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気持ちの矛先は①

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「起きて、琥陽。朝だよ」
「ん、ん……」
「起きないと、何されても良いって勝手に解釈しちゃうけど?」
「ひゃっ!」

 いきなり耳に落とされた生温かい感触に、琥陽はパッと跳ね起きた。だが琥陽の上に乗っている颯珠のせいであまり身動きが取れず、そのまま首を傾げる。

「な、なにしてるの? 颯ちゃん」
「琥陽が中々起きてくれないから、どうやって起こそうかと模索してた所」
「普通に起こしてくれたら良いじゃん!」
「それじゃつまらないでしょ? せっかく眠ってるのなら、起きている間にはできない事を色々としないと」

 しれっとそう言いながら、颯珠は琥陽の唇に指を這わせてくる。
 刺激されている部分が昨日の光景を思い起こさせ、かぁっと一気に顔が熱くなった。それにこう言ってくるという事は、もしや今まで寝ている間に、何かしてたんじゃ……という不安に駆られ、琥陽は恐る恐る颯珠を見上げる。

「ま、まさか、俺が寝てる時に何か、してないよね?」
「何かって?」
「……分かってるでしょ?」
「琥陽の口から聞きたいな」

 トントンと親指で唇をつつきながら、唇を噛みしめ颯珠から顔を逸らす琥陽を、颯珠は愛おしそうに見つめる。
 そのまま唇をひと撫ですると顎を上げさせ、ふっと口角を上げた。

「ねぇ。おはようのキス、して良い?」
「な、何言って!」
「だって今、大きいでしょ? いつもの姿に戻ったでしょ? 昨日のやり直し、させてよ」

 琥陽が否定も肯定もする間も与えず、颯珠は段々と琥陽との距離を詰めてくる。
 首を横に振らないといけない、ダメだとはっきりと言わないといけない。
 そう理性では分かっていても、ドキドキして、パ二くって。
 このままではいけないと動かない身体を何とか動かし、琥陽は颯珠の口を両手で覆った。

「だ、ダメ」

 必死に口にした琥陽の言葉を聞くと、颯珠は自身の口を覆っている琥陽の手をゆっくりと外し、逆に琥陽の口を覆うと手のひら越しにチュッとリップ音を鳴らせる。

「残念」

 ねっとりとそう言うと琥陽の上から降りて、「安心しなよ」と首だけ琥陽を振り返った。

「琥陽が良いって言うまで、キスはしないから」

 ま、状況によりけりだけど。と笑みを滲ませ颯珠は言い、琥陽は放心したようにベッドでぼーっと虚空を見やる。

「琥陽?」

 離れようとしていた颯珠が、そんな琥陽の様子を見て再びベッドに上がろうとした。

「颯ちゃん、俺……」

 その先に何を続けようとしたのか。
 自分でも分からぬまま「何でもない!」と誤魔化して、そそくさと颯珠から離れようとする。

「先に食堂、行ってるね!」

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