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第34話 ゴーラル視点3

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 それから、オレの耳にはフーテルアの街が半壊したことが伝えられた。
 あの戦いは、何とか人間たちの勝利ということで決着がついた。
 そして、帰還したオレのもとに――あの時共に行動していた精霊術師の一人と、宮廷騎士、そして参事会がやってきた。

 参事会……それは、各都市の犯罪などの刑罰に対しての判定を行う人間だ。特に宮廷参事会は、宮廷内で不正が行われないようにという側面もあった。

「ゴーシュ。あなたは、命令に背き、精霊魔法を使わず、あまつさえ街一つを危機に陥れた疑惑があります。詳しい話を聞かせてもらえますか?」

 逃げれば騎士が襲い掛かってくるだろう。
 彼らは、怪我をさせても問題に問われることはない。大人しく、従うしかなかった。

 呼びだしを受けたオレは、あの時の状況について伝えた。

 突然精霊魔法が使えなくなったこと。
 それによって怯えて逃走してしまったこと。

 精霊魔法が使えなくなったことについては同情の余地があると言われたが、その後逃走してしまったのが悪く映ってしまった。
 それから一週間程。

 特に何もなく、オレはこれまで通り宮廷で仕事をしていた。
 ……とはいえ、まったく落ち着けるはずがない。
 同僚たちからは、白い目を向けられるし、どのような判断が下されるかも分からないからだ。

 オレの目の前にいた参事会の者は、淡々と手紙を読み上げていく。
 それは国王様からのものだそうだ。

「宮廷精霊術師の立場は剥奪だ。それと、伯爵に関しても同じくだ。おまえに与えていた領地はこれより、レベリス家の管轄とする」
「そ、それは――! 考えを改めてくださいませんか!」

 彼に叫んだところで無駄だ。そもそも、国王様が直接オレに会わないのは、こういった面倒な関わりを避けるためというのもあるだろう。

「事前に話していた通り、街の補修費を支払う場合は検討するという話だ。しかし、それを行うにはそれこそすべてを手放す必要があるだろう?」

 彼の言葉に、オレは唇を噛むしかない。
 オレにはこの場を切り抜ける方法はどこにもない。親しかった貴族たちには、今回の一件でとっくに切り捨てられていた。

 ……向こうからすればオレはすでに利用価値のなくなった人間だ。
 泥船のオレに手を貸す人間などどこにもいるはずはなかった。
 爵位と領地を失ったオレは、もちろん屋敷も同じように手放すしかなくなった。

 残っていたのは、婿入り、嫁入りなどをしていなかった家族たちだ。

 家を継ぐため残っていた長男であるレグド。
 精霊術師の才能を失ってしまったヨルバ。
 同じく才能を失い、顔に大怪我を負ってしまったレイン。

 そして、ティーナと正妻でありティーナとレグドの母であるジル。
 ヨルバとレインの母であり、オレの側室たちだ。……とてもじゃないが、彼女ら全員を養えるはずがない。

 だから、切り捨てる必要がある。この中でもっとも価値がないのは――。

「おまえのせいだよ!」

 その時、声を荒らげたのは長男のレグドだった。
 顔を真っ赤にし、ティーナへと掴みかかっていた。それはヨルバとレイン、それに他の側室たちもそうだった。

「……私が何かしたかしら?」
「てめぇの妹が呪われているからこんなことになったんだろ!? ありえないだろ!? あいつが家を出てからだ! 次々に色々起こりすぎなんだよ!?」
「ルクスを追放しておいて、その言い草は何よ!? それを言うなら、あの子を追放したからこそ、呪われたんじゃないの!?」
「ああ!? あんな双子の気持ち悪い女を12年間も飼っていたのが原因なんだろ!」
「飼って……いた? ルクスはペットじゃないわよ!」

 ティーナが声を荒らげ、精霊魔法の準備を始める。
 い、今……この家で精霊魔法を使えるのは彼女だけだ。
 それに震えだしたレグドだったが、オレはその二人に割って入った。

「や、やめないか……! どちらにせよだ! ここにいる全員で生活できるわけがない。幸い、爵位を譲ることになるレベリス家とは親しい。どうにか、残してもらえるようにオレは話をするつもりだ」
「……全員は無理、ね。それで、誰を切り捨てるのよ?」

 ティーナが腕を組みこちらを見て来た。
 もちろん、そんなもの決まっている。
 オレが言うより先に、側室とレグドが叫んだ。

「双子なんざ生みやがった女と、その姉は不要だろ!」
「そうよそうよ! 私たちは立派な子どもを生んで、もう婿入りとかさせているんだから!」
「ええ、そうね! なんならそっちの家にお世話になろうかしら……!」

 ……そういうわけだ。

「ティーナ、それにジル。おまえたちを追放する」

 ティーナはその言葉を受け、小さくため息をついてから髪をかきあげた。

「あっそ。分かったわ。それならそれで別に構わないわ。母さん、行こう」
「……ええ、そうね。今まで、お世話になりました」

 ジルはそういってこちらに頭を下げて来た。毅然とした態度のまま、彼女らは去っていった。



 そしてオレたちはというと、オレはレベリス家にて雇ってもらい今は何とか地方の領主代行を行っている。 
 案外、この生活は気楽でいい。
 費用を削り、懐に入れることも出来るしな。一つの街と、小さな村の管理を任されているが、小さな村に配置する予定の人間を削れば、その分オレの金にすることができた。
 他にも、税を上げ、オレの懐を潤すこともできた。
 この調子で金を集め、それを元手に貴族との交友を深めていけば……もしかしたら立場を改善できるかもしれない。
 オレはその時が来るのを、じっと待ち続けた。
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