2 / 18
1-1 寮の同室
しおりを挟む
神は天界に住まい、人、天界、その地に住まう者すべてを支配・管理する。
そんな神の御使いである天使は、天界のある地域にて階級に分かれ暮らしていた。
天使は、基礎教育を六歳から八年間受けた後、三年間を固めた基礎を実際に用いる発展教育、そして天使として成就させる専門教育へと進められる。
そしてここは専門教育機関の一つ、エル天使学園。
まだ神樹が光を散らす頃、天使とは思えぬ程慌てた様相であるドアの前にサディが駆け付けた。
そのドアをコンコンと二度ノックし、返事がないのでもう一度、もう一度、としつこいノック音に部屋の中の住人が漸く動き出し、欠伸をしながらドアを開け、サディを見てぺラリと一枚の紙を渡す。
「ありがとうございます!」
サディが頭を下げる前にドアは再び閉められ、それを気にする様子のないサディは今にも鼻歌を歌いそうにウキウキと口角を上げながら、渡された紙に視線を落とした。
「さーて、俺の同室は~」
「どうやら俺のようだぞ、サディ」
「げっ、ユージェ!?」
気配無く後ろから肩を叩かれ、サディはビクリと肩を跳ねさせた。
学園から徒歩二分の位置にある寮。『まるで城みたい』と噂されるほど洒落た、けれど白一色なシンプルで雄大な見た目に、最初の頃は入る度に止まっていた足もこの寮と学校への行き来を繰り返すうちに慣れ、今となっては『非日常』から『当たり前』の光景に変わりつつある、今日この頃。
本日発表となるルームメイトに、サディは待ちきれず早起きしそのまま寮長室へと駆け付けた。
寮長から渡された紙には寮のルールと共に今日から一年ルームメイトとなる生徒の名前も載っており、まだその文字すら見つけられていなかった所で掛けられた声に、内心『げっ』と声を上げた。
「な、何でこんな時間にここにいるんだよ!?」
「そりゃ、お前と目的は同じだな」
彼は朝に弱いはず。だというのにこんな時間にここにいるという事は、サディの行動を先読みしからかいに来たのだろう。
現にまだ体に力が入らないのか、サディに肩を回し体重をかけて来た。
彼・ユージェは学園の中でも特に大きな見た目をしている。身長は百八十を優に超え、服で隠れているが腹筋だって割れている。いつもサディを『チビ』と嘲り、『よーしよしよし、サディは可愛いな~』などと高い位置からサディの髪に手を置き、わしわしと乱しからかう。そしてそう言われる度にユージェの身長が縮みやしないかと、そんな非現実的な事をサディは考えるのだ。
「それよりほら、ここ、見てみろよ」
重い、と嘆くもののいつもの如く無視するユージェは、サディが持っていた紙のある一点を指さした。
「今日からお前の世話は、俺がしてやるよ」
「は……?」
肩の位置からサディに顔を向け、自信満々ににやりと笑みを浮かべる。
その笑みを見て、サディはサーっと血の気が引いた。
そんな神の御使いである天使は、天界のある地域にて階級に分かれ暮らしていた。
天使は、基礎教育を六歳から八年間受けた後、三年間を固めた基礎を実際に用いる発展教育、そして天使として成就させる専門教育へと進められる。
そしてここは専門教育機関の一つ、エル天使学園。
まだ神樹が光を散らす頃、天使とは思えぬ程慌てた様相であるドアの前にサディが駆け付けた。
そのドアをコンコンと二度ノックし、返事がないのでもう一度、もう一度、としつこいノック音に部屋の中の住人が漸く動き出し、欠伸をしながらドアを開け、サディを見てぺラリと一枚の紙を渡す。
「ありがとうございます!」
サディが頭を下げる前にドアは再び閉められ、それを気にする様子のないサディは今にも鼻歌を歌いそうにウキウキと口角を上げながら、渡された紙に視線を落とした。
「さーて、俺の同室は~」
「どうやら俺のようだぞ、サディ」
「げっ、ユージェ!?」
気配無く後ろから肩を叩かれ、サディはビクリと肩を跳ねさせた。
学園から徒歩二分の位置にある寮。『まるで城みたい』と噂されるほど洒落た、けれど白一色なシンプルで雄大な見た目に、最初の頃は入る度に止まっていた足もこの寮と学校への行き来を繰り返すうちに慣れ、今となっては『非日常』から『当たり前』の光景に変わりつつある、今日この頃。
本日発表となるルームメイトに、サディは待ちきれず早起きしそのまま寮長室へと駆け付けた。
寮長から渡された紙には寮のルールと共に今日から一年ルームメイトとなる生徒の名前も載っており、まだその文字すら見つけられていなかった所で掛けられた声に、内心『げっ』と声を上げた。
「な、何でこんな時間にここにいるんだよ!?」
「そりゃ、お前と目的は同じだな」
彼は朝に弱いはず。だというのにこんな時間にここにいるという事は、サディの行動を先読みしからかいに来たのだろう。
現にまだ体に力が入らないのか、サディに肩を回し体重をかけて来た。
彼・ユージェは学園の中でも特に大きな見た目をしている。身長は百八十を優に超え、服で隠れているが腹筋だって割れている。いつもサディを『チビ』と嘲り、『よーしよしよし、サディは可愛いな~』などと高い位置からサディの髪に手を置き、わしわしと乱しからかう。そしてそう言われる度にユージェの身長が縮みやしないかと、そんな非現実的な事をサディは考えるのだ。
「それよりほら、ここ、見てみろよ」
重い、と嘆くもののいつもの如く無視するユージェは、サディが持っていた紙のある一点を指さした。
「今日からお前の世話は、俺がしてやるよ」
「は……?」
肩の位置からサディに顔を向け、自信満々ににやりと笑みを浮かべる。
その笑みを見て、サディはサーっと血の気が引いた。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
使命を全うするために俺は死にます。
あぎ
BL
とあることで目覚めた主人公、「マリア」は悪役というスペックの人間だったことを思い出せ。そして悲しい過去を持っていた。
とあることで家族が殺され、とあることで婚約破棄をされ、その婚約破棄を言い出した男に殺された。
だが、この男が大好きだったこともしかり、その横にいた女も好きだった
なら、昔からの使命である、彼らを幸せにするという使命を全うする。
それが、みなに忘れられても_
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる