悪役令嬢の姉は異世界転移しない~ツミビトライク・ループ~

kio

文字の大きさ
上 下
20 / 33
チュートリアル編(過去)

チュートリアル編・プロローグ

しおりを挟む
 
***

 ──これは、あの子がライラになった日。この世界でミナと出会った頃の記憶。






*****

『……さ……ね……ま……』

 うぅ……気持ち悪い……。

『……ね……おね……ら……!』

 うぅん……。
 お母さんあと五分だけ寝かせてよ……。
 ついでに気持ち悪いから今日は学校休ませて~。
 あ、朝食はリンゴカレーが良いなぁ……当然中辛だよー。

 むにゃむにゃ。

「お姉様ったら!」

「わっ! びっくりした!?」

 身体がビクリと跳ねる。
 立っていたからか足が少しだけガクンときた。
 いきなり耳元で大声出されたら誰だってびっくりするよね?

 ……あれ? いつの間にか私、外に居たっぽい?

 アスファルトと住宅が周りに並んでいた。

 ん?
 というか今の声って……誰?
 ウトウトしていたっぽいから聞き間違え? もしくは幽霊とか?

「もう! さっきからわたくしが話しかけているというのに全く気付いてくれないんですものー! 現在進行ですのよー!」

 ドアップに少女のプンプンと怒った顔がある。
 あ、幽霊じゃなかったや。
 怒った顔が少し幼く可愛いさをより引き立てていて、私には絶対にない美少女さに凄く惹かれてしまう……って、違うでしょ!

「え、えぇっー!? み、ミナ! ミナなの!?」

 滅茶苦茶驚いてしまったせいか、ズサーッと漫画のような飛び跳ね方をしてしまった。

「全く、寝ぼけていらっしゃいますのね……。緊急事態ですのにお姉様は呑気ですわ……」

 腰に当てていた両手を下ろし、女の子はため息をついていた。
 動く度に綺麗な金髪ツーテールがサラサラと揺れる。
 比較的低い背丈に上品な白のドレスがあまりにもこの場に異質で、より鮮やかに見えた。

 ちょっと我がままそうだけど愛くるしさに溢れたヒロイン級のその容姿は……間違えようもなく──

 ……。

 はっ!?
 一瞬思考が停止していた。
 我が頬をつねってみる。痛い!

 痛いイコール夢じゃないってことで、いや迷信かもしれないけど大体そんな感じで……つまりはコレが現実ってことで……?

「いやいやいや! この子が本当にミナなわけが──」

 私は今、過去にないほど混乱していた。
 私の様子にしびれを切らしてしまったのか、目の前の少女は声を張り上げ、

「あーもう! 双子の妹であるこのミナの顔をお忘れでして? ──ねぇ、お姉様?」

 最後だけは妙にゾクリとした声。
 細められた瞳がはっきりと私を見ていた。

 ……その顔、忘れるはずがない。

 普段愛玩動物のような可愛らしい容姿をしているのに、目の奥に危うげな気配が明確に潜んでいる。
 今のようにハイライトが薄くなった瞳を"サヤたち"の窮地きゅうちの場面で私は何度も見てきたのだ。



 そう、



 ミナ──ミナ・リルレイラートとは、私がさっきまでプレイしていたはずの乙女ゲーム『ツミビトライク』の悪役令嬢、その人の名前だった。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

目には目を歯には歯を!ビッチにはビッチを!

B介
恋愛
誰もいないはずの教室で絡み合う男女! 喘ぐ女性の声で、私は全て思い出した! ここは乙女ゲームの世界!前世、親の借金のせいで若くして風俗嬢となった私の唯一のオアシス!純愛ゲームの中で、私は悪役令嬢!! あれ?純愛のはずが、絡み合っているのはヒロインと…へ?モブ? せめて攻略キャラとじゃないの!? せめて今世は好きに行きたい!!断罪なんてごめんだわ!! ヒロインがビッチなら私もビッチで勝負!! *思いつきのまま書きましたので、何となくで読んで下さい!! *急に、いや、ほとんどR 18になるかもしれません。 *更新は他3作が優先となりますので、遅い場合申し訳ございません!

処理中です...