ゲーム主人公に転生した俺、強くてニューゲームで続編世界のラスボス聖女様に好かれているようです

木嶋隆太

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 ざわつく会場のある一点。
 人々の視線が集まったそこには、可愛らしい女性がいた。

 綺麗なドレスに身を包み、美しい金色の髪を後ろで縛っている。
 ポニーテールか。歩くたび左右に揺れているのだが、そのたびに美しい光に包まれているようだ。
 どことない高貴さが、彼女の一挙手一投足から溢れ出していた。

 彼女は、ブルーナル家の三女、アレクシア・ブルーナル。
 公爵家の三女ながら、そのずば抜けた聖女としての才能と、多くの人を魅了するような美貌までも持っている。
 年齢はまだ十六と若く、そんな子が聖騎士募集中なんだから、うちの兄みたいに何としてもその座につきたい人がたくさんいるんだろう。

 ……ただ、俺は知っている。
 彼女が、続編のラスボスの可能性があることを。

 このゲームは、2も発売予定だったのだが、それは『バラリティワールド1』の未来を舞台にした物語、というのは聞いていた。

 詳細は知らない。
 なぜなら、俺は発売前に死んでしまったからだ。

 アレクシアがラスボスなのかどうかも、PVで敵対していた動画が公開されているので、詳細までは知らない。
 ただ、どこの紹介でも、『美しすぎるラスボス』として紹介されていたから……まあ、ラスボスに近しい立場なのは確かだろう。
 まあ、何かしらの理由があって仲間になるとかはあるのかもしれないが。

 ……とりあえず、深くは関わらんでおいた方がいい相手というわけだ。
 今の俺は、ただのモブなんだからな。

 まあ、もう俺は前作主人公なわけで、今作には無関係だろう。
 物語がもしもあるのなら、勝手にやってくれ、という感じであり、さっさと飯食いたいんだけど……。

 アレクシアの近くには護衛と思われる騎士もいるが、まだ聖騎士はいないと言っていたし、たぶん教会が派遣した教会騎士なのだろう。
 すたすたと歩く彼女に、声をかける人はいない。騎士が周囲を警戒しているのもあるかもしれないが、それよりも聖女様が近寄りがたい空気を生み出していたからだ。

 だが、その中で一人。
 動き出した人がいた。
 我が兄である。

「聖女様。本日は聖女様のお仕事の合間を縫ってきていただき、本当にありがとうございます」
「……あなたは?」
「レクナ・モスクリアと申します。モスクリアの長男でして……あなたの聖騎士になるため、家族でこの街に引越し、鍛錬を積んでおります」

 ……元々、モスクリア家は王都に住んでいたのだが、レクナを聖騎士にするため、教会の本部があるこの街に引っ越してきていた。

 俺のお兄様は、ずいぶんと勇気があるな。
 アレクシア様はあまり人と話したくなさそうにも見えたが、その中で声をかけるとは。

「そうですか。優秀な力を持つ人が増えれば、それだけ多くの人が救われることになります。頑張ってください」
「はい……!」

 アレクシア様は微笑を浮かべてそういって、レクナはやる気に溢れた様子でアレクシア様に一礼をして、こちらへと戻ってきた。

 父と母は喜んでいて、兄も嬉しそうではあるのだが……さっきの口ぶりだと、「私の聖騎士にはしませんが、まあ頑張って」という風にも聞こえないか?
 まあ、家族の機嫌がいいのは良いことだ。しばらくは平穏な日常が送れそうだな、とか考えながらさっさとパーティー始まれ……とか考えていると。

 すたすた、とこちらへアレクシア様が近づいてきた。
 彼女の視線は俺へと注がれているように見えたが、父がすっと頭を下げた。

「聖女様。レクナの父、ルーンでございます」
「何度か見たことがありましたが……なるほど。モスクリア家の方でしたか」
「おお……まさか覚えていてくださるとは……ありがたき幸せです」
「名前までは覚えておらず、申し訳ございません。ということは、そちらの方がモスクリア家の……次男の方でしょうか?」
「ええ、そうです」

 アレクシア様の視線がちらとこちらを向いた。
 ……どうやら、目的があって俺に近づいてきていたようだ。
 いやいや、なぜ?

 アレクシア様の口ぶり的に、別に俺の名前すらも知らないようだから……特に意味はないと思うが。

 ていうか、俺に注目が集まっているが、これどうしたらいい?
 下手に目立つようなことをするわけにもいかないので、いつものように家族を褒めておこうか。

「初めましてアレクシア様。スチル・モスクリアと申します」

 俺はいつものように挨拶をしたのだが、アレクシア様は何か驚いたご様子だ。
 は? 変な反応しなくていいから。さっさと終わらせてくれって。
 あれ? 実は心の声が聞こえてるとかない? だとしたらまずいがさすがにゲームでもそんなキャラはいなかったはずだ。

「も、申し訳ございません! 聖女様のことを気軽に呼んでしまって!」

 そんなことを考えていると、父から殴りつけるように頭を押さえられた。
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