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第12話
しおりを挟む見る目がないのでは? 私が思った第一印象はそうだった。
私と姉を比べ、私に無能なんていうのは100人いても誰もいないと思う。
私は可愛く、魔法の才能だって姉と並ぶほどだ。
三年前くらいに魔法で対決したときだって、引き分けだったんだから。
本当にこの大精霊は何を言っているんだろう。
「あ、姉と比べて……ですか?」
「ああ、貴様の祈りではこの国を守り切ることはできない」
「なぜですか! 私、姉と魔法による勝負はほぼ互角でしたよ!」
「はぁ? 何を言っている? アーニャは半分以下の力しか出せていない状況だったはずだが?」
「な、何を言って――」
「アーニャは幼い頃より魔力を国のためにささげていたということだ。いつの時代の話をしているのか知らないが、アーニャは毎日体内にある魔力の半分以上を国を守るために浸かっている。その状況のアーニャと互角? ……つまり、貴様はその半分以下の能力しかないってことじゃないか」
……ムカついた。
私の何も知らないで、この大精霊は何を言っているんだろう?
「それなら、今から祈りましょう。私の祈りが通じれば、私を大聖女と認めてくれますよね?」
「ああ、もちろんだ」
「感情を抑えよ。そんな濁り切った魔力を送っても、魔物の餌になるだけだ。……というか、貴様大聖女というのにすでに性交を何度か行っているな? 魔力に穢れが混じっている」
「そんなの関係ないでしょ!? ただ祈るだけなんだから!」
「……はぁ、まったく。ほれ、さっさとやってみろ」
いわれた通りに私は祈りをささげた。
次の瞬間だった。
「がぁ!?」
体内の魔力がごっそりと奪い取られる感覚。
まるで、体の内側をえぐり取られたような痛みが走った。
「や、やだ! 無理! 助けて……っ!!」
必死に助けを求めたけど、大精霊は私の言葉を無視した。
痛みでもだえた私はその場で地面を転がりまわる。
「汚い。唾を吐くな。さっさと起き上がって祈れ」
「わ、私はこの国の大聖女よ!? そして、王子の婚約者! そんな私にこんなことしてタダで済むと思っているの!?」
「オレはあくまで、貴様を大聖女として育成しているだけだ」
「アーニャにはこんなことしてなかったでしょ!?」
「いや、していたさ。だけどアーニャは才能があったからな。才能のないものが才能あるものに並ぶには、それ相応の代償が必要になる。それが、貴様の体を襲う痛み、というわけだ」
「……ふざけないで……! 聖女はただ祈るだけでしょ!?」
「聖女は、な。大聖女は違う。大聖女というものは、国一つを守るだけの犠牲と覚悟が必要だ。それを幼い頃から聖女の家系の長女は、自覚し、鍛えているんだ」
「……」
アーニャがずっとこんな痛みを押さえていたなんて、そんなはずない!
あたしの方が何もかも優れている……! 優れているはずなのに……!
「祈りを再開しろ。この前、おまえたちが途中でアーニャの祈りを邪魔したせいで、この国は危機的状況だ」
ボロボロになっていた私に対して、大精霊は激怒するようにそう言ってきた。
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