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アリス頑張ります!
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「いらっしゃいませー」
キルシュさんのお店でお仕事が始まった。
現実世界の飲食店と変わらない雰囲気でアルバイト時代を彷彿とさせた。
ランチタイムから少し外れた時間でのんびりと過ごしている人がほとんどだ。
現実世界で言うおやつの時間なのか。
先程までは、働いている人が多かったが次第にママ友のような集まりの人が増えてきた。
「最近、リリーの様子がおかしいの。噛み付いたり、赤ちゃんの時みたいな言動が多いの。困るわ。」
(赤ちゃん返りかな?下の子でも産まれたのかなー?)
実際、そのような悩みを抱えた保護者の人は沢山いた。お母さんを取られた様な感覚なのだろう。
懐かしいワードにフフッと微笑む。
「アリスちゃん。ケーキ、お願いね。」
(いけない、仕事中だった。)
「はーい!」
保育士としての仕事を、どうやってしていくかを考えている間はキルシュさんのお店のお手伝いをすることになった。
(ここでなら、何か情報を得られるかもしれないしね。)
「こちら、ケーキと紅茶です。どうぞ。」
「ありがとうございます。」
「ごゆっくりしていってください。」
笑顔で見送る。
現実世界では、保育士をしていたおかげか、職業柄かそれなりに上手く接客をすることが出来ている。
ママ友達は育児についてのお話を続けている様子だった。
現実世界では当たり前のように専門職がいて相談出来る人が居たがここでは自分でどうにか育てていっているのだろう。
(…聞いてみる?)
見ず知らずの店員にいきなり言われたらどうだろう?不審に思わせないかな?
(でも、それで悩みを少しでも解決できるならそれが仕事でしょ?保育士は子供の相手をすることだけじゃない。保護者の人の相談も受けること!)
意を決して、テーブルへ行く。
「いきなりごめんなさい。ちょっとお話が聞こえちゃって。もしかして、ご兄弟が最近産まれましたか?」
いきなり話しかけられたお客さんは驚いている様子だった。
(あれ?やっぱり不審だった?)
「あっ、ごめんなさい。違ってましたか?」
謝罪をするとお客さんも慌てて答え返す。
「いえ、違うの?違わないからびっくりしたのよ。どうして弟が産まれたのがわかったのかな?って」
(合ってた!良かった。)
まずは一安心で胸を撫で下ろす。
「下の子が産まれると、お父さんやお母さんの意識が下の子に向くから、寂しくなって赤ちゃん返りする子もいるんですよ。」
一概に全員がそうなるとは限りませんが…と追加して伝える。
「そうなの?アンリさんのところはなかったって言うからうちの子だけって思ってたけど他にもそうなる子はいるのね。良かったわ。」
ホッとしている様子を見て、このお母さんは周りと違うわが子に不安を抱えていたんだと思う。
それならば、今回で少しでも気持ちが晴れたならこちらも良かった。
「ちなみにいつ終わるのか分かったりするのかしら?」
お母さんから追加で聞かれる。
「明確にこの時期に終わると言うことは分かりません。子供に寄っても違いますからね。」
先程まで、晴れやかなお母さんの表情が曇る。
「じゃあ、ずっとかもしれないの?」
「長く続くかもしれません。でも、お母さんとお父さんの事が好きな気持ちもありますよ。お姉ちゃんにも沢山関わってあげて下さい!いきなり終わる事はほぼないと思いますが、徐々にですね。」
お母さんはハッとした顔で頷く。
「あの子が産まれてからリリーにはあまり構ってあげられなかったわ。寂しかったのかしら。ありがとう、店員さん。」
陰っていたお母さんの表情が和らぎ他のママ友も「そうなんだ」とお話を聞いてくれていた。
「あの…。また、悩んだらお話をしに来てもいいかしら?」
おずおずとお母さんが言う。育児は無限大に悩みや問題が出る。他人には言いにくいことも沢山あるだろう。
「もちろん!お店が空いている日なら。」
そう言うとパーッと表情が明るくなる。他のママ友も「なら、今度私も聞いてもらおうかなー?」なんてお話されていた。
「今日はご馳走様。あと、お話聞いてくれてありがとう。これは相談料として受け取ってちょうだい?」
チップとご飯代を渡される。初めは断ったがキルシュさんもこういうのはご好意だから受け取らないと失礼よと教えてくれた。
「ありがとうごさいました!またのご来店をお待ちしております。」
(これは、ありかも!)
保育士の久しぶりに感じる仕事をしてあることを閃いたのだった。
キルシュさんのお店でお仕事が始まった。
現実世界の飲食店と変わらない雰囲気でアルバイト時代を彷彿とさせた。
ランチタイムから少し外れた時間でのんびりと過ごしている人がほとんどだ。
現実世界で言うおやつの時間なのか。
先程までは、働いている人が多かったが次第にママ友のような集まりの人が増えてきた。
「最近、リリーの様子がおかしいの。噛み付いたり、赤ちゃんの時みたいな言動が多いの。困るわ。」
(赤ちゃん返りかな?下の子でも産まれたのかなー?)
実際、そのような悩みを抱えた保護者の人は沢山いた。お母さんを取られた様な感覚なのだろう。
懐かしいワードにフフッと微笑む。
「アリスちゃん。ケーキ、お願いね。」
(いけない、仕事中だった。)
「はーい!」
保育士としての仕事を、どうやってしていくかを考えている間はキルシュさんのお店のお手伝いをすることになった。
(ここでなら、何か情報を得られるかもしれないしね。)
「こちら、ケーキと紅茶です。どうぞ。」
「ありがとうございます。」
「ごゆっくりしていってください。」
笑顔で見送る。
現実世界では、保育士をしていたおかげか、職業柄かそれなりに上手く接客をすることが出来ている。
ママ友達は育児についてのお話を続けている様子だった。
現実世界では当たり前のように専門職がいて相談出来る人が居たがここでは自分でどうにか育てていっているのだろう。
(…聞いてみる?)
見ず知らずの店員にいきなり言われたらどうだろう?不審に思わせないかな?
(でも、それで悩みを少しでも解決できるならそれが仕事でしょ?保育士は子供の相手をすることだけじゃない。保護者の人の相談も受けること!)
意を決して、テーブルへ行く。
「いきなりごめんなさい。ちょっとお話が聞こえちゃって。もしかして、ご兄弟が最近産まれましたか?」
いきなり話しかけられたお客さんは驚いている様子だった。
(あれ?やっぱり不審だった?)
「あっ、ごめんなさい。違ってましたか?」
謝罪をするとお客さんも慌てて答え返す。
「いえ、違うの?違わないからびっくりしたのよ。どうして弟が産まれたのがわかったのかな?って」
(合ってた!良かった。)
まずは一安心で胸を撫で下ろす。
「下の子が産まれると、お父さんやお母さんの意識が下の子に向くから、寂しくなって赤ちゃん返りする子もいるんですよ。」
一概に全員がそうなるとは限りませんが…と追加して伝える。
「そうなの?アンリさんのところはなかったって言うからうちの子だけって思ってたけど他にもそうなる子はいるのね。良かったわ。」
ホッとしている様子を見て、このお母さんは周りと違うわが子に不安を抱えていたんだと思う。
それならば、今回で少しでも気持ちが晴れたならこちらも良かった。
「ちなみにいつ終わるのか分かったりするのかしら?」
お母さんから追加で聞かれる。
「明確にこの時期に終わると言うことは分かりません。子供に寄っても違いますからね。」
先程まで、晴れやかなお母さんの表情が曇る。
「じゃあ、ずっとかもしれないの?」
「長く続くかもしれません。でも、お母さんとお父さんの事が好きな気持ちもありますよ。お姉ちゃんにも沢山関わってあげて下さい!いきなり終わる事はほぼないと思いますが、徐々にですね。」
お母さんはハッとした顔で頷く。
「あの子が産まれてからリリーにはあまり構ってあげられなかったわ。寂しかったのかしら。ありがとう、店員さん。」
陰っていたお母さんの表情が和らぎ他のママ友も「そうなんだ」とお話を聞いてくれていた。
「あの…。また、悩んだらお話をしに来てもいいかしら?」
おずおずとお母さんが言う。育児は無限大に悩みや問題が出る。他人には言いにくいことも沢山あるだろう。
「もちろん!お店が空いている日なら。」
そう言うとパーッと表情が明るくなる。他のママ友も「なら、今度私も聞いてもらおうかなー?」なんてお話されていた。
「今日はご馳走様。あと、お話聞いてくれてありがとう。これは相談料として受け取ってちょうだい?」
チップとご飯代を渡される。初めは断ったがキルシュさんもこういうのはご好意だから受け取らないと失礼よと教えてくれた。
「ありがとうごさいました!またのご来店をお待ちしております。」
(これは、ありかも!)
保育士の久しぶりに感じる仕事をしてあることを閃いたのだった。
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