悪役令嬢の姉は異世界転移しない~ツミビトライク・ループ~

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学校生活編1

第三話『ラブレター騒動1』

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 こ、こここここれはっ! ら、ラブレター!?

「お姉様いかがなさいましたの?」

「な、ななな何でもないよ!」

 咄嗟とっさにそれを鞄の中に仕舞い込んだ。
 我が人生で経験もないくらいの早業はやわざだった。

「え、ええと……とても慌てられているような?」

「平民の娘は黙っているですの! お姉様が何でもないと仰っているのですからなんでもありませんのよ」

「ごめんなさいごめんなさい!」

 ごめんサヤ! 今日はミナの肩を持たせてもらうよ。

「そう、何でもない何でもないの! じゃあ、わ、私トイレに行ってくるから!」

「公衆の面前でお姉様ったら……。わたくしもお付き合いしますわ!」

「来なくて良いって!? 他の人と一緒だと恥ずかしいからね!」

「そうですの? ……仕方がありませんわ。こちらでお待ちをして──」

「教室行ってて、いいから教室行ってて!」

 言い残し、私はドタバタとその場を後にした。

 ツミビでの高校生活二日目(体感)。
 昨日と同じように穏やかな日になると思っていた朝の登校風景。
 私の下駄箱の中にはとんでもない爆弾が入っていた。

 ドキドキしながら一階の個室で、純白の便箋びんせんを鞄から取り出す。

 ……まさか、私の人生にラブレターイベントなるものが存在していたとは……。

 悪役顔の私は、女子は当然として男子からも同じくらい敬遠されていた。
 ゆえに恋愛的なフラグは二十年の人生の中で一度も立ったことはない。
 なのに、ライラになったとはいえ元の琴子と同じ容姿である私が、こんな青春真っ只中の恋愛イベントを起こすなんて想像すらしていなかったわけである。
 人生何があるか分からないね。

 私は震える指先で便箋からそっと手紙を取り出していた。

 うわぁー! ほ、本物のら、ラブレター!

 ドキドキさえすでに超越した私は、恐る恐る無駄にあちこちを見回した後に、ゴクリと喉を鳴らし、手紙を読み始める。



『一目見た時から好きでした。
 この気持ちをどうしても伝えたくて手紙を送らせていただきます。
 つきましては今日の放課後四時に校舎裏で待っています。』



 ……ぐはっ!

 本物も本物、ストレートな恋文だった!
 恋愛経験のない私の心臓に、これはいくらなんでも衝撃が強すぎる。
 心臓麻痺でもしてしまわないかしら私?

 遅れてやって来たこの世の春に、私の心は浮かれまくっていた。
 モテないをこじらせるとこんな感じで有頂天になってしまうのだ。
 個室であることも忘れて踊り出しそうな心地だった。

 二度三度、にやにやしながら私は手紙を読み返す。
 くーっ! じたばた、じたばた。
 狭い場所で私は身じろぎをしていた。

 四度目となる読み返しの最中。ちょうど予鈴のチャイムが鳴った頃合いで。

「……あ」

 無地である手紙の裏面まで読みこもうとしていた私は、その一文に気付いてしまった。



『愛しのミナ・リルレイラート様へ』






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