29 / 37
第29話
しおりを挟む……問題なさそうだな。
魔法を使用し、魔力の鎧で体を守りつつ、迷宮の探索をこなしていく。
それらを問題なく行っているアイフィは、今のところ何のミスもない。
ここまでの基礎訓練で、すでに彼女はここまでの力を身につけたわけで、まあ問題はないだろう。
迷宮に入ってから、一時間ほどが経過した。
順調に俺たちは進み、到着したボス階層のところで、アイフィが息を吐いた。
「この先に、ゴブリンリーダーがいるんですよね」
「ああ、そうだ。ホロースト迷宮と同じ魔物だな」
「……分かりました」
アイフィは大きく深呼吸をしてから、歩き出した。
ゴブリンリーダーがいるはずのボス迷宮に踏み込んだところで、彼女はじっと周囲を観察する。
少し奥へと進んでいったところで、迷宮特有の霧が集まっていく。
これまでよりもその霧の量は多く、やがて魔物の姿へと変わる。
ゴブリンリーダーだ。ゴブリンリーダーがこちらに気づき、持っていた剣を握りしめる。
ゴブリンたちと違い、ゴブリンリーダーは剣を持っている。
アイフィもそれに気づき、構える。
お互いに向かい合い、そしてゴブリンリーダーがかけだした。
「があ!」
同時に咆哮をあげる。ゴブリンリーダーの脇から霧が生まれ、そこからゴブリンが二体、現れた。
「……ふっ!」
アイフィが声を上げ、一瞬のうちに加速し、二対のゴブリンの首を跳ねた。
……見事だ。
ゴブリンリーダーが正面から突っ込んできて、剣を振り下ろす。
アイフィが剣を合わせ、受け止める。力はゴブリンリーダーの方が上だ。
……あくまで、現時点では。
アイフィがモードチェンジで切り替え、力を込める。
ゴブリンリーダーの体を持ち上げるように、剣を振りぬき、弾く。
よろめいたゴブリンリーダーへ、アイフィは即座にモードを切り替え、加速した剣をお見舞いする。
「……っ」
しかし、ゴブリンリーダーは受けきった。
アイフィは自身の剣とゴブリンリーダーを見比べていた。
アイフィの剣はゴブリンリーダーへ致命傷を与えることはなかったからだ。
ゴブリンリーダーは魔力で硬化した肉体で攻撃を受けきった。
そして、痛みに顔を顰めながら、再びゴブリンを召喚する。
「がああ!」
ゴブリンリーダーが咆哮を上げると、ゴブリンたちが動き出す。
アイフィがゴブリンを即座に仕留めると、奥からゴブリンリーダーが力に任せた一撃を放つ。
しかし、アイフィはそれを跳んでかわす。
追撃に振り抜かれた一撃を、アイフィは丁寧な動きと共に受け流す。
そして、カウンターの一撃を放ち、ゴブリンリーダーを切り上げる。
血の変わりに、斬られた部位から霧が漏れ出す。
よろめいたゴブリンリーダーへ追撃をしようとした瞬間、ゴブリンリーダーの咆哮が上がる。
「があああ!」
ゴブリンリーダーが叫ぶと同時、現れたゴブリンたちがアイフィへと突っ込んでいく。
だが、アイフィはそれらを意にも介さず即座に両断し、突っ込む。
ゴブリンリーダーへ、渾身の一撃を叩き込み、アイフィは剣を叩きつけた。
――すべての攻撃で、同じ場所を斬りつけている。
一度でダメなら、二度、三度。その正確無比な一撃に、ゴブリンリーダーは耐えきれなかったのか、
「が……あ……!」
膝から崩れ落ち、悲鳴をあげる。
ゴブリンリーダーが倒れ、その体が霧のようんじ消えていくと、後には魔石と素材がドロップしていた。
アイフィは大きく息を吐いてから、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「やりました!」
「ああ、見事だったな」
アイフィがこちらへと駆け寄ってきて、嬉しそうに声をあげる。
それを受け止める。抱きつかれてきたが、まあそれだけ嬉しかったんだろう。
しばらく彼女の喜びを受け止めていると、アイフィはすっと顔を上げてくる。
「今回、うまくいきましたね」
「そうだな。ホロースト迷宮も似たような形になる。まったく同じってわけじゃないが、今回のを参考に挑戦するぞ」
「はい……!」
方針は決まった。
アイフィがデビューするのは、五月二十九日のGランク試練迷宮。
あとは、そこまでに体の状態を完璧に仕上げていくだけだ。
77
お気に入りに追加
384
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~
和成ソウイチ
ファンタジー
(全77話完結)【あなたの楽園、タダで創ります! 追放先はこちらへ】
「スカウトはダサい。男はつまらん。つーことでラクター、お前はクビな」
――その言葉を待ってたよ勇者スカル。じゃあな。
勇者のパワハラに愛想を尽かしていたスカウトのラクターは、クビ宣告を幸いに勇者パーティを出て行く。
かつては憧れていた勇者。だからこそここまで我慢してきたが、今はむしろ、追放されて心が晴れやかだった。
彼はスカルに仕える前から――いや、生まれた瞬間から決めていたことがあった。
一生懸命に生きる奴をリスペクトしよう。
実はラクターは転生者だった。生前、同じようにボロ布のようにこき使われていた幼馴染の同僚を失って以来、一生懸命に生きていても報われない奴の力になりたいと考え続けていた彼。だが、転生者であるにも関わらずラクターにはまだ、特別な力はなかった。
ところが、追放された直後にとある女神を救ったことでラクターの人生は一変する。
どうやら勇者パーティのせいで女神でありながら奴隷として売り飛ばされたらしい。
解放した女神が憑依したことにより、ラクターはジョブ【楽園創造者】に目覚める。
その能力は、文字通り理想とする空間を自由に創造できるチートなものだった。
しばらくひとりで暮らしたかったラクターは、ふと気付く。
――一生懸命生きてるのは、何も人間だけじゃないよな?
こうして人里離れた森の中で動植物たちのために【楽園創造者】の力を使い、彼らと共存生活を始めたラクター。
そこで彼は、神獣の忘れ形見の人狼少女や御神木の大精霊たちと出逢い、楽園を大きくしていく。
さらには、とある事件をきっかけに理不尽に追放された人々のために無料で楽園を創る活動を開始する。
やがてラクターは彼を慕う大勢の仲間たちとともに、自分たちだけの楽園で人生を謳歌するのだった。
一方、ラクターを追放し、さらには彼と敵対したことをきっかけに、スカルを始めとした勇者パーティは急速に衰退していく。
(他サイトでも投稿中)
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
悪役貴族に転生した俺が鬱展開なシナリオをぶっ壊したら、ヒロインたちの様子がおかしいです
木嶋隆太
ファンタジー
事故で命を落とした俺は、異世界の女神様に転生を提案される。選んだ転生先は、俺がやりこんでいたゲームの世界……と思っていたのだが、神様の手違いで、同会社の別ゲー世界に転生させられてしまった! そのゲームは登場人物たちが可哀想なくらいに死にまくるゲームだった。イベボス? 負けイベ? 知るかそんなもん。原作ストーリーを破壊していく。あれ? 助けたヒロインたちの目のハイライトが……?
※毎日07:01投稿予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる