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11 弱みの正体

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 △▽


――サディは、何か隠し事をしている。

 いや、彼は何かと隠し事が多い。
 それを確信したのは、サディの引っ越しを手伝った時だ。
『弱み』という言葉に反応したサディは、引き出しの中から何かを取り出し、急ぎ手帳の中に仕舞っていた。
 そしてそれは、すぐに新たな部屋の引き出しの中へと手帳ごと仕舞われた所を、ユージェはしっかりと見ていた。
 慌てて隠す程見られたくない、知られたくない事のはずなのに、自分の事を見られていない前提で動いている故に容易く自身の秘密を仄めかす姿に、『同室が自分で良かった』と思いながらもユージェはサディの机に近づいた。
 誰も自分に興味を抱くはずがないと思っているサディは、机の中を探られるという可能性も思い浮かべていないらしい。
 大事な物を仕舞っているはずなのに鍵のかかっていない引き出しを開け、黒の手帳を手に取る。
 パラリとめくるとサディが隠したであろうはずの写真が床に落ち、ユージェはそれを拾った。

「これは……」
「僕の写真だね」
「っ!?」

 ここは寮で、同室のサディは出掛けている。自身の気配を消す事が出来ないサディが帰って来た時に分かるよう気配を探りながら慎重に動いていたはずなのに、いきなり聞こえてきた声にユージェは勢いよく振り返り真後ろからユージェの手元の写真を覗き込んでいたジニから距離を取った。

「あ、あなたは……」
「あれ、僕の事知らない?」
「知ってます、けど」
「何でここにいるのかって? その写真を見れば、少しは分かるんじゃないかな?」
「……知り合い、だったんですか」
「そういう事」

 サディが『弱み』と思い、隠していたはずの事実を容易く肯定される。
 彼を知らない人など、この天界に居ないだろう。
 下級天使を取りまとめる役目を担う官僚に就いている男、だがそこにたどり着くまでの軌跡は文に起こされメロディーを付けられ、観劇として楽しまれる程。
 メディアにも取り上げられる事も多々ある存在、普通に生きていて出会えるはずのない存在。
 のはずなのに、いきなり目の前に現れ、自分以外誰もいない部屋で、会話できる程近くに居るというのは……困惑し、言葉を無くしたとしても誰も責められまい。

「ちょっと緊急事態が起こってね。今日サディは帰って来ないから、今日出されたという課題を取りに来たんだけど……どこにあるか分かる?」
「ああ……それなら多分、あそこに」

 机の横に置かれているバッグを指し、ジニがそれごと手に取る。

「ありがとう、それだけだから」
「待ってください!」

 あまり会話をしたくないのか、単に余計な会話をするのが嫌いなのか。
 用が済んだ途端早々に部屋を出て行こうとするジニを、慌ててユージェは引き止めた。
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