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願い星
しおりを挟む私は昔から不器用で出来ないことばかりだった。
そんな私をいつまでも見守ってくれたのは、一緒に頑張ろうと言ってくれたのはあなたでした。
「いってきます。」
今ではすっかり社会人として働く28歳。今日もいつもと同じ様に朝起きて準備して出勤する。仕事を終えて帰る。そして翌日が来るのをただ、繰り返す。
(こんな大人を目指していたっけ?)
昔だったら沢山夢があった。したいことも、楽しいことも。大人になるとどうしてこんなにつまらなくなるのだろう。現代では、個性を求める割に異物を外に出そうとする社会だ。
あの時君と目指していた夢はどこに行ってしまったのだろう。
私とは対照的に君は夢を目指し続けて今ではすっかり有名人。
テレビで見ない日はない。その歌声で聴く人を引き付けていく。
私と同じ夢を持ち続けていた君はまだ、高みへとのぼっていくんだろうね。あの日流れ星にした願い事も、誓った約束も覚えているよ。
ひとりで空を見上げると星空が、見える。あの日と同じ様に見えるけど君がいなかったらこんなにも変わって見えるんだね。
昔から才能があった君には分からないかもしれないけど私なりにもがいたんだよ。その度に君との差に打ちのめされて、挫折して何度も諦めては自分を鼓舞して頑張った。
(僕たち2人でコンビを組めば最強だよ!)
幼い2人は必ずそうだと信じて頑張ってきた。
いつの日か君はスカウトを受けてデビューをした。
最初はよく連絡を取り合っていた。お互いを鼓舞して励まし続けた。それでもどんどん君は進んで行った。僕を置いてどんどん遠くへ。
テレビでは、今日も君が輝いている。
嫉妬がなかったわけではない。正直羨ましかった。スタートは同じところだったのに気づけば別世界。
それが凄く恥ずかしくて情けなくて君の連絡先を消した。
故郷からも離れた。
(ずっと歌いたい曲があるんです。同じ夢を目指した友人との大切な曲が。ずっと待っているんです。)
ドクンと音がした。
テレビでは自分のことだとは断言していないが何故か自分のことだと確信した。
諦めた僕と違って昔から君は僕のことを信じ続けてくれたんだね。
(俺、待ってるからな!)
テレビの向こう側では少しポカンとしている関係者が映し出されていた。
(なにやってんだ。本番中だぞ。)
呆れる気持ちと裏腹に滾るような昔感じていた高揚感が一気に戻ってくる。
急いで昔の歌詞ノートを広げる。
ノートは折れたり、ページはくしゃくしゃになっていた。
ここには良い思い出も嫌な思い出も沢山詰まっている。
良い歌詞にしようと何度も何度も書き直した。
(思ったことをそのまま書こう。)
少年時代に思いを馳せ、公園で夢を語ったあの日。流れ星に願い事をして、一緒に夢を叶えると誓った瞬間。
自分でも驚くくらいにペンは進んだ。
キーボードで音を紡ぎメロディーに歌詞をのせていく。
「…出来た…。」
帰ってきた時間からすっかり日が昇っている時間になっていた。疲れとかはなく、ただ懐かしさやあの日の約束を思い出していた。
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