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第13話
しおりを挟む「何か引っかかるの?」
「うーん、レベリス卿がただすっとぼけてただけなら楽でいいんだけどたぶん何かしら面倒な理由があると思うのよね。それがどうなるか……考えただけで頭が痛くなってきたのよ」
「そっか。色々大変」
「宮廷精霊術師になったらルクスも同じように対応するのよ?」
えぇ、私戦いだけしたいんだけど?
でも、強者と戦うために最低限必要ならば、仕方ないのかもしれない。
「それじゃあ、その話はこのくらいとしておきましょうか。次はルクスの今後についてね」
「私? なんか試験とか受けるんだよね?」
「ええ、そうね。それ含めて、細々とした部分について話していくわね」
「分かった」
頭を使うのはあまり好きじゃない。
考えるのはだいたいティルガにお願いしてきたので、ティルガも連れてくれば良かったと少し後悔。
「宮廷にはまあ色々な部署があるのよ。ルクスが入るのは精霊術師団ね」
「……うん」
宮廷内に出入りできるような立場の人間が、いわゆる宮廷で仕事をしている人間というのは聞いたことがある。
宮廷精霊術師と、通常の精霊術師ではまた違う……とかだったはず。
「簡単に自己紹介をするのなら……私は宮廷第三精霊術師団のファイランよ。ルクスも試験を受けて合格した場合は、うちの師団に入ることになっているの」
「宮廷第三精霊術師団……」
……長い。
「長くて覚えにくいかしら?」
ずばり的中させられてしまった。
そんなに顔に出ていただろうか。誤魔化すように苦笑を浮かべると、ファイランは続けて口を開いた。
「宮廷の騎士団、精霊術師団の役割は一般的な騎士や精霊術師でも対応できないような高難易度の事件を解決するのが主な仕事になるわね。それで、ルクスにも宮廷精霊術師になってほしいと思っているわ」
「うん、それは聞いていた」
「そのためには試験が必要だけど、あなたならきっと大丈夫よ。今の宮廷精霊術師の主な仕事は魔人の討伐なんだから」
魔人。ファイランとともに先ほど仕留めた魔人
ファイランはその存在を知っているようだった。
「驚かないのね」
「魔人については聞いたことがあったから」
「あらそうなの? 一応、一部の人間にしか話はしてなかったけど」
あっ、そうなの?
一応、ティルガのことは伏せておいたほうがいい。
というのも、霊獣も伝説の生き物だから。
私だって目立ちたくないので、ごまかすことにした。
「おとぎ話の魔人と似たような見た目をしていたから。勝手な想像もあったけど」
私が真剣な雰囲気を出してそういうと、ファイランは一応納得してくれたようだった。
「そうなのね。魔物の被害から、民間の事件まで本当に様々で、もう人手が足りなくて。とにかく、宮廷精霊術師の試験に合格すれば、晴れてあなたもそれらの仕事を行うってことよ」
「試験の流れはどうなるの? 宮廷精霊術師になるにはまず精霊術師になる必要があるけど……」
「今のあなたはもう精霊術師として雇わせてもらっているわ。その部分の心配はないわ」
「つまり、宮廷精霊術師になるための試験ってこと?」
「ええ。他の精霊術師たちに混ざって試験を受けてもらうってことね」
「……なるほど」
「まあ、魔人とあれだけ戦える宮廷精霊術師なんてそんなにいないから万に一つも落ちることはないと思うわ。本番でも実力通りの力を発揮出来れば問題ないわ。緊張とかはするタイプ?」
「別にしない」
「それならなおさら問題ないわよ」
今後の流れがようやく分かってきた。
「頑張る」
「堂々としているわね……騎士に関しての話しは、私からレベリス卿には手紙を出しておくわ。宮廷にも同様の手紙を出したからすぐに、そちらからも確認の連絡がいくはずよ」
「それなら、良かった」
「レベリス卿の騎士部隊が派遣されるまでは、共に来た騎士たちを残すつもりよ。それならば、心配もない、わよね?」
騎士たちが残ってくれるというのなら、魔物くらいの相手なら何とかなるだろう。
これでファイランとの話は終わった。
ファイランが一息ついたあと、こちらに片手を差し出してきた。
「それじゃあ……改めてよろしくね、ルクス」
「一つだけ確認させてほしい」
「何かしら?」
「もしも、試験落ちたら……どうなる?」
少し緊張する。私の顔を覗き込むようにファイランが見てきた。
「あら、意外と不安?」
「どういう試験か良くわかってないから」
ファイランとしばらく見つめあい、そして……彼女は私の肩を叩いてきた。
「またあとで受験してもらう予定よ? それまでは、精霊術師として私の仕事を手伝ってもらうわ。だから、安心して大丈夫よ」
ファイランはウインクしてきた。
なるほど。
試験に落ちても大丈夫なようだけど、それでもなるべくなら一発で合格したいものだ。
ここまで期待されていて、試験を落ちてしまったら恥ずかしい。
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