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第18話

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「それじゃあ……とりあえず、俺が冒険者たちにこのポーションについての紹介はしておきますね」
「うん、ありがとね。でも一つ千ゴールドで大丈夫かな?」
「はじめの一つだけは、無料で渡して、それ以降は千ゴールドにしておけば、きっとみんな買いますよ。一発で傷全部治るんですから」

 カイルくんとともに話をして、おおまかにポーションの値段は決めてもらった。
 でも、一本千ゴールドってちょっと挑戦しすぎな気がするけど、大丈夫かな?

 でも、冒険者のカイルくんが言うんだから私の判断よりはマシ、だと思う。

「それじゃあ、また明日」
「うん、また明日ね。朝から店は開けておくから冒険者の人たちにも伝えておいてね」
「分かりました」

 カイルくんと別れた後、部屋に戻った私が椅子に座る。
 すると、ポッチャがこちらへとやってきた。

「チャー」
「うんうん。カイルくんにも一杯撫でてもらったね」
「チャー!」

 この子も凄いカイルくんに懐いていた。動物……まあ、ポッチャは魔物だけど、生物に懐かれるってことはカイルくんも悪い人じゃないと思う。

 私の勘違いとかを丁寧に指摘してくれるしね。

「とりあえず……冒険者の人たちがどれだけポーションを買ってくれるか分からないけど、たくさん用意しておいたほうがいいよね? アイテムボックスも売り出そうと思ったけど、それはやめておいて……」

 アイテムボックスを売るとしたら、どこか大きな街でこっそりと売るとかしないと目立つって言われちゃったしね。

 あとは、他にも聖女の力で作れるんだよね?
 例えば、普通の剣とかにもエンチャントを施してより上質な剣に造り変えるとかもできる。

 あっ! このエンチャント屋みたいなのはいいかも? でも、そんなに必死になって稼がなくてもしばらくはポーションで生活できるかな?
 でも、やっぱり売れない可能性もあるし、色々考えておかないとね!

「あっ、そうだ。ポッチャにももっと良い餌とか買ってあげないとね」
「チャー、チャー!」

 ポッチャは私の言葉を理解できるようで、首を軽く横に振った。

「もう、そんな遠慮しないでいいから! あとでこう、なんか高級そうなお店のおいしい料理とかも食べようよ! 私今まであんまり食事とか楽しう余裕なかったしっ」

 城では食事が準備されていないときもあったしね。
 あっ、そうだ。
 今の災害状況はどうなっているかな? ひとまず、このアルシュタン国は問題ないかな?

 ブレイル王子がいる、ベルモッツ国は――あー。
 大雨、かぁ。それもちょうど王都を狙って発生しているみたいだ。ただの雨ではなくて、これは魔物を強化してしまう魔強雨、と呼ばれるもの。

 雨自体は何も問題ないんだけど……この被害はそのあとなんだよね?

 まあ、王都の防衛力なら問題ない……かな?
 あと、そうだ! 今まで作ったアイテムボックスも全部解除してしまおう!
 もう別に国のために力を貸す必要もないんだしね!
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