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そして、今
始まり
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僕たちはあの日から、天使の観測を行い始めた。誰に言われるでもなく、(メールが送られてきたらだが)しかし、もう間も無く2年が過ぎようとしていた。
最近は、メールも送られてこなくなったが、代わりにお嬢さんの飛行用擬似翼『イカロス』が、設計図・資材共々送られてきた。加えて、天使の出現を探知し、警報を鳴らすソフトも僕のパソコンに、ダウンロードされていたのだ。
もちろんのこと、誰がこんなことをしているのかは、分からないままであった。
すでに、依頼主は僕が誰かの協力を得ていることを知っているようであることも、僕は驚いていた。
「まあいいじゃない。これらのおかげで、効率も上がったし、最初の頃よりずっとマシだわ」
「それは、そうなんだが」
人間として、不審人物から続々と贈り物をされても、更に不安になる一方なのだ。(特に後で高額な請求がきたらと思うと)
「胃が痛い」
僕はポソッと呟いた。
そういえば、お嬢さんはこの1年、元の世界に帰れない状態が続いている。確かにこの問題もいずれ解決しなければならない。でないとお嬢さんが、この事務所で寝泊まりすることになるから、僕の貯金を圧迫してしまう。だが、僕はそんなことは言えない。(それを言うと、お嬢さんの静かな微笑みが怖い)
そこまで、思い返して時計を見るともう12時。そろそろお嬢さんが帰ってくるな、と思った矢先、バタンと事務所のドアが開いて、お嬢さんが「戻ったわよ」と言って帰ってきた。
こんな風に、過ごしている間に僕たちは2年も一緒に過ごしていた。時には、僕の本業も手伝ってもらったし、お嬢さんが外に出かけて、初めて体験したことを語り合ったりもした。
「うん、そろそろだな」
僕の両親は離婚して、母が女手一つで僕と姉を育てたが、病に倒れ帰らぬ人となった。
その後、姉さんは結婚した。姉さんの旦那さん、タケルさんとは、僕も仲が良く高校の先輩でもあった。そんな姉夫婦が、旅行先の事故で亡くなった後、まだ幼い姪の真理亜を引き取って、僕が育てていたのだ。
そのため僕は、姉の残した真理亜に同居人が増えてもいいかどうかを確認していた。中学生という、お年頃と言えばお年頃な女子なので、初めは嫌がるだろうと思っていたけど、真理亜は案外、喜んでいた。「男の人?女の人?」と、友達か恋人を呼ぶのか聞いてきたくらいだ。「女の子だよ。真理亜よりちょっと年上の」と言うと、彼女は、少し引いていた。「違う、違う。海外の人でホームステイしたいと言う人がいて、ほら、このウチって部屋はわりと余っているだろ」僕は言い訳を目一杯すると、「別に反対なんて言ってないでしょ。叔父さん」と了承してくれたのが、先日のことだ。
だから、僕はお嬢さんにそのことを告げようと思っていた。だがそう上手くもいかないまま、1年が過ぎ、そして今に至る。
さあ、言え。若田 敏彦。男を見せろ。
「お嬢さん、僕の家に来ないか。ウチには、姪がいて姪っていうのは、僕の子供じゃなくて・・・」
たどたどしくではあったが、しっかり伝えられただろうか?
いや、お嬢さんの表情は柔らかい。
僕は、お嬢さんのはにかむ顔を見届けると、ウチに電話した。
「なぁ、真理亜、先日のことなんだけどさ・・・」
僕は、真理亜に喜びの電話をした。
これからの期待と不安と、その他諸々の感情を胸に詰めて、僕の新しい生活が始まる予感がした。
最近は、メールも送られてこなくなったが、代わりにお嬢さんの飛行用擬似翼『イカロス』が、設計図・資材共々送られてきた。加えて、天使の出現を探知し、警報を鳴らすソフトも僕のパソコンに、ダウンロードされていたのだ。
もちろんのこと、誰がこんなことをしているのかは、分からないままであった。
すでに、依頼主は僕が誰かの協力を得ていることを知っているようであることも、僕は驚いていた。
「まあいいじゃない。これらのおかげで、効率も上がったし、最初の頃よりずっとマシだわ」
「それは、そうなんだが」
人間として、不審人物から続々と贈り物をされても、更に不安になる一方なのだ。(特に後で高額な請求がきたらと思うと)
「胃が痛い」
僕はポソッと呟いた。
そういえば、お嬢さんはこの1年、元の世界に帰れない状態が続いている。確かにこの問題もいずれ解決しなければならない。でないとお嬢さんが、この事務所で寝泊まりすることになるから、僕の貯金を圧迫してしまう。だが、僕はそんなことは言えない。(それを言うと、お嬢さんの静かな微笑みが怖い)
そこまで、思い返して時計を見るともう12時。そろそろお嬢さんが帰ってくるな、と思った矢先、バタンと事務所のドアが開いて、お嬢さんが「戻ったわよ」と言って帰ってきた。
こんな風に、過ごしている間に僕たちは2年も一緒に過ごしていた。時には、僕の本業も手伝ってもらったし、お嬢さんが外に出かけて、初めて体験したことを語り合ったりもした。
「うん、そろそろだな」
僕の両親は離婚して、母が女手一つで僕と姉を育てたが、病に倒れ帰らぬ人となった。
その後、姉さんは結婚した。姉さんの旦那さん、タケルさんとは、僕も仲が良く高校の先輩でもあった。そんな姉夫婦が、旅行先の事故で亡くなった後、まだ幼い姪の真理亜を引き取って、僕が育てていたのだ。
そのため僕は、姉の残した真理亜に同居人が増えてもいいかどうかを確認していた。中学生という、お年頃と言えばお年頃な女子なので、初めは嫌がるだろうと思っていたけど、真理亜は案外、喜んでいた。「男の人?女の人?」と、友達か恋人を呼ぶのか聞いてきたくらいだ。「女の子だよ。真理亜よりちょっと年上の」と言うと、彼女は、少し引いていた。「違う、違う。海外の人でホームステイしたいと言う人がいて、ほら、このウチって部屋はわりと余っているだろ」僕は言い訳を目一杯すると、「別に反対なんて言ってないでしょ。叔父さん」と了承してくれたのが、先日のことだ。
だから、僕はお嬢さんにそのことを告げようと思っていた。だがそう上手くもいかないまま、1年が過ぎ、そして今に至る。
さあ、言え。若田 敏彦。男を見せろ。
「お嬢さん、僕の家に来ないか。ウチには、姪がいて姪っていうのは、僕の子供じゃなくて・・・」
たどたどしくではあったが、しっかり伝えられただろうか?
いや、お嬢さんの表情は柔らかい。
僕は、お嬢さんのはにかむ顔を見届けると、ウチに電話した。
「なぁ、真理亜、先日のことなんだけどさ・・・」
僕は、真理亜に喜びの電話をした。
これからの期待と不安と、その他諸々の感情を胸に詰めて、僕の新しい生活が始まる予感がした。
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