19 / 58
第19話
しおりを挟む近接での戦闘は、その魔法をいかに相手に当てるかを注力していた方がいいだろう。
それに、剣をメイン武器にするつもりはない。俺は刀で戦っていきたいと思っていた。
理由? かっこいいから。
とりあえず、魔石もかなりの数集まったな。
……そろそろ、鍛冶魔法でも習得しようか。
あるいは、ゲーム知識を使ってこの世界の装備を手に入れてもいいが、最強装備が勇者の剣で、俺には使用不可だからな。
だったら、【ファイナルクエスト】の武器で作れるものがあれば、それを作ってみるほうが強いだろう。
【ファイナルクエスト】では魔石だけで作れる武器もあったので……試してみる価値はあるだろう。
女神様、おっちょこちょいだから、たぶん作れるんじゃないか、と俺は思っている。
『む?』という声が聞こえた気がしたが、俺は無視してゴブリンを狩り続けていく。
迷宮の最深部に到着し、ボスのゴブリンリーダーも討伐して、迷宮の制覇だ。
迷宮自体は、ボスを倒しても特に消滅することはない。
帰り道、またゴブリンを狩りながら外を目指して歩いていく。
『動けるようになってからかなり時間も経っていますけど、なかなかハードスケジュールですね……』
『そうか?』
『だって、毎日ほぼ休みなく何かしているじゃないですか』
『でも会社員の時はもっと毎日動いてたぞ?』
『うへぇ……ブラックですねぇ』
そうはいうが、女神様もわりとブラックな仕事だと思う。
俺にかかりきりなのは、まあ自業自得だが、俺と話しているときも何かしら書類作業をしているし。
……女神様の仕事が遅いから、という理由だけなら別にいいが、そういうわけでもなさそうだしな。
案外、過労などが原因で、ポンコツ化してしまっているのかもしれないな。
前の人も、過労の末にミスって、嫌になって退職代行使って逃げた可能性もあるし。
そもそも、俺がハードスケジュールにしているのは妹を助けるためだ。
俺が二十歳になるまでにゲーム本編をクリアしないと、あちこちで勇者狩りが生まれ、子どもたちが殺されていく。
もしもそんな状況になったら、妹は間違いなく気にするだろう……。
第一、妹本人も身を隠しながらの生活になるため、それはもう不自由で仕方ないだろう。
ゲームではさらっと流されてはいたが、毎日満足に眠ることもできない状態が続くのだから、妹にそんな思いをさせるわけにはいかない。
……普通に選択肢を誤れば死ぬようなくらい大変だったはずだしな。
俺が十七歳になるくらいまでに育成を終わらせ、そこから魔王たちを討伐、あるいは交渉で人間との和平を結び、二十歳までに大魔王を討伐し、ハッピーエンドを迎える。
完璧な作戦だ。
……正直言って、ここからレベルアップのペースも遅くなるわけで、どこまで育つのかは不安なので当初よりも圧倒的力で魔王を葬れない可能性もあるのが残念だ。
まあ、そもそもだ。
俺がここまで切羽詰まっている原因が誰にあるのかは一目瞭然だと思うけどな?
『……が、頑張ってください』
原因である女神様は、それだけを言い残していった。
……まあ、俺としては今の縛りプレイのような状況も楽しめてはいるので、悪くはない。
……家族や勇者の人生がかかってさえいなければな。
同じような生活を送っていき、数ヶ月が経過した。
レベルは21まであがったが、まだここまでしか上がっていないのかという気分ではある。
やはり、経験値稼ぎの効率があまり良くない。本来、回復行動での経験値稼ぎは圧倒的なHPを持った仲間がいてこそだからな……。
獲得したスキルポイントを使い、ハイヒール、キュアの魔法を覚えたので、中級魔法使いと呼んでも問題はなくなってきたはずだ。
この世界の人たちからしたら、すでに上級魔法使いを超えた化け物なんだろうけど。
キュアはさまざまな状態異常を治療し、ハイヒールはヒールよりHPを回復する魔法だ。
そして、残っていたスキルポイントで鍛冶魔法も手に入れたので、俺は早速鍛冶魔法を発動する。
素材として、アイテムボックスに入っている大量の魔石を消費し、武器を製作してみる。
素材で魔石のみを使った、基本中の基本武器。
果たして作れるのかどうか……。
不安はあったのだが、MPが消費され、見てみるとアイテムボックスにはカタナ、という武器が入っている。
おお、できた。
……刀系武器の下の上くらいの代物ではあるが。
【ファイナルクエスト】基準だと対して強くない武器だが、こっちの世界なら一級品だろう。
魔石の質は違うかもしれないが、ゲーム的には同じ魔石だし、なんとかなるかもと思ったが、なんとかなったな。
これも多分、女神様のおかげだろう。
『……つ、作れちゃったのは私の設定ミスじゃないですよ』
『本当かよ?』
『た、たぶん……』
怪しい。女神様は今頃必死に設定関連を見直していることだろう。
208
お気に入りに追加
479
あなたにおすすめの小説
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる