。

 聖騎士や騎士団を目指すために騎士学園に入れられ、さまざまな貴族たちの顔色を伺い、伺われつつの生活。
 下手をすれば、俺の能力測定の結果が正しく出ないことについての研究なども行われるかもしれない。
 
 あれこれと面倒事に巻き込まれるはずで、のんびり自堕落に生活というのからは限りなく遠くなるはずだ。

「めんどくね? 貴族」

 色々な理由を一言にまとめると、アレクシアは笑顔を浮かべた。

「めんどいですね、貴族」
「だろ? ……ていうか、そこまで能力ないの分かっててよくスカウトしたな」

 アレクシアは俺の指摘に少し慌てた様子を見せた後、ぽつりと口を開いた。。

「あなたに才能を感じたのは事実です。ですから、能力測定の結果について聞いた時は驚きましたよ」
「でも、結局スカウトはした、と」
「女の勘、って結構当たるんですよ? 結果は大正解でしたし」

 厄介だな、女の勘ってのは。

「聖女ってのは相手の力量とかを正確に測ることもできるのか?」
「正確にてまではできませんが、強者というのは同じく強者がわかるものではないですか?」
「どうだろうなぁ……」

 分かるものなのだろうか?
 俺は仮にラスボスや裏ボスと対峙したときも、強者とは見抜けなかった。
 ……どちらも一撃で仕留めてしまったので、そもそも俺にとってはもう強者とさえ認識されていないのかもしれない。

「まあ、私には分かったんですよ。とりあえず、次の階層に行きましょうか」
「了解」

 階段を見つけた俺たちは、特に問題なく迷宮を攻略していった。
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