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第22話・少女達への想い
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シャルロッテさんの計らいにより、思いがけず海での初遊びが出来る事になった俺達は、それぞれシャルロッテさんが用意してくれた水着に着替え、今日は海で遊んでみる事にした。
「それにしても綺麗だよなあ……」
カラーモンスターの出す瘴気の影響により、エオスにある水は汚染されている場所が多い。それにもかかわらず、初めて見る海は一片の穢れすら感じさせないくらいに太陽の光を受けて煌いている。
こんな光景を見ていると、ユキほどではないかもしれないけど、どうして海は汚染されていないんだろうかと不思議にはなる。
「お兄ちゃ――――ん!!」
用意してあった青色の短パン水着に着替えた俺が、太陽の光を受けてキラキラと輝く海を眺めながらそんな事を考えていると、近くの岩場の陰に移動をして着替えをしていたティアの俺を呼ぶ声が聞こえ、その声がする方へと振り向いた。
「お兄ちゃーん! えいっ!」
「おっと!」
黒い生地に白の水玉模様が描かれたフリル付きワンピース水着。
それを着たティアが大きく手を振りながら漆黒のロングヘアーを揺らして目の前まで走って来ると、そのままピョイっと俺の身体へ飛び付いた。
そしてそれなりの勢いでティアに飛び付かれた俺は、飛び付いて来たティアを両手で支えながらその場で何度かクルクルと回ってしまった。
「いきなり飛び付いたりすると危ないぞ? ティア」
「えへへっ♪ ごめんなさい♪ それよりもどお? 水着、似合ってるかな?」
飛び付いた俺から手を離して一歩後ずさると、ティアはそう言いながら両手で左右のフリル部分をちょこんと掴み、その場でクルリと一回転をした。
黒を基調とした白水玉模様のフリル付きワンピースはティアにとても似合っていて、歳相応の可愛らしさを感じさせる。まあ、普段から歳相応に子供っぽい部分が多いティアだけど、それでもモンスタースレイヤーとしての役目がある以上、同じ年頃の少女達に比べれば大人な部分も多い。
そんなティアがこうして無邪気な笑顔を見せていると、兄的立場の俺としては安心する。
「うん。俺が思ってたとおり、凄く似合ってて可愛いよ。ティア」
「やった♪ お兄ちゃんに可愛いって言われるの、凄く嬉しいよ♪」
「そっかそっか」
「えへへ~♪」
俺の言葉にその場でぴょんぴょんと跳ねながら喜ぶティアへと手を伸ばし、その艶やかな長い黒髪の頭を優しく撫でると、ティアはニヤニヤと顔をとろけさせながら恍惚の表情を浮かべた。
「こんな水着を着るのは初めてだけど、悪くない開放感ね」
嬉しそうに顔をニヤつかせているティアを見ていると、今度は別の岩場の陰で着替えをしていたユキが戻って来た。
上下共に明るい空色のフリル付きビキニ水着を身に着けたユキは、白銀色のサラサラとした長い髪を揺らめかせながら自分の姿を細かくチェックし、そんな感想を口にする。
普段から大人顔負けの冷静で知的なユキにビキニ姿はとてもマッチしていて、身体つきはまだまだ幼いながらも、十分にビキニ水着を着こなしているから驚きだ。
そしてユキのこの凛とした姿を見ているだけも、ユキは将来、きっととてつもない美人に成長するだろうと断言できる。
「……お兄ちゃん? ユキに見惚れちゃってるの?」
「えっ!?」
頭の上にあった手をガシッとティアに両手で掴まれると、冷たく重い声でそんな言葉が聞こえてきた。
そんな言葉に慌ててティアを見ると、さっきまでのとろけた笑顔はどこへやら。ティアは見つめるだけで凍り付いてしまいそうな目で俺を見ていた。
「あ、いや、別にそういうわけじゃないけどさ……」
「あら? 私にこの水着は似合っていないかしら?」
「い、いや、そんな事はないよ! 凄く似合ってる!」
「そう。それじゃあやっぱり、私に見惚れてたのね?」
「はい?」
「何言ってるの!? お兄ちゃんが見惚れるのは私だけなんだからっ!」
俺に冷たい視線を向けていたティアが、ユキの言葉に対して猛烈な反論を始めた。こうなるともう、いつもの様な展開を迎えるのは目に見えている。
「そうかしら? さっきのエリオスは、私の事をじっと見つめてたじゃない」
「違うもん違うもんっ! そんな事ないもん!」
「はあっ……あなたもいい加減、現実を見つめた方がいいわよ? エリオスはあなただけのものではないんだから」
「お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんだもん! 絶対に誰にも渡したりしないんだもんっ!」
「まったく……あなたには少し現実ってものを見せた方がいいのかもしれないわね」
そう言うとユキはこちらへと近付き、俺の空いている方の腕に両手を絡めて抱き付いて来た。
「ちょっとユキ! 何してるの!?」
「どお? エリオス。少しはドキドキするんじゃない?」
「あー、えっとあの……」
年齢的には子供ではあるが、ティアよりも身体的発育が良く雰囲気は大人顔負けのユキにそんな事をされ、俺は言われたとおりに少しドキドキしていた。
しかしそんな思いを軽々しく口に出せば、ティアのご機嫌がどうなるかは火を見るよりも明らかだ。
そしてそんな状況に陥れば、ティアのご機嫌が直るまでに数日はかかる。モンスタースレイヤーになる為の修行もあるし、機嫌を損ねたティアはまともに修行をしてくれなくなるから、できればそんな事態になるのは避けたい。
「正直に言っていいのよ? エリオス。もしもこの子が機嫌を損ねて修行をしてくれなくなっても、私がその分、しっかりと修行をつけてあげるから」
「ちょっと! お兄ちゃんを強くするのは私の役目なんだからね! だから私を差し置いて勝手にお兄ちゃんの修行をしたら許さないんだからっ!」
「あら? どお許さないって言うの?」
「えっ!? え、えーっと……ユキに出されるご飯を全部私が食べちゃうんだからっ! そうなったらお腹が空いて、ユキはお兄ちゃんの修行をできなくなっちゃうんだからね!」
ティアの考える嫌がらせの方法がなんとも可愛らしく、俺は思わずクスッと微笑んでしまった。
「お、お兄ちゃん! 何で笑ってるの!?」
「あ、ああ。ごめんごめん。ティアが可愛らしくてついね」
「えっ? 可愛らしい?」
「うん。でもティア、俺はティアの事は凄く大切だけど、ユキの事もとても大切なんだ。だから、喧嘩も程々にね?」
「うっ……もぉ……分かったよぉ」
「わ、私も大人気なかったと思うわ。ごめんなさい。エリオス、ティア」
ユキは顔を赤らめながらそう言うと、少し恥ずかしそうにしながらゆっくりと俺の腕に絡めた両手と身体を離した。
「ううん。私もごめんね。ユキ」
「よしよし。それじゃあ、さっそく3人であそぼっか!」
「そ、そうね。そうしましょうか」
「うん! 沢山遊ぼう!」
「よしっ! それじゃあ行くぞーっ!!」
「おー!!」
こうして一悶着はあったものの、無事にそれも解決し、俺達はそのまま海の方へと走り始めた。
「それにしても綺麗だよなあ……」
カラーモンスターの出す瘴気の影響により、エオスにある水は汚染されている場所が多い。それにもかかわらず、初めて見る海は一片の穢れすら感じさせないくらいに太陽の光を受けて煌いている。
こんな光景を見ていると、ユキほどではないかもしれないけど、どうして海は汚染されていないんだろうかと不思議にはなる。
「お兄ちゃ――――ん!!」
用意してあった青色の短パン水着に着替えた俺が、太陽の光を受けてキラキラと輝く海を眺めながらそんな事を考えていると、近くの岩場の陰に移動をして着替えをしていたティアの俺を呼ぶ声が聞こえ、その声がする方へと振り向いた。
「お兄ちゃーん! えいっ!」
「おっと!」
黒い生地に白の水玉模様が描かれたフリル付きワンピース水着。
それを着たティアが大きく手を振りながら漆黒のロングヘアーを揺らして目の前まで走って来ると、そのままピョイっと俺の身体へ飛び付いた。
そしてそれなりの勢いでティアに飛び付かれた俺は、飛び付いて来たティアを両手で支えながらその場で何度かクルクルと回ってしまった。
「いきなり飛び付いたりすると危ないぞ? ティア」
「えへへっ♪ ごめんなさい♪ それよりもどお? 水着、似合ってるかな?」
飛び付いた俺から手を離して一歩後ずさると、ティアはそう言いながら両手で左右のフリル部分をちょこんと掴み、その場でクルリと一回転をした。
黒を基調とした白水玉模様のフリル付きワンピースはティアにとても似合っていて、歳相応の可愛らしさを感じさせる。まあ、普段から歳相応に子供っぽい部分が多いティアだけど、それでもモンスタースレイヤーとしての役目がある以上、同じ年頃の少女達に比べれば大人な部分も多い。
そんなティアがこうして無邪気な笑顔を見せていると、兄的立場の俺としては安心する。
「うん。俺が思ってたとおり、凄く似合ってて可愛いよ。ティア」
「やった♪ お兄ちゃんに可愛いって言われるの、凄く嬉しいよ♪」
「そっかそっか」
「えへへ~♪」
俺の言葉にその場でぴょんぴょんと跳ねながら喜ぶティアへと手を伸ばし、その艶やかな長い黒髪の頭を優しく撫でると、ティアはニヤニヤと顔をとろけさせながら恍惚の表情を浮かべた。
「こんな水着を着るのは初めてだけど、悪くない開放感ね」
嬉しそうに顔をニヤつかせているティアを見ていると、今度は別の岩場の陰で着替えをしていたユキが戻って来た。
上下共に明るい空色のフリル付きビキニ水着を身に着けたユキは、白銀色のサラサラとした長い髪を揺らめかせながら自分の姿を細かくチェックし、そんな感想を口にする。
普段から大人顔負けの冷静で知的なユキにビキニ姿はとてもマッチしていて、身体つきはまだまだ幼いながらも、十分にビキニ水着を着こなしているから驚きだ。
そしてユキのこの凛とした姿を見ているだけも、ユキは将来、きっととてつもない美人に成長するだろうと断言できる。
「……お兄ちゃん? ユキに見惚れちゃってるの?」
「えっ!?」
頭の上にあった手をガシッとティアに両手で掴まれると、冷たく重い声でそんな言葉が聞こえてきた。
そんな言葉に慌ててティアを見ると、さっきまでのとろけた笑顔はどこへやら。ティアは見つめるだけで凍り付いてしまいそうな目で俺を見ていた。
「あ、いや、別にそういうわけじゃないけどさ……」
「あら? 私にこの水着は似合っていないかしら?」
「い、いや、そんな事はないよ! 凄く似合ってる!」
「そう。それじゃあやっぱり、私に見惚れてたのね?」
「はい?」
「何言ってるの!? お兄ちゃんが見惚れるのは私だけなんだからっ!」
俺に冷たい視線を向けていたティアが、ユキの言葉に対して猛烈な反論を始めた。こうなるともう、いつもの様な展開を迎えるのは目に見えている。
「そうかしら? さっきのエリオスは、私の事をじっと見つめてたじゃない」
「違うもん違うもんっ! そんな事ないもん!」
「はあっ……あなたもいい加減、現実を見つめた方がいいわよ? エリオスはあなただけのものではないんだから」
「お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんだもん! 絶対に誰にも渡したりしないんだもんっ!」
「まったく……あなたには少し現実ってものを見せた方がいいのかもしれないわね」
そう言うとユキはこちらへと近付き、俺の空いている方の腕に両手を絡めて抱き付いて来た。
「ちょっとユキ! 何してるの!?」
「どお? エリオス。少しはドキドキするんじゃない?」
「あー、えっとあの……」
年齢的には子供ではあるが、ティアよりも身体的発育が良く雰囲気は大人顔負けのユキにそんな事をされ、俺は言われたとおりに少しドキドキしていた。
しかしそんな思いを軽々しく口に出せば、ティアのご機嫌がどうなるかは火を見るよりも明らかだ。
そしてそんな状況に陥れば、ティアのご機嫌が直るまでに数日はかかる。モンスタースレイヤーになる為の修行もあるし、機嫌を損ねたティアはまともに修行をしてくれなくなるから、できればそんな事態になるのは避けたい。
「正直に言っていいのよ? エリオス。もしもこの子が機嫌を損ねて修行をしてくれなくなっても、私がその分、しっかりと修行をつけてあげるから」
「ちょっと! お兄ちゃんを強くするのは私の役目なんだからね! だから私を差し置いて勝手にお兄ちゃんの修行をしたら許さないんだからっ!」
「あら? どお許さないって言うの?」
「えっ!? え、えーっと……ユキに出されるご飯を全部私が食べちゃうんだからっ! そうなったらお腹が空いて、ユキはお兄ちゃんの修行をできなくなっちゃうんだからね!」
ティアの考える嫌がらせの方法がなんとも可愛らしく、俺は思わずクスッと微笑んでしまった。
「お、お兄ちゃん! 何で笑ってるの!?」
「あ、ああ。ごめんごめん。ティアが可愛らしくてついね」
「えっ? 可愛らしい?」
「うん。でもティア、俺はティアの事は凄く大切だけど、ユキの事もとても大切なんだ。だから、喧嘩も程々にね?」
「うっ……もぉ……分かったよぉ」
「わ、私も大人気なかったと思うわ。ごめんなさい。エリオス、ティア」
ユキは顔を赤らめながらそう言うと、少し恥ずかしそうにしながらゆっくりと俺の腕に絡めた両手と身体を離した。
「ううん。私もごめんね。ユキ」
「よしよし。それじゃあ、さっそく3人であそぼっか!」
「そ、そうね。そうしましょうか」
「うん! 沢山遊ぼう!」
「よしっ! それじゃあ行くぞーっ!!」
「おー!!」
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