上 下
1 / 30

第1話

しおりを挟む

「……私を追放、ですか?」

 ブレイル王子に突然呼びだされたと思えば、わけのわからないことを言われてしまった。
 なんで私を!? という驚きはもちろんある。
 でも、相手は王子なのでそんな感情むき出しにはできないしね。

「ああ、そうだ。おまえは聖女というわけの分からん嘘をついて、この王城で働く誰よりも給料をもらっているだろう?」
「え、ええ……まあそれに見あうことをしていますし」

 私の仕事は、この国の災害を未然に防ぐことだ。
 聖女は、この世界で起こる未来の災害について、視ることができる。

 そして、同時に、聖女の力によって、発生するはずの災害を書き換えることができる。
 消滅であったり、発生場所を変化させたり――。

 だからこそ、私は聖女、と呼ばれていた。
 ……でも、最近確かに私を馬鹿にするような人が増えてきていた。

 ていうか、どうして王子が私の力を疑っているのだろうか? 王族ならみんな知っていると思うんだけど……王様はまだブレイル王子に伝えていなかったのかな?
 私が呑気に考えていると、ブレイル王子が目を鋭くした。

「黙れ! 嘘をつくんじゃない!」

 ブレイル王子は今年で十五歳になる。もう成人なんだけど……まだ全然子どもらしさが抜けていない。

 ……お父様であるキレス王が溺愛してしまったのが原因だね。

 五十にしてやっと生まれた初めての男の子だから可愛がるのは仕方ないんだけどね……。

 国の将来を本当にこの子に任せてしまっていいのだろうか? とても不安だ。

「ですが、私を追放してしまったら……この国たぶん破滅すると思いますけど」
「脅しのつもりか?」
「いや、本気なんですって!」
「黙れ! そんな脅しに屈するわけがないだろう!」

 ……ええ。いやいや、脅してないんです王子! 全部素直な気持ちなんです!

「じゃあ……本当にいいんですね?」
「ふん、受け入れるのだけは素直でいいな」
「……はい。とても大変な仕事でしたので、それから解放されるのでしたら良いかと思いまして」
「そういうことだ。おまえには今日中に城を出ていってもらう。もちろん、オレとの婚約もなかったことにさせてもらう。おまえのような薄汚い人間と結婚なんて……おそろしいからな」
「……はい、わかりました」

 私はすっと頭を下げる。
 それから何気なく、私は災害を確認してみたところ……うわ、新しい災害が三日後に発生しちゃった。

 でも、もう私は聖女じゃないんだから、いいのよね?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前の代わりはいくらでもいる」と聖女を剥奪され家を追放されたので、絶対に家に戻らないでおこうと思います。〜今さら戻れと言ってももう遅い〜

水垣するめ
恋愛
主人公、メアリー・フォールズ男爵令嬢だった。 メアリーは十歳のころに教皇から聖女に選ばれ、それから五年間聖女として暮らしてきた。 最初は両親は聖女という名誉ある役職についたことに喜んでくれたが、すぐに聖女の報酬のお金が莫大であることに目の色を変えた。 それから両親は「家のために使う」という口実を使い、聖女の報酬を盛大なパーティーや宝石のために使い始める。 しかしある日、それに苦言を呈していたところ、メアリーが高熱を出している間に聖女をやめさせられ、家も追放されてしまう。 そして平民の子供を養子として迎え入れ、「こいつを次の聖女に仕立て上げ、報酬の金を盛大に使う」と言い始めた。 メアリーは勝手に聖女をやめさせられたことに激怒するが、問答無用で家を追放される。 そうして両親は全てことが上手く行った、と笑ったが違った。 次の聖女に誰がなるか権力争いが起こる。 男爵家ごときにそんな権力争いを勝ち残ることができるはずもなく、平民の子供を聖女に仕立て上げることに失敗した。 そして金が欲しい両親はメアリーへ「戻ってきてほしい」と懇願するが、メアリーは全く取り合わず……。 「お前の代わりはいる」って追放したのはあなた達ですよね?

団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました

毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作 『魔力掲示板』 特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。 平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。 今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――

悪役令嬢と呼ばれて追放されましたが、先祖返りの精霊種だったので、神殿で崇められる立場になりました。母国は加護を失いましたが仕方ないですね。

蒼衣翼
恋愛
古くから続く名家の娘、アレリは、古い盟約に従って、王太子の妻となるさだめだった。 しかし、古臭い伝統に反発した王太子によって、ありもしない罪をでっち上げられた挙げ句、国外追放となってしまう。 自分の意思とは関係ないところで、運命を翻弄されたアレリは、憧れだった精霊信仰がさかんな国を目指すことに。 そこで、自然のエネルギーそのものである精霊と語り合うことの出来るアレリは、神殿で聖女と崇められ、優しい青年と巡り合った。 一方、古い盟約を破った故国は、精霊の加護を失い、衰退していくのだった。 ※カクヨムさまにも掲載しています。

聖女の代役の私がなぜか追放宣言されました。今まで全部私に仕事を任せていたけど大丈夫なんですか?

水垣するめ
恋愛
伯爵家のオリヴィア・エバンスは『聖女』の代理をしてきた。 理由は本物の聖女であるセレナ・デブリーズ公爵令嬢が聖女の仕事を面倒臭がったためだ。 本物と言っても、家の権力をたてにして無理やり押し通した聖女だが。 無理やりセレナが押し込まれる前は、本来ならオリヴィアが聖女に選ばれるはずだった。 そういうこともあって、オリヴィアが聖女の代理として選ばれた。 セレナは最初は公務などにはきちんと出ていたが、次第に私に全て任せるようになった。 幸い、オリヴィアとセレナはそこそこ似ていたので、聖女のベールを被ってしまえば顔はあまり確認できず、バレる心配は無かった。 こうしてセレナは名誉と富だけを取り、オリヴィアには働かさせて自分は毎晩パーティーへ出席していた。 そして、ある日突然セレナからこう言われた。 「あー、あんた、もうクビにするから」 「え?」 「それと教会から追放するわ。理由はもう分かってるでしょ?」 「いえ、全くわかりませんけど……」 「私に成り代わって聖女になろうとしたでしょ?」 「いえ、してないんですけど……」 「馬鹿ねぇ。理由なんてどうでもいいのよ。私がそういう気分だからそうするのよ。私の偽物で伯爵家のあんたは大人しく聞いとけばいいの」 「……わかりました」 オリヴィアは一礼して部屋を出ようとする。 その時後ろから馬鹿にしたような笑い声が聞こえた。 「あはは! 本当に無様ね! ここまで頑張って成果も何もかも奪われるなんて! けど伯爵家のあんたは何の仕返しも出来ないのよ!」 セレナがオリヴィアを馬鹿にしている。 しかしオリヴィアは特に気にすることなく部屋出た。 (馬鹿ね、今まで聖女の仕事をしていたのは私なのよ? 後悔するのはどちらなんでしょうね?)

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる

みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。 「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。 「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」 「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」 追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。

聖女として王国を守ってましたが追放されたので、自由を満喫することにしました

ルイス
恋愛
天候操作、守護結界、回復と何でも行える天才聖女エミリー・ブライダルは王国の重要戦力に位置付けられていた。 幼少のことから彼女は軟禁状態で政権掌握の武器としても利用されており、自由な時間などほとんどなかったのだ。そんなある日…… 「議会と議論を重ねた結果、貴様の存在は我が王国を根底から覆しかねない。貴様は国外追放だ、エミリー」 エミリーに強権を持たれると危険と判断した疑心暗鬼の現政権は、エミリーを国外追放処分にした。兵力や魔法技術が発達した為に、エミリーは必要ないとの判断も下したのだ。 晴れて自由になったエミリーは国外の森林で動物たちと戯れながら生活することにした。砂漠地帯を緑地に変えたり、ゴーストタウンをさらに怖くしたりと、各地で遊びながら。 また、以前からエミリーを気にかけていた侯爵様が彼女の元を訪ね、恋愛関係も発展の様相を見せる。 そして……大陸最強の国家が、故郷の王国を目指しているという噂も出て来た。 とりあえず、高みの見物と行きましょうか。

処理中です...