限界保育士の私が異世界転生したら理想の働き方を手に入れた！

行き詰まった保育園作り

準備を進めるミニ保育園。
アリスは現実世界の中のような、環境整備をしていた。保育園というものは場所さえ作ってしまえばいいというものではない。思いやりと育てる精神を基盤に、子供たちが安心して過ごせるよう、何度も何度も考えてはやり直していた。

彼女は、子供たちが自分自身の力で育っていくことを助けるために、活動を計画し、現世の適切な教育プログラムを用意した。すべての詳細に気を配り、ミニ保育園の環境を築き上げた。

(でも……)

「これじゃ、ダメだー。」

何しろこちらの文化が分からない。
子供は何が好きなのか、何を学ぶ場を提供すればいいのかが分からず、方向性が決まらないのだ。
とりあえず物の準備をしようと柔らかいカーペットを敷き詰め、子供たちが落ち着いて遊べるようなおもちゃを用意した。もちろん、知育系の手作りおもちゃも作った。こちらの世界ではそのようなものは無いらしく一つ一つ作るしかなかった。

子供たちが健康的に過ごせるような、バランスのとれた栄養バランスを考慮した食事をキルシュさんは提供してくれると話してくれた。

みんなのしてくれるところは出来てる。私だけ出来てない。

(自分からしたいって言ったんじゃん。私だけが出来てない。)

土台作りというものは存外難しい。一緒に相談できるわけでもなく、ただどん詰まりな状況。


(…………………………………………。)

完全に手が止まる。
出来ない。出来ない。出来ない。やりたいことが出来ない。

自分の情けなさに思わず涙が出る。

「アーリスちゃん！」

キルシュさんの明るく呼ぶ声に振り返ることが出来ない。
返事も出来ずに俯いていると不思議に思ったのか、キルシュさんが目の前に現れる。

(情けないところ見られた……最悪……。)

俯いているのでキルシュさんの表情は見えない。きっと呆れてるんだろうなと思いながら自己嫌悪の沼にはまっていく。

「アリスちゃん、遊びに行きましょ！」 

「……はい？」

パンッと手を叩いてまるで名案！と言わんばかりににっこりと笑うキルシュさん。
呆然としていると、手を引っ張ってくる。

「そうと決まれば準備！準備！お着替えしてきてね！」