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3 片付け
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「言ったろ、手伝ってやるって……って、全然荷物整理してねーじゃねーか」
「……悪い」
部屋を見渡すユージェを見て、サディもまた自身の部屋を見渡す。
ミグリエとサディはパーテーションで部屋を区切っていない。部屋の入口から見て右がサディ、左がミグリエだ。
区切られていない、ので誰の部屋か聞かない限りは分からないはずだが……二人の性格を知っている者なら、それは一目瞭然だろう。
ミグリエは普段ぼんやりしているが、意外にもきっちりしている所がある。約束の時間には早く来ることも遅く来ることもなく時間ぴったり、休日だろうと平日だろうと起きる時間も寝る時間も同じ、毎日同じルーティーンを繰り返している。
それ故突発的な出来事には弱いというのが難点だが、そのきっちりした性格は部屋にも現れていた。
昨日のうちでまとめていた教科書類は箱に敷き詰められ、机の上や本棚、クローゼットの中身は見事に全部空っぽだ。そのまま移動しても良い状態で昨夜眠りについたようで、最初からある備品以外は箱しかない。
対してサディの部屋は全く整理されていなかった。机の上には教科書が開かれたまま、貰って来た箱は空っぽで、ベッドの上も物置のように物が散乱している。
そんな部屋の惨状を見て、呆れたように「はあ」と頭を抱えユージェはポツリと零した。
「これは……今日で終わるのか?」
「大丈夫だ! ……多分」
「来て正解だったな。適当に詰めていくぞ」
「ああ、悪い……イッ!」
昨日『明日やれば良いよな!』と楽観視し眠ってしまった自分を悔やみながら、サディは眉根を下げる。するとコツンと軽く拳をサディの頭に当て、ユージェは苦笑した。
「悪いと思ってるんなら、俺よりも動くことだな。じゃないとお前の弱みを握るために躍起になるぞ」
「俺に弱みなんてな……あ!」
「何だ、あるんだな、弱み。よし、俄然やる気が出てきた」
「や、やめろ! やっぱり手伝わなくても良い、俺一人でも大丈夫だ!」
「遠慮すんなって、俺とお前の仲だろ?」
「どんな仲だよ!」
叫んでいるうちに、近い場所からと思ったのかベッドに向かい、物を箱に詰めていく。
今のうちにと机の引き出しに隠していた物を手帳に挟みポケットに仕舞ったサディは、そのまま机の上・引き出しの中を整理していった。
片付けというものは途中思い出に懐かしむあまり、手が止まってしまうものだ。だが止まる度にユージェに咎められ、本棚を整理しようとすれば度々ぱらりとページを捲ってしまうサディを『そこは俺がやる』と引き剥がされ、二人で騒いでいる隣でミグリエが黙々と荷物を新たな部屋へと運び出し。
「お、終わった~」
「だな、もうお昼の時間だ」
「そういや朝食、食べたか?」
「いや? サディの荷物整理が、まさかこんなにかかるとは思わなかったからな」
「ごめんって、お昼は驕るからさ」
「当然だろ」
学年が上がり、二階の部屋へと移動したが、部屋の様相は同じだ。左右対称にベッド、本棚、机が置かれており、入ってすぐにはクローゼット、奥にある窓からは二階部屋になったことで、これまでとは高くなった位置から学校が良く見える。
「本当に、二年に上がれたんだな」
カーテンの開かれた窓の外を見て、少し変わった景色に感慨深くなり思わず呟くと、部屋を出ようとしていたユージェも足を止めサディの隣に並んだ。
「俺のおかげでな」
にやりとした笑みをサディに向け、今度こそ本当にドアを開ける。
「……がと」
背を向けられた服を僅かに掴み、勇気を振り絞りサディは俯きユージェに言った。
その言葉は、ユージェの耳に届いたのか、それとも届かず空気に溶けてしまったか。
ギュッと服を握りしめるサディの頭を、ユージェは優しくポンポンと叩いた。
「……悪い」
部屋を見渡すユージェを見て、サディもまた自身の部屋を見渡す。
ミグリエとサディはパーテーションで部屋を区切っていない。部屋の入口から見て右がサディ、左がミグリエだ。
区切られていない、ので誰の部屋か聞かない限りは分からないはずだが……二人の性格を知っている者なら、それは一目瞭然だろう。
ミグリエは普段ぼんやりしているが、意外にもきっちりしている所がある。約束の時間には早く来ることも遅く来ることもなく時間ぴったり、休日だろうと平日だろうと起きる時間も寝る時間も同じ、毎日同じルーティーンを繰り返している。
それ故突発的な出来事には弱いというのが難点だが、そのきっちりした性格は部屋にも現れていた。
昨日のうちでまとめていた教科書類は箱に敷き詰められ、机の上や本棚、クローゼットの中身は見事に全部空っぽだ。そのまま移動しても良い状態で昨夜眠りについたようで、最初からある備品以外は箱しかない。
対してサディの部屋は全く整理されていなかった。机の上には教科書が開かれたまま、貰って来た箱は空っぽで、ベッドの上も物置のように物が散乱している。
そんな部屋の惨状を見て、呆れたように「はあ」と頭を抱えユージェはポツリと零した。
「これは……今日で終わるのか?」
「大丈夫だ! ……多分」
「来て正解だったな。適当に詰めていくぞ」
「ああ、悪い……イッ!」
昨日『明日やれば良いよな!』と楽観視し眠ってしまった自分を悔やみながら、サディは眉根を下げる。するとコツンと軽く拳をサディの頭に当て、ユージェは苦笑した。
「悪いと思ってるんなら、俺よりも動くことだな。じゃないとお前の弱みを握るために躍起になるぞ」
「俺に弱みなんてな……あ!」
「何だ、あるんだな、弱み。よし、俄然やる気が出てきた」
「や、やめろ! やっぱり手伝わなくても良い、俺一人でも大丈夫だ!」
「遠慮すんなって、俺とお前の仲だろ?」
「どんな仲だよ!」
叫んでいるうちに、近い場所からと思ったのかベッドに向かい、物を箱に詰めていく。
今のうちにと机の引き出しに隠していた物を手帳に挟みポケットに仕舞ったサディは、そのまま机の上・引き出しの中を整理していった。
片付けというものは途中思い出に懐かしむあまり、手が止まってしまうものだ。だが止まる度にユージェに咎められ、本棚を整理しようとすれば度々ぱらりとページを捲ってしまうサディを『そこは俺がやる』と引き剥がされ、二人で騒いでいる隣でミグリエが黙々と荷物を新たな部屋へと運び出し。
「お、終わった~」
「だな、もうお昼の時間だ」
「そういや朝食、食べたか?」
「いや? サディの荷物整理が、まさかこんなにかかるとは思わなかったからな」
「ごめんって、お昼は驕るからさ」
「当然だろ」
学年が上がり、二階の部屋へと移動したが、部屋の様相は同じだ。左右対称にベッド、本棚、机が置かれており、入ってすぐにはクローゼット、奥にある窓からは二階部屋になったことで、これまでとは高くなった位置から学校が良く見える。
「本当に、二年に上がれたんだな」
カーテンの開かれた窓の外を見て、少し変わった景色に感慨深くなり思わず呟くと、部屋を出ようとしていたユージェも足を止めサディの隣に並んだ。
「俺のおかげでな」
にやりとした笑みをサディに向け、今度こそ本当にドアを開ける。
「……がと」
背を向けられた服を僅かに掴み、勇気を振り絞りサディは俯きユージェに言った。
その言葉は、ユージェの耳に届いたのか、それとも届かず空気に溶けてしまったか。
ギュッと服を握りしめるサディの頭を、ユージェは優しくポンポンと叩いた。
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