ある満月の日、俺はあいつに抱かれた

ミルクルミ

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2-1 朝

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 サディは、夢を見ていた。
 何か得体の知れないものに襲われ、そいつに押しつぶされる夢だ。
 唸り声は夢の外にまで漏れ、にも関わらず隣で眠っている男は全く意に返さずサディを抱きしめ、と同時に夢の中の獣がサディを潰す力を強める。
 もぞりとサディが動きユージェから離れようとすると、許さないとばかりにユージェが退路を断った。
 寝ているとは思えないその素早さは、ある意味素晴らしい。
 そんな攻守を続けている二人の元へ、とある人物が部屋をノックする音が響き渡った。

「サディ、起きているかい?」

 ここの存在を知っている者など、学園長とジニくらいだ。
 だが学園長は、滅多な事がない限りここを訪ねる事などない。
 とすれば、残る選択肢はジニのみ。案の定白に近い銀色の髪を揺らしつつ鍵のついていない部屋のドアノブを掴んだジニは、寝ている可能性を考慮しそっと部屋を覗き見つつサディの姿を探した。
 ソファにて、仲良く抱き合っている二人。
 ちなみに、彼らは裸だ。毛布により恥部は隠されているが、事後である事は明らか。
 それを見て、「はぁ」と疲れたようなため息をジニは零す。

「そっちに行っちゃったか~」

 予測は出来ても、本当にそうなるとは思っていなかったらしい。
 重いため息を吐きつつ、二人の元に近寄った。

「疲れてるかもしれないけど、そろそろ起きないと遅刻してしまうよ。仲が良いのは素晴らしい事だけど、そろそろ離れたらどうだい?」
「……んん……?」

 呆れ混じりにそう頭上から声を落とされ、反応したのはサディだった。

「ジ、二……?」
「ああ、僕だ。君の保護者兼後見人の、ジニだよ」
「何で、ここに……」
「今漸く会議が終わったんだよ。緊急事態が発生してね、抜け出せなかったんだ。やっぱり、彼を送って正解だったようだね」
「……彼?」

 そこで、ジニの視線を追いサディが隣で眠っているユージェの存在に気が付いた。
 ジニ、ユージェ、それから自分がどんな姿をしているか確認し、顔を茹でたこのように真っ赤に染める。

「俺……そうだ、昨日……」

 自分が相当に乱れていた事を思い出し、その情事を思わせる自分の姿にもっと恥ずかしくなり、散らばっていた自らの衣服を手繰り寄せそれを身につけようとした。

「待って、そのまま風呂に入ってくると良い。それで後処理をしておいで。じゃないと、後でお腹を壊してしまうからね。やり方は分かるかい?」
「え、っと……」
「分からない?」

 困ったように、ジニが首を傾げるもサディには何のことだか分からなかった。
 そもそも、後処理とは何だろうか。文脈から行為の、までは分かるが、具体的に何をしたら良いか見当もつかない。
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