ある満月の日、俺はあいつに抱かれた

ミルクルミ

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12 望みを

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「サディは、無事なんですか!?」
「心配してくれてるの? それは、ルームメイトだから? それとも、何かあったら気分が悪いから?」
「心配だからです」
「断言できるんだね。サディについて探っていたくせに?」
「それは……」
「ああ、責めているわけじゃないよ。サディが不審な言動でもしたんだろう? それで気になったという事は、少なくとも興味は持っているようだ」

 サディの、関係者だからだろうか。
 いつもニコニコしている印象しかなかったジニは、実際会ってみれば言葉に棘が見られた。
 ジニとはこれが初対面、学校でのサディに味方がいるとは思ってもいないのだろう。
 入学当時から暴言・暴力を繰り返し受けていたサディを思い、ユージェの事も敵だと思っているようだ。
 敵意の強い視線を向けられつつ、ユージェはそれを真っ向から受け止める。

「確かに、俺はサディの事を探っていました。でもそれは、あいつの事を知りたいと思ったからです」
「知ってどうするの? 揺する材料でも見つけたかった?」
「違います。あいつは、秘密主義だから……少しでも、内側に入りたくて」
「その他の人間じゃないって、刻みたかったって事? ……君は……」

 そのまま言葉を続けようとしたジニは、何かを思いついたのかハッと顔を上げ、ユージェの顔をじっと見て黙り込んだ。
 何か、言うのを躊躇っているようだ。口を開けては閉じを繰り返し、下を向き考え込み、漸く決心がついたのか顔を上げる。

「君は、サディを助ける気があるかい?」
「……それはサディが、助けを必要とする程危険な状態にある、という事ですか?」
「危険、か。まだ何も起こっていないけれど、これから危険になる可能性が高い状態だね」
「それって……」
「まだ質問に答えていないよ。君は、サディを助ける気はある?」
「あります」
「良い返事だ」

 言葉を交わす事で、ユージェがサディの敵だという疑いが晴れたらしい。
 雰囲気が緩和したジニは、そっと笑みユージェに『ついてこい』と手招く。

「なら、サディが望む事をしてあげなさい。あの子が『食べたい』と言えば食べ物を用意し、眠いと言えば心地の良い眠りを、そして――もし、体が疼くようならその相手を」
「……それって、どういう……」
「さあ、手を出して。部屋の中から飛ぶのは難しいからね」

 訳の分からないまま、ジニがユージェの手を取る。そのまま歩き出した彼に状況を整理しようとし緩慢となる動きのまま付いて行ったら、部屋を出た途端目の前の景色が変わった。
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