上 下
3 / 30

第3話

しおりを挟む

 こっそりと、国の災害を消すということだって考えた。せめて、キレス王が生きている間は――。

 でもあそこまで言われ、そして無報酬でそこまでのことをする義理はない。あれって、結構大変なんだから!

 私にとって、この国はどうでもいい……。
 さっさと、安全な国に逃げ出さないと。
 私も災害に巻き込まれて死んじゃうのは嫌だしね。

「うわ、何あの荷物?」
「わー、ボロ雑巾ちゃん、本当に追い出されちゃったんだ!」

 ……あっ、ネヨッタの取り巻きの貴族だ。
 こっちを見て、ぶつぶつ何か言ってきている。無視無視!

「あの鞄の中、何かお金とか入っているんじゃない? 誰か見てきたら?」
「別にいいんじゃない? 触って、変な菌うつされても困るし」

 くすくすと笑っている。
 ……知らない。もう本当に知らないんだから。

 私は今まで、この王都だけは、特に念入りに災害を処理してきた。

 だから、すぐに大きな問題が発生することはないだろう。
 三日後に発生した災害だって、せいぜい嵐程度だ。。
 
 ……いや、まあ結構強い風が吹くので、家によっては吹き飛ぶかもしれないけど。

 問題なのは、十日後だ。
 十日後に発生する地震で……間違いなく、国内では死者も出るだろう。

「……キレス王が苦しんで亡くなるのだけは嫌なのよね」

 ……どうしようかなっていう迷いはあった。
 今後、どうするかは……あとで考えようか。
 まだ先だし、とりあえずはいいかな?

 他にも、私が焼くのをやめた途端にぽつぽつと小さな災害が発生している。
 ……あー、これ結構まずいかも? は、早めに王都から脱出しないと……。

 とりあえず、王城を脱出した私は、貴族相手のお店が並ぶ通りに来ていた。
 しゅ、周囲の視線がいたい。というのも、私が身に着けているものが原因だよね。

 ……ひとまず、清潔にして、もう全然切れていないでぼさぼさになっている髪も切らないと。
 
 災害処理は本当に忙しく、休む暇なんてなかった。その職務を果たすには女を捨てる覚悟が必要だった。
 だから、いままでおしゃれなんてしている余裕もなかったので、今日からは少し楽しんでいこっかな。幸い、お金には困らないしね!

 私はとりあえず髪を切ってもらう必要があったので、貴族なども利用しているという店に入った。
 なんでも、散髪から服などまで、すべてこのお店でやってくれているらしい。

「いらっしゃいませ、お客様。本日はどのような御用でしょうか?」
「……今風の平民向けの服と髪型に整えてくれませんか?」
「かしこまりました。それでは、すぐに準備しますのでこちらの席に座ってください」

 椅子に座ると、すぐに散髪が始まった。
 とりあえず、トイレにも困るくらい長かった髪をバッサリ切ってもらえばいいかな?
 ちょっと眠くなってきちゃった……。最近睡眠時間も少なかったからね……。

 とりあえず、散髪が終わるまで寝よう。
 今日から私は自由に寝てもいいんだから!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました

毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作 『魔力掲示板』 特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。 平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。 今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――

「お前の代わりはいくらでもいる」と聖女を剥奪され家を追放されたので、絶対に家に戻らないでおこうと思います。〜今さら戻れと言ってももう遅い〜

水垣するめ
恋愛
主人公、メアリー・フォールズ男爵令嬢だった。 メアリーは十歳のころに教皇から聖女に選ばれ、それから五年間聖女として暮らしてきた。 最初は両親は聖女という名誉ある役職についたことに喜んでくれたが、すぐに聖女の報酬のお金が莫大であることに目の色を変えた。 それから両親は「家のために使う」という口実を使い、聖女の報酬を盛大なパーティーや宝石のために使い始める。 しかしある日、それに苦言を呈していたところ、メアリーが高熱を出している間に聖女をやめさせられ、家も追放されてしまう。 そして平民の子供を養子として迎え入れ、「こいつを次の聖女に仕立て上げ、報酬の金を盛大に使う」と言い始めた。 メアリーは勝手に聖女をやめさせられたことに激怒するが、問答無用で家を追放される。 そうして両親は全てことが上手く行った、と笑ったが違った。 次の聖女に誰がなるか権力争いが起こる。 男爵家ごときにそんな権力争いを勝ち残ることができるはずもなく、平民の子供を聖女に仕立て上げることに失敗した。 そして金が欲しい両親はメアリーへ「戻ってきてほしい」と懇願するが、メアリーは全く取り合わず……。 「お前の代わりはいる」って追放したのはあなた達ですよね?

悪役令嬢と呼ばれて追放されましたが、先祖返りの精霊種だったので、神殿で崇められる立場になりました。母国は加護を失いましたが仕方ないですね。

蒼衣翼
恋愛
古くから続く名家の娘、アレリは、古い盟約に従って、王太子の妻となるさだめだった。 しかし、古臭い伝統に反発した王太子によって、ありもしない罪をでっち上げられた挙げ句、国外追放となってしまう。 自分の意思とは関係ないところで、運命を翻弄されたアレリは、憧れだった精霊信仰がさかんな国を目指すことに。 そこで、自然のエネルギーそのものである精霊と語り合うことの出来るアレリは、神殿で聖女と崇められ、優しい青年と巡り合った。 一方、古い盟約を破った故国は、精霊の加護を失い、衰退していくのだった。 ※カクヨムさまにも掲載しています。

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~

日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。 田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。 成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。 「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」 彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で…… 一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。 国王や王女は気づいていない。 自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。 小説家になろうでも短編として投稿してます。

【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる

みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。 「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。 「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」 「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」 追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。

誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。 それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。 誰にも信じてもらえず、罵倒される。 そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。 実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。 彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。 故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。 彼はミレイナを快く受け入れてくれた。 こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。 そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。 しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。 むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。

処理中です...