ゲーム主人公に転生した俺、強くてニューゲームで続編世界のラスボス聖女様に好かれているようです

木嶋隆太

文字の大きさ
上 下
6 / 23

6

しおりを挟む


「スチル様。ご褒美の頭なでなではないでしょうか?」
「もういい加減子どもじゃないんだし、恥ずかしくないのか?」

 クラフィは同い年だが出会ってからずっと俺が面倒をみてきたこともあり妹のような存在だ。
 とはいえ、もういい加減彼女も俺離れしてもいい年齢だろう。

「いえ、そんなことはございません。ささ、この頭を撫でてください」

 すっと彼女が犬のように体を寄せてきたときだった。
 部屋に誰かが近づいてきた。クラナは即座に天井へと張り付き、天井と同じ布を体に被せるようにして姿を隠す。
 と、部屋の扉が蹴り開けられる。

 なんとも素行の悪い開け方をしたのは、レクナだ。

「おい! てめぇ! まだ買い出しに行ってなかったのかよ!?」
「あっと……申し訳ございません」
「今日はオレ様の誕生日だろうが! さっさと買い物に行ってこいよ!」

 今日はレクナの誕生日であり、レクナが色々欲しいものがあるから買ってこい、と俺に命令を下したのだ。
 ……まあ、レクナが誕生日というのであれば、俺も誕生日なのだが、そこは関係ない。

 生まれてきたことを祝われたことは一度もないが、今夜の誕生日くらいは祝ってもらえるかもしれない。
 だって、俺が家を追放される日なんだしな。
 天井からものすごい殺気を向けられてるので、早く部屋から出ていってくれませんかね、お兄ちゃん。

「申し訳ございません。いますぐ向かいます」
「さっさと行け才能なし!」

 レクナが俺の腹を蹴り付けてきたので、一応弾かれたふりをしておく。
 体の力を抜いておかないと、たぶん蹴ったレクナが吹っ飛ぶからな。
 俺が尻餅ついたのを嘲笑うようにして、レクナは去っていくと天井に張り付いていたクラフィが降りてきた。

「……私のスチル様に……絶対後で殺す」
「殺すな。それに、お前のじゃない」
「申し訳ございません、スチル様。まだ、私のものではありませんでしたね」

 これから先も違うぞー?
 ここで言い合っていても仕方ないので、俺はクラフィの頭をポンポンと叩くように撫でてから部屋を出る。

「……あっ、スチル様ぁ」

 恍惚とした声をあげるクラフィ。これで、彼女も満足してアジトに帰るだろう。

 俺はすぐに屋敷を出て、街へと向かい、買い物リストを眺めていた。
 さてさて、どこの店から買いに行くかねぇ。

 アイテムボックスがあるので、別にどこから買ってもいいのだが……。
 買い物リストを睨めっこしながら歩いていると……何やら不審な人物を発見した。

 ……周囲をきょろきょろと見回しているその男性は、何やら誰かを探しているようだった。
 怪しい。
 しばらく警戒して視線を向けていると、その男の視線が……老婆に向けられた。
 そして――次の瞬間、彼は走り出した。

 知り合いを見つけた、という動きとしてはあまりにも過激だ。
 ……強盗、とかじゃないだろうか?
 そう思った次の瞬間だった。
 男が老婆を押し除けるようにぶつかった。

「……っ!?」

 倒れた老婆が慌てた様子で走り去る男の背中を見ていた。

「ご、強盗!?」
「おい! 騎士を呼べ!」
「大丈夫ですか!? 婆さん!」
「え、ええ……大丈夫ですが……亡くなった旦那がくれた……大事なカバンが……っ」

 周りの人たちの悲鳴を押し除けるようにして、男が走り去っていく。
 ……久しぶりに街に出たらこんなことに巻き込まれるなんてな。
 老婆の悲痛めいた声に、俺は頭をぽりぽりとかく。

 しゃーない。やるとするか。
 俺は即座に、体に力を入れる。
 自分の能力の限界まで速度をあげ、路地へと入った男の後を追う。

 ……見つけた。
 即座に跳躍して、男の前に立ち塞がると、男は驚いたようにこちらを見てきた。
 俺を見て、警戒した様子で短剣を構えた彼が、地面を蹴って突っ込んでくる。

「邪魔だ!」
「……遅いんだよ」
「……があ!?」

 振り抜かれた短剣を避け、加減して蹴りを放つと男の体が吹き飛んで壁に体をぶつける。
 よろよろと起き上がった男に近づいた俺は、首へ軽くチョップを当てると同時、俺の持つ魔力を体内へと送り込み、

「う……が!?」

 彼の体内の魔力を乱し、気絶させた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

処理中です...