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第15話
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『それで、ショウはどっちが正しいと思うんだ?』
「……それが、よく分からないんです」
『今一番、アイフィと関わっているのはキミだろう。私にもどっちが正しいかは分からないよ。というか、指導する側なんてそんなものだよ』
「……そういうもの、なんですか?」
『ああ。私だって、悩みながら色々な子を指導してきたよ。少なくとも当時の私は本気でその道が正しいと思って、指導して、それなりに結果は出してきた。でも、もしかしたら今のキミみたいに、もう片方の指導をしていれば、さらに伸びていた可能性もあったかも……とは考えることもあるよ。もう、それは分からないんだよ。なんなら、もう片方の選択肢だって間違いかもしれないんだしね』
……確かに、そうだな。
今俺が考えていた二択以外にも、選択肢はあるのかもしれない。
……時間が許すのなら、両方とも最高まで鍛えたいとか、そういうのだってあるんだし。
『私たちにできることは、不安を見せず、導いてあげることだけだよ。ショウが不安そうに教えていたら、アイフィはもっと不安になると思うよ。そんな信じられない状態じゃ、訓練だって中途半端になるし、技だって身につかない。自信を持って教えて、裏では色々と考え悩んで、自分の考える最高のものを教えていくんだ。私たちの仕事に及第点はあっても正解はないってことだ』
「そう、ですか」
ギルドリーダーの言いたいことは分かった。
『ま、私から言えることは、よく考えた結果は決して悪いことにはならないと思うよ。って、ボルドルにも言ってんだけどねぇ。いっつも「ちゃんと考えますよオレは!」って言っているけどボルドルのそれは全然足りないからね。ショウも、よく考えること。いいね?』
「はい……ありがとうございます」
『んじゃ、おやすみー』
ギルドリーダーがそう言って電話を切った。
……明確な答えをもらったわけではないが、それを出すのはギルドリーダーではなく、俺だ。
ここで答えを出されていたら、それはもうアイフィの指導者は俺ではなくギルドリーダーになってしまう。
ギルドリーダーが話してくれたこと、よく身にしみた。
……俺の師匠も、色々悩んでいたんだろうか。
本人はDランク冒険者であって……まあ、いわゆる普通の冒険者だった。
そんな彼に、Sランク冒険者になりたいです、って弟子入りしたんだ。……そりゃあ、色々悩んだり考えながら指導してくれていたんだろうな。
俺も、アイフィの人生を預かっているんだ。
できることを、全力でやっていこう。
もっと、色々と調べてアイフィにとって何が必要なのかを考えていこう。
次の日の朝。眠い目を擦りながら、アイフィと待ち合わせ場所へと向かう。
色々と調べていたら、こんな時間になってしまった。
ただまあ、方針は色々と決まってきたので、無駄な時間だとは思っていない。
待ち合わせ場所はレールゴルの街内にある日本直通のゲート前だ。
レルゴールのゲートから行けるのは日本だけだ。
俺がそこに到着すると、扉ほどのサイズの渦のようなものがそこにはあり、その前ではアイフィがすでに待っていた。
腕時計をつけているようで、ちらと手首のあたりへ視線を向けている。
今日は、迷宮に挑戦するのだが、レールゴルの近隣に今挑戦できるGランク迷宮がないとはいえ、日本に行くことになるとはな……。
こちらに気づいたアイフィが笑顔とともに近づいてくる。
「ショウさん、おはようございます」
「おはよう。朝から元気だな」
「はい。今日はショウさんの故郷へデートに行きますので」
デートじゃないぞ。
じろっと視線を向けると、アイフィは照れたように頬を染める。
「そんな熱視線を向けないでください。孕んでしまいます」
誰かこいつをどうにかしてくれ……。
「今日は迷宮に挑むんだからな? 気を引き締めていけよ」
「もちろんです。気はしっかり引き締めてますよ。ですが、息抜きも必要なんですよ」
……ま、アイフィの真剣さは知っているが、息抜きの仕方はもう少し変えて欲しいものだ。
ただ、彼女の表情は確かにいつもとは少し違う。
笑顔を浮かべながらも彼女には鋭さがあった。
……Gランク迷宮。すでにリアンナ家の子たちが何名か突破しているのだから、アイフィとしてもなるべく早めに突破したい気持ちはあるのだろう。
今日結果を出したら、すぐにでも試練迷宮に挑戦させてくれとでも言ってくるかもしれない。
まあ、今日の様子をみて、それについては決めるつもりだ。
地球と異世界の移動は、現在ではゲートひとつで簡単に行える。
場合によっては、地球、異世界、地球、みたいに移動した方が素早く移動できることもあるくらいだ。
俺たちは異世界と日本を繋ぐゲートを潜り抜け、日本へと向かう。
ゲートの中を数歩歩いた先……高いビルがみえた。
日本に、到着した。綺麗に舗装された道路には、車が走っている。
信号や道行くサラリーマン然とした人々を見ると、日本に戻ってきた、という感覚になる。
「わあああ! ここが、リールゴルからいける日本の街ですね!」
アイフィはキョロキョロと楽しそうに周囲を見ていた。
今時、異世界人がそこら辺を歩いているのは珍しくない。
「……それが、よく分からないんです」
『今一番、アイフィと関わっているのはキミだろう。私にもどっちが正しいかは分からないよ。というか、指導する側なんてそんなものだよ』
「……そういうもの、なんですか?」
『ああ。私だって、悩みながら色々な子を指導してきたよ。少なくとも当時の私は本気でその道が正しいと思って、指導して、それなりに結果は出してきた。でも、もしかしたら今のキミみたいに、もう片方の指導をしていれば、さらに伸びていた可能性もあったかも……とは考えることもあるよ。もう、それは分からないんだよ。なんなら、もう片方の選択肢だって間違いかもしれないんだしね』
……確かに、そうだな。
今俺が考えていた二択以外にも、選択肢はあるのかもしれない。
……時間が許すのなら、両方とも最高まで鍛えたいとか、そういうのだってあるんだし。
『私たちにできることは、不安を見せず、導いてあげることだけだよ。ショウが不安そうに教えていたら、アイフィはもっと不安になると思うよ。そんな信じられない状態じゃ、訓練だって中途半端になるし、技だって身につかない。自信を持って教えて、裏では色々と考え悩んで、自分の考える最高のものを教えていくんだ。私たちの仕事に及第点はあっても正解はないってことだ』
「そう、ですか」
ギルドリーダーの言いたいことは分かった。
『ま、私から言えることは、よく考えた結果は決して悪いことにはならないと思うよ。って、ボルドルにも言ってんだけどねぇ。いっつも「ちゃんと考えますよオレは!」って言っているけどボルドルのそれは全然足りないからね。ショウも、よく考えること。いいね?』
「はい……ありがとうございます」
『んじゃ、おやすみー』
ギルドリーダーがそう言って電話を切った。
……明確な答えをもらったわけではないが、それを出すのはギルドリーダーではなく、俺だ。
ここで答えを出されていたら、それはもうアイフィの指導者は俺ではなくギルドリーダーになってしまう。
ギルドリーダーが話してくれたこと、よく身にしみた。
……俺の師匠も、色々悩んでいたんだろうか。
本人はDランク冒険者であって……まあ、いわゆる普通の冒険者だった。
そんな彼に、Sランク冒険者になりたいです、って弟子入りしたんだ。……そりゃあ、色々悩んだり考えながら指導してくれていたんだろうな。
俺も、アイフィの人生を預かっているんだ。
できることを、全力でやっていこう。
もっと、色々と調べてアイフィにとって何が必要なのかを考えていこう。
次の日の朝。眠い目を擦りながら、アイフィと待ち合わせ場所へと向かう。
色々と調べていたら、こんな時間になってしまった。
ただまあ、方針は色々と決まってきたので、無駄な時間だとは思っていない。
待ち合わせ場所はレールゴルの街内にある日本直通のゲート前だ。
レルゴールのゲートから行けるのは日本だけだ。
俺がそこに到着すると、扉ほどのサイズの渦のようなものがそこにはあり、その前ではアイフィがすでに待っていた。
腕時計をつけているようで、ちらと手首のあたりへ視線を向けている。
今日は、迷宮に挑戦するのだが、レールゴルの近隣に今挑戦できるGランク迷宮がないとはいえ、日本に行くことになるとはな……。
こちらに気づいたアイフィが笑顔とともに近づいてくる。
「ショウさん、おはようございます」
「おはよう。朝から元気だな」
「はい。今日はショウさんの故郷へデートに行きますので」
デートじゃないぞ。
じろっと視線を向けると、アイフィは照れたように頬を染める。
「そんな熱視線を向けないでください。孕んでしまいます」
誰かこいつをどうにかしてくれ……。
「今日は迷宮に挑むんだからな? 気を引き締めていけよ」
「もちろんです。気はしっかり引き締めてますよ。ですが、息抜きも必要なんですよ」
……ま、アイフィの真剣さは知っているが、息抜きの仕方はもう少し変えて欲しいものだ。
ただ、彼女の表情は確かにいつもとは少し違う。
笑顔を浮かべながらも彼女には鋭さがあった。
……Gランク迷宮。すでにリアンナ家の子たちが何名か突破しているのだから、アイフィとしてもなるべく早めに突破したい気持ちはあるのだろう。
今日結果を出したら、すぐにでも試練迷宮に挑戦させてくれとでも言ってくるかもしれない。
まあ、今日の様子をみて、それについては決めるつもりだ。
地球と異世界の移動は、現在ではゲートひとつで簡単に行える。
場合によっては、地球、異世界、地球、みたいに移動した方が素早く移動できることもあるくらいだ。
俺たちは異世界と日本を繋ぐゲートを潜り抜け、日本へと向かう。
ゲートの中を数歩歩いた先……高いビルがみえた。
日本に、到着した。綺麗に舗装された道路には、車が走っている。
信号や道行くサラリーマン然とした人々を見ると、日本に戻ってきた、という感覚になる。
「わあああ! ここが、リールゴルからいける日本の街ですね!」
アイフィはキョロキョロと楽しそうに周囲を見ていた。
今時、異世界人がそこら辺を歩いているのは珍しくない。
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