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第33話
しおりを挟む……そうだよな。その気持ち、よく分かるよ。
Gランク冒険者になって、初めて冒険者としての入り口に立てる。
そこから、何度迷宮に挑戦しても、この時の感動はいつだってきっと忘れないだろう。
彼女の最終目標はまだ先だ。ただ、その前にあった一つの壁を越えることに成功したんだ。
アイフィが奥の部屋へと入ると、そこには俺も何度か見たことのある女神像があった。
落ち着いたその部屋へと入ったアイフィは、それからゆっくりと両手を合わせ、祈りを捧げる。
アイフィの体が柔らかな光に包まれると、その光が彼女の体内へと入り、消えた。
これで、祈りは終わりだ。彼女は笑顔とともに、顔を上げた。
「……どうだ?」
『……はい。体が、変化したのが分かります』
「それじゃあ、あとは帰ってくるだけだ。帰りは、魔物も出現しないからな」
『分かりました! すぐに戻りますね!』
「ゆっくりでいいから。帰り道で怪我する冒険者なんて、滅多にいないからな」
……俺は嬉しくて、ダッシュで戻って顔面強打したけど。
恥ずかしい思い出はひっそりと胸に秘める。
……それにしても、一度で見事に攻略するとはな。
ちらと迷宮の方に視線を向けると、何名か戻ってきた冒険者の姿もある。
……涙を流し、それを支えるように寄り添っている職員を見れば、おそらくは攻略に失敗してしまったのだろうということはよくわかる。
……俺も、Gランク迷宮を突破したのは一発ではなかった。二度目の挑戦で、どうにか攻略できた。
訓練ではうまく行っても、常にその状態を維持できるわけではなく、俺はなかなかうまくいかなかった。
とりあえず、今は……ほっとしていた。まだまだ、これから先のことは分からないが、一歩前進したんだからな。
しばらく待っていると、アイフィが戻ってきた。
走ってきたのだろう。
行きよりも随分と早く戻ってきた彼女に、多くの職員の目が集まる。
ただまあ、アイフィの表情を見れば、皆彼女が攻略できたのだと分かっただろう。
それを素直に受け入れる人たちばかりで、皆がアイフィに笑顔を向けていた。
そのアイフィは、キョロキョロと周囲を見回していたので、俺が立ち上がって手を振ると、彼女はより一層笑顔を浮かべ、走ってきた。
そして、勢いよく飛びついてくる。
想定以上の力、ちゃんと加護の恩恵を受けているようだな。
「やりました……っ! やりましたよ、ショウさん!」
「……ああ、そうだな」
アイフィはGランク迷宮ならば、問題ないと思っていただろう。
それでも、いざこうして試練を突破した今は、たまらないといった様子で俺に抱きついてくる。
周りの視線が気になるところではあるが、とりあえず、今は彼女の好き放題にさせようか。
とりあえず、攻略を終えた俺たちは他の試練突破者たちを待つように、待機していた。
そんな時だった。
俺の近くにいたボルドルが、声を上げた。
「ルーナ! おまえ、何やってんだよ!?」
……叱りつけるような声をあげるボルドルの声が、響く。
比較的、全員が落ち着いて話しているため、ボルドルの声は激しく響いた。
「……ボルドル、どうしたんだよ」
俺がボルドルを見ると、彼はノートパソコンにつかみかかっていた。
「おい、バカ。それに何かしたって何もならないぞ」
今にも壊しかねん勢いだったので、慌てて止めると、ボルドルが叫んだ。
「うるせぇよ! 運が良かっただけのくせに!」
彼は必死な様子で叫び、こちらを睨みつけてくる。
「オレだって、アイフィを担当できていれば……今頃は余裕でGランク冒険者にさせられてんだよ! なんで、お前が選ばれてんだよ!」
「おまえ……」
今、そんなことを言う場面ではないだろう。
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