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始まりの物語
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時は平安時代。
貴方様に会ったのはここが初めてだったな。
「小太郎。おいで。」
私の記憶の初めては小太郎だったな。
そう私のことを呼ぶあなたの声は鈴のような可愛らしさだったことも覚えている。
近くに寄るとその小さな手で私を優しく撫で、食事も与えてくれる。心地よくてこのまま居たくて何度も貴方の声が聞こえるたびに駆けて行ったな。
「もう、あれには関わるでない。」
いつだったか貴方様の父上が怒鳴る声をきいた。
「でも、小太郎は私がいないと死んでしまいます。」
私を抱く手は叱責されたことで委縮し、震えている。この父親の言うことの通りなのだ。この時代には貴族からの税の徴収も多く、作物も不作。家族でないものに与えてやれる余裕なんてないのだ。
「それをこちらに渡しなさい。お前は優しい子だから家族を殺せないだろう。お前がそれをかばうのなら一家の者が死ぬのだ。」
そういって私の体が持ち上げられるとそのまま冷たい水に落とされ暴れているうちにだんだんと苦しくなった。
貴方様は流される私を追いかけてくれていたな。私が貴方様と同じ姿をしていたらこんなことにはならなかったのだろうか。
「小太郎!いやっ!死んじゃう。行かないで!」
ありがとう。ここで一回目の人生が幕を閉じた。
神様。どうか存在するなら次はあの方と同じ姿で生きることができれば。
次こそはあなたにそんな顔をさせないから。
貴方様に会ったのはここが初めてだったな。
「小太郎。おいで。」
私の記憶の初めては小太郎だったな。
そう私のことを呼ぶあなたの声は鈴のような可愛らしさだったことも覚えている。
近くに寄るとその小さな手で私を優しく撫で、食事も与えてくれる。心地よくてこのまま居たくて何度も貴方の声が聞こえるたびに駆けて行ったな。
「もう、あれには関わるでない。」
いつだったか貴方様の父上が怒鳴る声をきいた。
「でも、小太郎は私がいないと死んでしまいます。」
私を抱く手は叱責されたことで委縮し、震えている。この父親の言うことの通りなのだ。この時代には貴族からの税の徴収も多く、作物も不作。家族でないものに与えてやれる余裕なんてないのだ。
「それをこちらに渡しなさい。お前は優しい子だから家族を殺せないだろう。お前がそれをかばうのなら一家の者が死ぬのだ。」
そういって私の体が持ち上げられるとそのまま冷たい水に落とされ暴れているうちにだんだんと苦しくなった。
貴方様は流される私を追いかけてくれていたな。私が貴方様と同じ姿をしていたらこんなことにはならなかったのだろうか。
「小太郎!いやっ!死んじゃう。行かないで!」
ありがとう。ここで一回目の人生が幕を閉じた。
神様。どうか存在するなら次はあの方と同じ姿で生きることができれば。
次こそはあなたにそんな顔をさせないから。
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