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第15話

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「ご、ごめんねカイルくん! その雨、私が作ったんだ!」
「……はえ!? ど、どういうことですか?」
「村の人たちが困っていたみたいだから、雨を作ってあげたんだよね。ほら、土地が随分と乾いているみたいだからね」
「は、はい……それで……雨? で、でも、そんな凄い魔法使える人なんてそう多くはいないと思いますけど」
「そんなことないよ! 雨くらいならだれでもできるよ!」
「できませんよ!」
「まあ、それはいいから……っ! とりあえず、すぐに乾かさないと風邪ひいちゃうから、少し魔法使うね」

 私は両手を叩くように合わせる。次の瞬間、カイルくんの足元に魔法陣が現れ、そのびしょびしょだった体を一瞬で乾かした。

「え……? こ、これなんて魔法ですか!? こんなの見たことないんですけど!」
「特に魔法に名前はつけてないんだけど……とりあえず、中にはいってよ。体冷えているだろうし、温かいものでも飲まないと」
「……あ、ありがとうございます」

 困惑した様子のカイルくんを家にあげる。先ほどまでポッチャをめでていたため、ポッチャも部屋にはいる。
 じーっとポッチャはカイルくんのほうを見ている。カイルくんが恐る恐るといった様子で近づくと、ポッチャがカイルくんに頭をこすり付ける。
 カイルくんはそれからすぐに手を伸ばして、頭を撫で始めた。
 
 二人がうまく交流をとれているのを見てから、私は暖かいポーションを用意した。

「カイルくん、これでも飲んで落ち着いてね」
「は、はい……ってこれもポーションですか!? それに、凄い良い香り、ですね」
「自然治癒力を高める効果があるんだ。とりあえず、どうぞどうぞ」

 私がポーションを勧めると、カイルくんは緊張した様子でそれを手に持った。
 そして、驚いたように目を見開いた。

「や、やっぱりおいしい!」
「やっぱりって何?」
「だ、だってポーションって普通もっとまずいんですよ!? それでも、傷を治すために飲まないといけないのに、こんなのおかしいんですよ!」
「お、おかしいかな?」
「……普通は、そうなんですって。ポーションを甘くしようとすると、ことごとく失敗してしまうという話だって聞いたことあるんですからね!」
「そうなの?」

 でも、ブレイル王子はその甘いポーションを作れ、って言ってるんだよね。
 ……予定の時間までに作られなかったら、食事抜きということもあったから、必死になって作ったんだよね。

 懐かしいなぁ……あんまり思い出したい記憶じゃなかったけど。

「それじゃあ、カイルくん。このポーションとかって売ったらいくらくらいになるかな? 一つ100ゴールドくらいになるかな?」

 100ゴールドで売れてくれれば、私の場合は魔力のみの消費なので、儲けはそのままほぼ100ゴールドになる!
 一日1000ゴールドもあれば少なくとも生活できるって聞いたから、10個売れば何とかその日暮らしはできる!
 そんな計算をしていた私は、

「そんな値段で売ったら、他のポーションを誰も買ってくれなくなりますよ! こ、このポーションはSランク級の1万ゴールド……下手をすればそれ以上の価値がありますよ!」

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