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第五章 聖龍連峰
大いなる眠り
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大地を揺るがす激震の余波はジルバラント王国全土に及び、王都クリンゲルや城塞都市ゴーザシルトにおいても多数の家屋や城壁が倒壊し、膨大な死傷者が発生した。その数、死者2万人、重軽傷者合わせて200万人に達する。
すでに日が昇っていた事と、魔法による消火や治癒などの救済活動により、震災規模に対しての死者は少なかったものの、建物の倒壊や財産の焼失など国民は未曽有の大混乱に見舞われた。
しかし、これはまだ波乱の序章に過ぎなかった。
ジルバラント王国の北を東西に走る山脈、聖龍連峰。
延長800キロメートル、最高峰4500メートルに達する龍種の住まうこの霊峰こそが、現生する最古の龍、褐色の大地を支配せし大いなる霊峰である。
その存在はエルフの大長老マイスラ・ラ・リルルの『エルフ進化論』でも触れられており、1億5千万歳のマイスラが誕生した時にはすでに延長500キロメートルの山脈龍として、現在のジルバラント王国よりも大陸中央へ寄った場所に生息していた。
褐色の大地を支配せし大いなる霊峰は、その当時からすでに眠りについており、以来数千年に一度目覚めては大地を震わせながら少しずつ移動している。
「つまりその褐色の大地を支配せし大いなる霊峰が目覚めて動いたのがさっきの揺れです」
黄金龍の説明に驚きを隠せないナナシとキーラ。モニカは伝説を目の当たりにして大興奮である。
「聖龍連峰が地形龍である可能性は過去の伝承から推測されていたけれど、今でも生きてて動くなんて! 教皇はこの事知ってたわよね!? 悔しいいいいいい! でも地形龍の背中で動くのを体験してやったわ! あははは!」
フリーダも腕を組んで呟く。
「まさか大長老の与太話がホントだったなんて……」
レジオナはふにゃふにゃと黄金龍に問いかける。
「クーちん、褐色様の動きってさ~、これで終わりなの~?」
黄金龍は残念そうに首を左右に振り、答える。
「いいえ、目覚めた以上は少なくとも数歩移動するでしょうね」
その言葉に戦慄するナナシたち。つまりこの規模以上の揺れがあと数回も発生するのだ。そうなればジルバラント王国は完全に壊滅するだろう。
キーラが意を決したように言う。
「ナナシ、ウチらで止めるぞ。あたいがおめーを千倍に巨大化させてやる。1秒ありゃあ地形龍の頭を砕けるだろ」
その言葉を聞いた瞬間、モニカがとっさに『思考加速』を使い、知識の女神の加護『深淵を覗く者』を祈念しナナシたちに祝福を与える。間髪を入れず、龍種たちの殺気がナナシたちに襲い掛かった。
物理的衝撃すら感じる程の恐るべき殺気が、『龍種を倒せし者』による耐性など紙切れのように蹴散らしナナシたちを打ちのめす。『深淵を覗く者』の加護が無ければ恐怖のあまり自我が崩壊していたであろう。その圧力にナナシたちは耐え切れず、全員がその場にうずくまってしまう。
黄金龍がゆっくりと口を開く。流れ出る西方共通語はあくまで流麗であり、それでいて聞く者を恐怖のどん底へと叩き込む冷たさを持っていた。
「キーラちゃん、友達のよしみで今回だけは許してあげる。この聖龍連峰でどの龍種と戦おうが個々の勝手だけど、我らが祖たる褐色の大地を支配せし大いなる霊峰を害する事だけは看過できないわ」
キーラは息も絶え絶えに顔を上げると、黄金龍に哀願する。
「けっ、けどよクー様、このままじゃジルバラント王国のみんなが死んじまう!」
しかし黄金龍の反応は冷ややかなものだった。
「人間が死のうが生きようが、私たち龍種に何の関係が?」
レジオナがふにゃふにゃと助け舟を出す。
「でもさ~、ジルバラント王国が壊滅したら人間の文化も文明も衰退するんよ~。いいの~?」
その言葉に真っ先に反応したのは黒龍だった。
「ダメ! それはダメよ! っていうかドワーフの地下工房もヤバいんじゃないの!? なんとか止めないと!」
黒龍が必死の形相で黄金龍に詰め寄るものの、あっさりとチキンウィングフェイスロックに決められギブアップする。
「人間の文明など100年もすればまた復興するでしょう? 悠久の時を生きる龍種の祖とは比べるべくもないわ」
涙目の黒龍にガジガジと首筋を噛まれながら、黄金龍が淡々と告げた。これが本来の龍種と人間の関係である。人間の都合を龍種が慮る事などあり得ないのだ。
しかし、だからと言ってあきらめる事は出来なかった。ナナシとキーラは目線をかわすとうなずき合う。それを見た黄金龍は人化を解き頭胴長120メートルの巨大な龍へと変化し、ナナシに問う。
「ナナシたん、私たちと本気でやるつもり? まさか勝てると思ってるんじゃないでしょうね」
ナナシは筋力に任せ立ち上がると、黄金龍の目を見据え答える。
「勝てる勝てないじゃない。このままジルバラントの人たちを放っておけないんです」
黄金龍は目を細めると、不思議そうに言う。
「オークのあなたがなぜそこまで人間の事を気に掛けるの? 見ず知らずの人間がどうなろうがあなたには関係ないでしょう」
「たとえ関係ない人々でも、理不尽に命が奪われるのを見過ごせません」
「人間が死ぬのは見過ごせないのに、私たちを殺すのはいいのかしら?」
「クー様たちを殺したくなんかない……でもあなたたちは手加減出来る相手じゃない」
黄金龍の言葉に、悲しそうに顔を歪め答えるナナシ。その表情を見た黄金龍から不意に殺気が消える。それまで殺気を放っていた他の龍種たちも、女王の様子に気付いて臨戦態勢を解いてゆく。
黄金龍は再び人化すると、ふっと微笑みナナシに語りかける。
「私と戦おうという時に、怒りでも悲壮でも怯えでもなく、悲しみの表情を見せたのはあなたが初めてよ。ひとつ聞きたいのだけれど、それでも人間のために褐色の大地を支配せし大いなる霊峰を殺すつもりなのかしら?」
ナナシはぎゅっと握った拳を見つめ、ぽつりぽつりと話し始める。
「自分のこの力は……たぶん、この世の理を超える事ができるはずなんです。だから……バーガル様を殺さずに……気絶させる事も可能だと考えています」
ナナシの言葉を引き継ぎ、レジオナがふにゃふにゃと補足を入れる。
「ナナシたんの筋力は神域を超える151だからにゃ~。ま~いくらバーガル様といえど昏倒必至でしょ~」
レジオナの説明に一瞬目を見開く黄金龍。
「なるほど、筋力151……それはそれは、大変な隠し玉ね。全く無策というわけじゃないと思ってはいたけれど、そんな奥の手があったとは驚きだわ」
「この力は、ダメージの与え方にも融通が利きます。多分、気絶させるって事を最大限意識すれば、外傷を与えずに意識だけ無くす事が出来ると思います」
ナナシの言葉に、目をつぶり腕組みをして考え込む黄金龍。この場で殺し合いをして龍種に死者を出してでもナナシを阻止するか、祖龍に手を上げる事を容認するか。葛藤に苛まれる事しばし、やがてゆっくりと目蓋を開き、告げる。
「わかりました。友人であるあなたたちに免じて、いちどだけチャンスを与えましょう。褐色の大地を支配せし大いなる霊峰を止める試みを許します」
黄金龍の寛大なる裁量に沸き立つナナシたち。しかしその後に続く言葉に再び戦慄を覚える。
「ただし、もしも我らが祖龍を殺した場合、この私が直々に全人類を滅ぼします。覚悟しておくように」
龍種の女王たる黄金龍の言葉は重い。ナナシがしくじったなら、その宣言は必ず実行されるであろう。それでもナナシは黄金龍の目をしっかり見つめると、力強くうなずいた。
すでに褐色の大地を支配せし大いなる霊峰が目覚めた以上、動き出すのは時間の問題であった。山脈龍が次に立ち上がる前に何としても手を打つため、ナナシはキーラを抱えて空中を疾走する。
その後方には、顛末を見届けるため黄金龍や黒龍、その他数十体の龍種が続く。フリーダ、モニカ、レジオナの3人は黒龍の腕に抱かれて着いて来ていた。モニカは山脈龍の攻略という歴史的な出来事を余す所なく録画中である。
眼下の森では数えきれないほどの魔獣の群れが南下を始めている。地震によるパニックで暴走が起きているのだ。地震の被害に魔獣暴走が重なれば、たとえ王都といえど防ぎきれるものではない。ましてや地方都市や村などは壊滅を免れぬであろう。
ナナシは胸に抱えたキーラに話しかける。
「キーラ、巨大化の時間だけど、せめて5秒欲しい」
「はァ? 5秒弱確保すんなら、いくらおめーが元々デカイつったって1000メートルくらいのサイズにしかなんねえぞ。山脈龍の頭は1500メートルあんだから、せめておめーも2000メートルは無いと厳しんじゃねえか?」
「サイズは確かにそのくらい必要だと思う。けど、時間は5秒欲しい」
「一撃で決める自信がねーのか?」
キーラの言葉にうなずくナナシ。
「最終的には自分を信じるしかないけど、相手は数億年生きてる龍種だから。カーグラを殴ったキーラみたいに、最悪の場合は自分の腕を引きちぎってエネルギー体の腕で殴らなきゃいけないかも。その判断をするにしても、5秒は欲しい」
ナナシの言うことにも一理ある。数億年も生きている龍種など、どんな防御を持っているか分かったものではない。キーラは左手で頭を掻きむしると、気合を入れるように自分の頬を張った。
「そうだな、どっちみち失敗したらその先なんかねーんだ。あたいも出し惜しみしてる場合じゃねえ。恩寵の『巨大化』に神聖干渉の『巨大化』重ねりゃ……2500メートルで4.6秒。あたいにゃこれが限界だけど、行けるかナナシ?」
混沌浸食を防いだ事でキーラの存在力も大幅に増している。今ならば神聖干渉の倍率も2.5倍まで可能となっていた。キーラと目を合わせ、ナナシは力強く答える。
「ありがとうキーラ。絶対にバーガル様を止めて見せるよ」
ほどなく一行は聖龍連峰の西端、山脈龍の頭部が横たわる場所へと到着した。幸いな事にまだ山脈龍は立ち上がっていない。その巨大な目も、とろんと半開きである。
キーラはナナシの尻をパーンと張り、「頑張れよ!」と声をかけると、黄金龍に抱えられその場を離れる。そして、十分離れた場所からナナシを巨大化させた。
一瞬で2560メートルに巨大化したナナシに反応し、山脈龍が首をもたげる。極限まで集中したナナシの、引き伸ばされた時間感覚の中で、山脈龍とナナシの視線が交わった。
その眠たげで黒目がちな視線は、元々それほど高くなかったナナシの闘争心を霧散させてしまう。ナナシは腰だめに引き絞った拳を構えたまま躊躇する。
そもそも山脈龍は誰を害そうとしているわけでもない。ただ、ふと目覚めてほんの少し動いているだけである。矮小な人間にとってはまさに自然災害に等しいが、だからといって数億年を生きるこの偉大な龍種を殴って昏倒させるのが果たして正しい事なのか。
しかし、ナナシの拳には数万人の命がかかっている事もまた厳然たる事実である。迷う程の時間もない。ほんの刹那の間にそれらの思考を巡らせ、ナナシは決断した。どうせ自分の筋力を信じるしか無いのだ。ならば最大限自分の筋力を信じ、適切な効果を発揮させるのみ。
ナナシは拳を開き山脈龍に近づくと、時間の許す限りそっと手を差し伸べ、山脈龍の下顎に優しく添える。そしてもう片方の手で慈しむように山脈龍の頭を撫でた。もういちどゆっくりと眠りにつけるよう、願いを込めて。
3回撫でた所で時間切れとなったナナシは、小さくなった体で山脈龍の鼻先から落下した。見上げるナナシの視線の先では山脈龍が大きく口を開け、周囲の魔素とともに息を吸い始める
遠巻きに見ていたキーラたちはナナシの意外な行動に声もない。さらに山脈龍がブレスの前兆のごとき吸気を始めたのを見て、大慌てで射線から離れようとするが、龍種の飛翔能力をもってしても山脈龍の吸気に抗ってその場に止まるのが精いっぱいである。
ナナシも山脈龍に吸い込まれそうになるのを、とっさに空間そのものを掴む事で耐える。ナナシの絶対筋力による、文字通りの空間把握である。
やがて、全長800キロメートルにも及ぶ山脈龍の、永遠とも思える吸気がついに終わりを迎えた。
散開した龍種たちとともに固唾をのんで見守るキーラ。モニカは世紀の一瞬を捉えるべく『並列思考』を発動しエネルギーの流れと実映像を同時録画している。その隣でフリーダも魔素の流れとエネルギーの動きを注視していた。
「山脈龍のブレス! いったいどれほどの威力が!? 興味深い……んんっ?」
「ううううう、今度こそ転移魔法のアンカー……アンカーを……あれっ?」
そして、二人同時に違和感に気づく。その違和感を察したかのように、レジオナがふにゃふにゃと笑った。
「あはは~、あれってあくびだよねぇ~」
はたして、レジオナの言葉通り、山脈龍はブレスを吐く事なく口を閉じる。そして鼻からぶふうと息を吹き出すと、ゆっくりと頭を地面につけた。そのまま数回瞬きをすると、瞼を閉じ、再び大いなる眠りにつく。
龍種たちはその様子を見届けると、褐色の大地を支配せし大いなる霊峰の眠りを妨げぬよう、静かにその場を去っていった。
黄金龍と黒龍は着地したナナシのもとへと舞い降りると、キーラたちを下ろし人化する。
キーラは満面の笑みでナナシに駆け寄り、思い切りジャンプしてハイタッチを交わした。
「ビックリさせやがって! でもまあ、おめーらしいぜ。よくやったな」
その後ろでモニカが深々とため息をつく。
「はぁ、山脈龍のブレス見たかったわ。数千年に1度の機会だったのに。眠る前にせめて1発……」
「ほんっと、モニカたんそ~いうとこだよね~。ここまでブレないとある意味尊敬するんよ~」
ふにゃふにゃとレジオナの突っ込みが入り、フリーダのぼやきが重なる。
「まだこれから魔獣暴走をなんとかしなきゃいけないんでしょ? もう勘弁してほしいんだけど」
わいわいとナナシを取り囲む一同に、人化した黄金龍と黒龍が歩み寄る。それに気づいたナナシが黄金龍に向き直ると、黄金龍は右手を胸元に当てて微笑み、軽く会釈した。
「オークの皇帝たるナナシ・オーカイザー。褐色の大地を支配せし大いなる霊峰を再び眠りに誘ってくれた事、龍種の女王として感謝いたします。我ら聖龍連峰の龍種はこの事を未来永劫忘れぬでしょう」
龍語により告げられた感謝の言葉は、『魂の歌声』により一同の心に優しく響き渡った。黄金龍はさらに笑みを深めると、流麗な西方共通語で続ける。
「ナナシたん、我らが祖龍に優しくしてくれてありがとう。それにしても、よくあそこで撫でるという決断ができたわね」
黄金龍の問いに、ナナシははにかみながら答える。
「バーガル様の目を見たら、とてもじゃないけど殴る気にならなくて。あとはもう賭けだったけど……失敗してたらと思うとゾッとします」
そう言ってホッとひと息ついたとたん、ナナシの足から力が抜け、その場に尻もちをついてしまう。今更ながら決断の重さに腰が抜けてしまったのだ。そんなナナシの肩にキーラが優しく触れ、静かに語りかける。
「ジルバラント王国はもう何度もおめーに助けられてんだ。おめーが全力を尽くして失敗したんなら、誰にも責める権利なんてねーよ」
「そ~は言ってもにゃ~、もし失敗してたらナナシたんは自分が許せなかったでしょ~?」
キーラの慰めにレジオナがふにゃふにゃと突っ込む。それを聞いたフリーダが腕組みをして言う。
「まあ、最悪の場合エルフの秘儀を伝授してあげるつもりだったから。原初のオークなら多分できたと思うわよ。本人は消滅するけど」
「エルフの秘儀! 興味深い!」
速攻でモニカが食いつく。
「教えないわよ、秘儀なんだから。なんにせよ無事片付いたんだし、次は魔獣暴走でしょ。どうすんの?」
フリーダの指摘に表情が引き締まる一同。ジルバラント王国の危機はまだ去ったわけではない。ジルバラント王国全土を襲うであろう魔獣暴走にどう対処すればいいのか。
顔を見合わせるナナシたちに黄金龍が告げる。
「ナナシたん、私たちも協力するわよ。だって私たちお友達でしょう?」
こうしてナナシの優しさにより、ジルバラント王国は未曽有の危機において最強の援軍を得る事となった。
すでに日が昇っていた事と、魔法による消火や治癒などの救済活動により、震災規模に対しての死者は少なかったものの、建物の倒壊や財産の焼失など国民は未曽有の大混乱に見舞われた。
しかし、これはまだ波乱の序章に過ぎなかった。
ジルバラント王国の北を東西に走る山脈、聖龍連峰。
延長800キロメートル、最高峰4500メートルに達する龍種の住まうこの霊峰こそが、現生する最古の龍、褐色の大地を支配せし大いなる霊峰である。
その存在はエルフの大長老マイスラ・ラ・リルルの『エルフ進化論』でも触れられており、1億5千万歳のマイスラが誕生した時にはすでに延長500キロメートルの山脈龍として、現在のジルバラント王国よりも大陸中央へ寄った場所に生息していた。
褐色の大地を支配せし大いなる霊峰は、その当時からすでに眠りについており、以来数千年に一度目覚めては大地を震わせながら少しずつ移動している。
「つまりその褐色の大地を支配せし大いなる霊峰が目覚めて動いたのがさっきの揺れです」
黄金龍の説明に驚きを隠せないナナシとキーラ。モニカは伝説を目の当たりにして大興奮である。
「聖龍連峰が地形龍である可能性は過去の伝承から推測されていたけれど、今でも生きてて動くなんて! 教皇はこの事知ってたわよね!? 悔しいいいいいい! でも地形龍の背中で動くのを体験してやったわ! あははは!」
フリーダも腕を組んで呟く。
「まさか大長老の与太話がホントだったなんて……」
レジオナはふにゃふにゃと黄金龍に問いかける。
「クーちん、褐色様の動きってさ~、これで終わりなの~?」
黄金龍は残念そうに首を左右に振り、答える。
「いいえ、目覚めた以上は少なくとも数歩移動するでしょうね」
その言葉に戦慄するナナシたち。つまりこの規模以上の揺れがあと数回も発生するのだ。そうなればジルバラント王国は完全に壊滅するだろう。
キーラが意を決したように言う。
「ナナシ、ウチらで止めるぞ。あたいがおめーを千倍に巨大化させてやる。1秒ありゃあ地形龍の頭を砕けるだろ」
その言葉を聞いた瞬間、モニカがとっさに『思考加速』を使い、知識の女神の加護『深淵を覗く者』を祈念しナナシたちに祝福を与える。間髪を入れず、龍種たちの殺気がナナシたちに襲い掛かった。
物理的衝撃すら感じる程の恐るべき殺気が、『龍種を倒せし者』による耐性など紙切れのように蹴散らしナナシたちを打ちのめす。『深淵を覗く者』の加護が無ければ恐怖のあまり自我が崩壊していたであろう。その圧力にナナシたちは耐え切れず、全員がその場にうずくまってしまう。
黄金龍がゆっくりと口を開く。流れ出る西方共通語はあくまで流麗であり、それでいて聞く者を恐怖のどん底へと叩き込む冷たさを持っていた。
「キーラちゃん、友達のよしみで今回だけは許してあげる。この聖龍連峰でどの龍種と戦おうが個々の勝手だけど、我らが祖たる褐色の大地を支配せし大いなる霊峰を害する事だけは看過できないわ」
キーラは息も絶え絶えに顔を上げると、黄金龍に哀願する。
「けっ、けどよクー様、このままじゃジルバラント王国のみんなが死んじまう!」
しかし黄金龍の反応は冷ややかなものだった。
「人間が死のうが生きようが、私たち龍種に何の関係が?」
レジオナがふにゃふにゃと助け舟を出す。
「でもさ~、ジルバラント王国が壊滅したら人間の文化も文明も衰退するんよ~。いいの~?」
その言葉に真っ先に反応したのは黒龍だった。
「ダメ! それはダメよ! っていうかドワーフの地下工房もヤバいんじゃないの!? なんとか止めないと!」
黒龍が必死の形相で黄金龍に詰め寄るものの、あっさりとチキンウィングフェイスロックに決められギブアップする。
「人間の文明など100年もすればまた復興するでしょう? 悠久の時を生きる龍種の祖とは比べるべくもないわ」
涙目の黒龍にガジガジと首筋を噛まれながら、黄金龍が淡々と告げた。これが本来の龍種と人間の関係である。人間の都合を龍種が慮る事などあり得ないのだ。
しかし、だからと言ってあきらめる事は出来なかった。ナナシとキーラは目線をかわすとうなずき合う。それを見た黄金龍は人化を解き頭胴長120メートルの巨大な龍へと変化し、ナナシに問う。
「ナナシたん、私たちと本気でやるつもり? まさか勝てると思ってるんじゃないでしょうね」
ナナシは筋力に任せ立ち上がると、黄金龍の目を見据え答える。
「勝てる勝てないじゃない。このままジルバラントの人たちを放っておけないんです」
黄金龍は目を細めると、不思議そうに言う。
「オークのあなたがなぜそこまで人間の事を気に掛けるの? 見ず知らずの人間がどうなろうがあなたには関係ないでしょう」
「たとえ関係ない人々でも、理不尽に命が奪われるのを見過ごせません」
「人間が死ぬのは見過ごせないのに、私たちを殺すのはいいのかしら?」
「クー様たちを殺したくなんかない……でもあなたたちは手加減出来る相手じゃない」
黄金龍の言葉に、悲しそうに顔を歪め答えるナナシ。その表情を見た黄金龍から不意に殺気が消える。それまで殺気を放っていた他の龍種たちも、女王の様子に気付いて臨戦態勢を解いてゆく。
黄金龍は再び人化すると、ふっと微笑みナナシに語りかける。
「私と戦おうという時に、怒りでも悲壮でも怯えでもなく、悲しみの表情を見せたのはあなたが初めてよ。ひとつ聞きたいのだけれど、それでも人間のために褐色の大地を支配せし大いなる霊峰を殺すつもりなのかしら?」
ナナシはぎゅっと握った拳を見つめ、ぽつりぽつりと話し始める。
「自分のこの力は……たぶん、この世の理を超える事ができるはずなんです。だから……バーガル様を殺さずに……気絶させる事も可能だと考えています」
ナナシの言葉を引き継ぎ、レジオナがふにゃふにゃと補足を入れる。
「ナナシたんの筋力は神域を超える151だからにゃ~。ま~いくらバーガル様といえど昏倒必至でしょ~」
レジオナの説明に一瞬目を見開く黄金龍。
「なるほど、筋力151……それはそれは、大変な隠し玉ね。全く無策というわけじゃないと思ってはいたけれど、そんな奥の手があったとは驚きだわ」
「この力は、ダメージの与え方にも融通が利きます。多分、気絶させるって事を最大限意識すれば、外傷を与えずに意識だけ無くす事が出来ると思います」
ナナシの言葉に、目をつぶり腕組みをして考え込む黄金龍。この場で殺し合いをして龍種に死者を出してでもナナシを阻止するか、祖龍に手を上げる事を容認するか。葛藤に苛まれる事しばし、やがてゆっくりと目蓋を開き、告げる。
「わかりました。友人であるあなたたちに免じて、いちどだけチャンスを与えましょう。褐色の大地を支配せし大いなる霊峰を止める試みを許します」
黄金龍の寛大なる裁量に沸き立つナナシたち。しかしその後に続く言葉に再び戦慄を覚える。
「ただし、もしも我らが祖龍を殺した場合、この私が直々に全人類を滅ぼします。覚悟しておくように」
龍種の女王たる黄金龍の言葉は重い。ナナシがしくじったなら、その宣言は必ず実行されるであろう。それでもナナシは黄金龍の目をしっかり見つめると、力強くうなずいた。
すでに褐色の大地を支配せし大いなる霊峰が目覚めた以上、動き出すのは時間の問題であった。山脈龍が次に立ち上がる前に何としても手を打つため、ナナシはキーラを抱えて空中を疾走する。
その後方には、顛末を見届けるため黄金龍や黒龍、その他数十体の龍種が続く。フリーダ、モニカ、レジオナの3人は黒龍の腕に抱かれて着いて来ていた。モニカは山脈龍の攻略という歴史的な出来事を余す所なく録画中である。
眼下の森では数えきれないほどの魔獣の群れが南下を始めている。地震によるパニックで暴走が起きているのだ。地震の被害に魔獣暴走が重なれば、たとえ王都といえど防ぎきれるものではない。ましてや地方都市や村などは壊滅を免れぬであろう。
ナナシは胸に抱えたキーラに話しかける。
「キーラ、巨大化の時間だけど、せめて5秒欲しい」
「はァ? 5秒弱確保すんなら、いくらおめーが元々デカイつったって1000メートルくらいのサイズにしかなんねえぞ。山脈龍の頭は1500メートルあんだから、せめておめーも2000メートルは無いと厳しんじゃねえか?」
「サイズは確かにそのくらい必要だと思う。けど、時間は5秒欲しい」
「一撃で決める自信がねーのか?」
キーラの言葉にうなずくナナシ。
「最終的には自分を信じるしかないけど、相手は数億年生きてる龍種だから。カーグラを殴ったキーラみたいに、最悪の場合は自分の腕を引きちぎってエネルギー体の腕で殴らなきゃいけないかも。その判断をするにしても、5秒は欲しい」
ナナシの言うことにも一理ある。数億年も生きている龍種など、どんな防御を持っているか分かったものではない。キーラは左手で頭を掻きむしると、気合を入れるように自分の頬を張った。
「そうだな、どっちみち失敗したらその先なんかねーんだ。あたいも出し惜しみしてる場合じゃねえ。恩寵の『巨大化』に神聖干渉の『巨大化』重ねりゃ……2500メートルで4.6秒。あたいにゃこれが限界だけど、行けるかナナシ?」
混沌浸食を防いだ事でキーラの存在力も大幅に増している。今ならば神聖干渉の倍率も2.5倍まで可能となっていた。キーラと目を合わせ、ナナシは力強く答える。
「ありがとうキーラ。絶対にバーガル様を止めて見せるよ」
ほどなく一行は聖龍連峰の西端、山脈龍の頭部が横たわる場所へと到着した。幸いな事にまだ山脈龍は立ち上がっていない。その巨大な目も、とろんと半開きである。
キーラはナナシの尻をパーンと張り、「頑張れよ!」と声をかけると、黄金龍に抱えられその場を離れる。そして、十分離れた場所からナナシを巨大化させた。
一瞬で2560メートルに巨大化したナナシに反応し、山脈龍が首をもたげる。極限まで集中したナナシの、引き伸ばされた時間感覚の中で、山脈龍とナナシの視線が交わった。
その眠たげで黒目がちな視線は、元々それほど高くなかったナナシの闘争心を霧散させてしまう。ナナシは腰だめに引き絞った拳を構えたまま躊躇する。
そもそも山脈龍は誰を害そうとしているわけでもない。ただ、ふと目覚めてほんの少し動いているだけである。矮小な人間にとってはまさに自然災害に等しいが、だからといって数億年を生きるこの偉大な龍種を殴って昏倒させるのが果たして正しい事なのか。
しかし、ナナシの拳には数万人の命がかかっている事もまた厳然たる事実である。迷う程の時間もない。ほんの刹那の間にそれらの思考を巡らせ、ナナシは決断した。どうせ自分の筋力を信じるしか無いのだ。ならば最大限自分の筋力を信じ、適切な効果を発揮させるのみ。
ナナシは拳を開き山脈龍に近づくと、時間の許す限りそっと手を差し伸べ、山脈龍の下顎に優しく添える。そしてもう片方の手で慈しむように山脈龍の頭を撫でた。もういちどゆっくりと眠りにつけるよう、願いを込めて。
3回撫でた所で時間切れとなったナナシは、小さくなった体で山脈龍の鼻先から落下した。見上げるナナシの視線の先では山脈龍が大きく口を開け、周囲の魔素とともに息を吸い始める
遠巻きに見ていたキーラたちはナナシの意外な行動に声もない。さらに山脈龍がブレスの前兆のごとき吸気を始めたのを見て、大慌てで射線から離れようとするが、龍種の飛翔能力をもってしても山脈龍の吸気に抗ってその場に止まるのが精いっぱいである。
ナナシも山脈龍に吸い込まれそうになるのを、とっさに空間そのものを掴む事で耐える。ナナシの絶対筋力による、文字通りの空間把握である。
やがて、全長800キロメートルにも及ぶ山脈龍の、永遠とも思える吸気がついに終わりを迎えた。
散開した龍種たちとともに固唾をのんで見守るキーラ。モニカは世紀の一瞬を捉えるべく『並列思考』を発動しエネルギーの流れと実映像を同時録画している。その隣でフリーダも魔素の流れとエネルギーの動きを注視していた。
「山脈龍のブレス! いったいどれほどの威力が!? 興味深い……んんっ?」
「ううううう、今度こそ転移魔法のアンカー……アンカーを……あれっ?」
そして、二人同時に違和感に気づく。その違和感を察したかのように、レジオナがふにゃふにゃと笑った。
「あはは~、あれってあくびだよねぇ~」
はたして、レジオナの言葉通り、山脈龍はブレスを吐く事なく口を閉じる。そして鼻からぶふうと息を吹き出すと、ゆっくりと頭を地面につけた。そのまま数回瞬きをすると、瞼を閉じ、再び大いなる眠りにつく。
龍種たちはその様子を見届けると、褐色の大地を支配せし大いなる霊峰の眠りを妨げぬよう、静かにその場を去っていった。
黄金龍と黒龍は着地したナナシのもとへと舞い降りると、キーラたちを下ろし人化する。
キーラは満面の笑みでナナシに駆け寄り、思い切りジャンプしてハイタッチを交わした。
「ビックリさせやがって! でもまあ、おめーらしいぜ。よくやったな」
その後ろでモニカが深々とため息をつく。
「はぁ、山脈龍のブレス見たかったわ。数千年に1度の機会だったのに。眠る前にせめて1発……」
「ほんっと、モニカたんそ~いうとこだよね~。ここまでブレないとある意味尊敬するんよ~」
ふにゃふにゃとレジオナの突っ込みが入り、フリーダのぼやきが重なる。
「まだこれから魔獣暴走をなんとかしなきゃいけないんでしょ? もう勘弁してほしいんだけど」
わいわいとナナシを取り囲む一同に、人化した黄金龍と黒龍が歩み寄る。それに気づいたナナシが黄金龍に向き直ると、黄金龍は右手を胸元に当てて微笑み、軽く会釈した。
「オークの皇帝たるナナシ・オーカイザー。褐色の大地を支配せし大いなる霊峰を再び眠りに誘ってくれた事、龍種の女王として感謝いたします。我ら聖龍連峰の龍種はこの事を未来永劫忘れぬでしょう」
龍語により告げられた感謝の言葉は、『魂の歌声』により一同の心に優しく響き渡った。黄金龍はさらに笑みを深めると、流麗な西方共通語で続ける。
「ナナシたん、我らが祖龍に優しくしてくれてありがとう。それにしても、よくあそこで撫でるという決断ができたわね」
黄金龍の問いに、ナナシははにかみながら答える。
「バーガル様の目を見たら、とてもじゃないけど殴る気にならなくて。あとはもう賭けだったけど……失敗してたらと思うとゾッとします」
そう言ってホッとひと息ついたとたん、ナナシの足から力が抜け、その場に尻もちをついてしまう。今更ながら決断の重さに腰が抜けてしまったのだ。そんなナナシの肩にキーラが優しく触れ、静かに語りかける。
「ジルバラント王国はもう何度もおめーに助けられてんだ。おめーが全力を尽くして失敗したんなら、誰にも責める権利なんてねーよ」
「そ~は言ってもにゃ~、もし失敗してたらナナシたんは自分が許せなかったでしょ~?」
キーラの慰めにレジオナがふにゃふにゃと突っ込む。それを聞いたフリーダが腕組みをして言う。
「まあ、最悪の場合エルフの秘儀を伝授してあげるつもりだったから。原初のオークなら多分できたと思うわよ。本人は消滅するけど」
「エルフの秘儀! 興味深い!」
速攻でモニカが食いつく。
「教えないわよ、秘儀なんだから。なんにせよ無事片付いたんだし、次は魔獣暴走でしょ。どうすんの?」
フリーダの指摘に表情が引き締まる一同。ジルバラント王国の危機はまだ去ったわけではない。ジルバラント王国全土を襲うであろう魔獣暴走にどう対処すればいいのか。
顔を見合わせるナナシたちに黄金龍が告げる。
「ナナシたん、私たちも協力するわよ。だって私たちお友達でしょう?」
こうしてナナシの優しさにより、ジルバラント王国は未曽有の危機において最強の援軍を得る事となった。
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