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第3話 長女ヨルバ視点
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私はヨルバ・リースト。リースト家の長女だ。
先日、忌々しい双子の妹をようやく家から追放できたため、今は気分が良かった。
私は今、精霊術師になるための学園に通っている。
午後。
実戦形式での訓練を行うため、街の外へと出ていた。
実戦訓練……つまりは魔物狩りだ。
精霊術師たちにとって、実戦での訓練が一番力がつく。
私はジョルク様とペアを組み、私たちの護衛として騎士が二名つく。
私たちにもしものことがあっては大変なので、課外活動では必ず護衛がつくことになっている。
さらに、全体のフォローが出来るようにと騎士たちがぞろぞろと待機している。
第二王子様であるジョルク様がいるというのもあって、その厳重さはすさまじいものがあった。
……いずれは、私もその対象になるだろう。
この国では、能力面で優れた人間が王子の正妻、あるいは側室の立場になることが出来る。
優れた能力というのは、もちろん精霊魔法のことだ。
家柄が良くない場合は側室に、家柄も整っている場合は正妻になれる。
私の家は伯爵だ。家柄は問題ない。
そして、何より他の追随を許さないほどの才能を有している。
私はどうにも微精霊たちに好かれているようで、精霊魔法の才能はピカ一だった。
つまり――将来的に、私はジョルク様の正妻にだってなれるということだ。
本当に、才能というのはありがたい。
大して訓練せずとも、王子様と結婚出来る立場に私はなれたのだから。
く、くふふ。だらしない笑みが出てしまいそうになるのを、必死にこらえる。
「ヨルバ、今日はどちらからやる?」
おっといけない。
ジョルク様が声をかけてくださった。
これだけかっこいい人と私は将来……。
そのためにも、ここで自慢の精霊魔法を見せないとね。
「まずは私にお任せくださいジョルク様。 あそこにちょうど、ゴブリンがいますね! 早速私の精霊術を披露しましょう」
「それじゃあ、キミに任せようか。キミの精霊魔法は参考になるからね」
ジョルク様が目を輝かせ、こちらを見る。
私はいつものように魔力をこめ、周囲の微精霊たちの力を借りる。
ほら、さっさと力を貸しなさい!
そう思って魔力をこめて、こめて……。
しかし、いつものような力の感覚がまるでない。
……ど、どういうこと?
「どうしたんだヨルバ?」
「そ、その微精霊が誰も力を貸してくれなくて……」
「そうなのかい? ……えーと、僕は大丈夫だけど」
ジョルク様がそういって目の前で小さな火を生み出した。
私はそれに焦りを覚える。
何度も、何度も魔力をこめても、一切微精霊が反応してくれないんだ。
「な、なんで!? なんでよ……っ!!」
こ、こんな情けない姿をジョルク様に見せるわけにはいかない!
「お、落ち着けヨルバ。慌てないで……キミは、この国でも数少ない、全属性を扱える精霊術師じゃないか」
そう。私と、妹たちは皆全属性の精霊術が使える天才だった。
唯一、精霊術のせの字も知らない疫病神であるルクスは、もう屋敷から追い出したのに……っ!
まるで、あの子の呪いかのように、微精霊たちは一切力を貸してくれない!
「そ、そうだけど……!」
それから、私はひたすらに魔力をこめ続けた。
しかし――結局その日は、精霊魔法を使うことができなかった。
「なんでよ……どうなっているのよ……っ!」
「ちょ、調子の悪い日もあるものだよ。気にしないでヨルバ」
とん、と第二王子様が私の肩を叩いてきた。
けれど私の心が晴れることはなかった。
先日、忌々しい双子の妹をようやく家から追放できたため、今は気分が良かった。
私は今、精霊術師になるための学園に通っている。
午後。
実戦形式での訓練を行うため、街の外へと出ていた。
実戦訓練……つまりは魔物狩りだ。
精霊術師たちにとって、実戦での訓練が一番力がつく。
私はジョルク様とペアを組み、私たちの護衛として騎士が二名つく。
私たちにもしものことがあっては大変なので、課外活動では必ず護衛がつくことになっている。
さらに、全体のフォローが出来るようにと騎士たちがぞろぞろと待機している。
第二王子様であるジョルク様がいるというのもあって、その厳重さはすさまじいものがあった。
……いずれは、私もその対象になるだろう。
この国では、能力面で優れた人間が王子の正妻、あるいは側室の立場になることが出来る。
優れた能力というのは、もちろん精霊魔法のことだ。
家柄が良くない場合は側室に、家柄も整っている場合は正妻になれる。
私の家は伯爵だ。家柄は問題ない。
そして、何より他の追随を許さないほどの才能を有している。
私はどうにも微精霊たちに好かれているようで、精霊魔法の才能はピカ一だった。
つまり――将来的に、私はジョルク様の正妻にだってなれるということだ。
本当に、才能というのはありがたい。
大して訓練せずとも、王子様と結婚出来る立場に私はなれたのだから。
く、くふふ。だらしない笑みが出てしまいそうになるのを、必死にこらえる。
「ヨルバ、今日はどちらからやる?」
おっといけない。
ジョルク様が声をかけてくださった。
これだけかっこいい人と私は将来……。
そのためにも、ここで自慢の精霊魔法を見せないとね。
「まずは私にお任せくださいジョルク様。 あそこにちょうど、ゴブリンがいますね! 早速私の精霊術を披露しましょう」
「それじゃあ、キミに任せようか。キミの精霊魔法は参考になるからね」
ジョルク様が目を輝かせ、こちらを見る。
私はいつものように魔力をこめ、周囲の微精霊たちの力を借りる。
ほら、さっさと力を貸しなさい!
そう思って魔力をこめて、こめて……。
しかし、いつものような力の感覚がまるでない。
……ど、どういうこと?
「どうしたんだヨルバ?」
「そ、その微精霊が誰も力を貸してくれなくて……」
「そうなのかい? ……えーと、僕は大丈夫だけど」
ジョルク様がそういって目の前で小さな火を生み出した。
私はそれに焦りを覚える。
何度も、何度も魔力をこめても、一切微精霊が反応してくれないんだ。
「な、なんで!? なんでよ……っ!!」
こ、こんな情けない姿をジョルク様に見せるわけにはいかない!
「お、落ち着けヨルバ。慌てないで……キミは、この国でも数少ない、全属性を扱える精霊術師じゃないか」
そう。私と、妹たちは皆全属性の精霊術が使える天才だった。
唯一、精霊術のせの字も知らない疫病神であるルクスは、もう屋敷から追い出したのに……っ!
まるで、あの子の呪いかのように、微精霊たちは一切力を貸してくれない!
「そ、そうだけど……!」
それから、私はひたすらに魔力をこめ続けた。
しかし――結局その日は、精霊魔法を使うことができなかった。
「なんでよ……どうなっているのよ……っ!」
「ちょ、調子の悪い日もあるものだよ。気にしないでヨルバ」
とん、と第二王子様が私の肩を叩いてきた。
けれど私の心が晴れることはなかった。
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