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第三章
花森家の騒動 2
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「だから言ったじゃないですか。我が家は大丈夫だって……。それよりなんで私のことであんな熱弁したんですか……」
「いや、沙穂の評価を低く見積もられると、もっと正当に評価してやってくれという気になるだろうが」
「八雲さんが私の評価を高く見積もりすぎなんですってば」
帰り道、車を走らせながら二人は花森の実家で起きたことを思い出す。
「やっぱり、八雲さんの見た目に『私には勿体ない』って結論を出してくれてましたね」
「会ったばかりで過大評価されてもな……。中身が大したことないかもしれないだろう」
「イケメンは中身も良いって、あの三人は思ってます」
「なんでだ。どうしてそんな顔の良い男に弱いんだ」
「イケメンであることが争いを減らすからだそうです」
「知るか」
東御は東御で花森の評価が家で低かったのが気に入らない。
自分を買いかぶってくれるのはともかく、花森沙穂が東御と釣り合わないはずだと言われる筋合いはない。
「前にも言ったが、沙穂は俺の人生を大きく変えたんだ。もっと自信を持て」
「まあ、八雲さんにとっては最高の女だと思うようにしていますから」
「よし」
「……あ、お姉ちゃんからメッセージだ」
花森は携帯電話のメッセージアプリケーションを立ち上げる。
『東御さんの写真送って。お父さんとお母さんと、写真撮り忘れちゃったって後悔してるところ』
「……」
「どうした? 沙穂」
「いえ、我が家で八雲さんの写真を見たいと連絡が来ました」
「この間、二人で撮った密着したやつがあっただろ。アレを送れば良いんじゃないか?」
「……なんで家族にイチャイチャしてる写真を送らなきゃいけないんですか」
「幸せそうな写真を見せた方が安心するんじゃないのか?」
「……多分これは、ただ八雲さんを見たいだけです」
「いいから、あの写真を送れ」
花森は渋々携帯電話をいじり、保存した写真を探す。
旅館の部屋で、ワンピース姿の花森を着物で後ろから抱きしめている東御の写真を見つけて「あ」と声を上げる。
改めて写真を見返してみると、東御が自分をきつめに抱きしめているのがよく分かる写真で、頬を寄せて幸せそうな二人が写っている。
「こ、これ、どう見たってイチャイチャしに行った時に撮ったんだなって感じがします」
「結婚するんだからイチャイチャだってするだろ。何をいまさら……」
「これは見せません! 私たち二人だけのものにします」
「まあ、沙穂がそう言うなら別のやつにすればいい」
花森は携帯電話に保存した写真を探し、東御の誕生日に撮った東御の顔が無表情で固まっているものを送ることにした。
「八雲さんは、私といる時に特別な顔をするんです。それは私だけのものです」
「……ぐっとくることを言ってくれる」
東御は先ほどまでの不機嫌を追いやり、気を取り直す。
「沙穂の家族に受け入れられたんだから、喜ぶところだな」
「そうですね、これからは、家族に自慢できる夫として堂々としてください」
「このまま、役所に向かうぞ」
「え? 日曜日ですけど」
「婚姻届は日曜でも受け付けてくれるんだよ」
そこで信号が赤になる。
東御はパーキングブレーキをかけると、隣の花森と軽いキスをした。
「だから言ったじゃないですか。我が家は大丈夫だって……。それよりなんで私のことであんな熱弁したんですか……」
「いや、沙穂の評価を低く見積もられると、もっと正当に評価してやってくれという気になるだろうが」
「八雲さんが私の評価を高く見積もりすぎなんですってば」
帰り道、車を走らせながら二人は花森の実家で起きたことを思い出す。
「やっぱり、八雲さんの見た目に『私には勿体ない』って結論を出してくれてましたね」
「会ったばかりで過大評価されてもな……。中身が大したことないかもしれないだろう」
「イケメンは中身も良いって、あの三人は思ってます」
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自分を買いかぶってくれるのはともかく、花森沙穂が東御と釣り合わないはずだと言われる筋合いはない。
「前にも言ったが、沙穂は俺の人生を大きく変えたんだ。もっと自信を持て」
「まあ、八雲さんにとっては最高の女だと思うようにしていますから」
「よし」
「……あ、お姉ちゃんからメッセージだ」
花森は携帯電話のメッセージアプリケーションを立ち上げる。
『東御さんの写真送って。お父さんとお母さんと、写真撮り忘れちゃったって後悔してるところ』
「……」
「どうした? 沙穂」
「いえ、我が家で八雲さんの写真を見たいと連絡が来ました」
「この間、二人で撮った密着したやつがあっただろ。アレを送れば良いんじゃないか?」
「……なんで家族にイチャイチャしてる写真を送らなきゃいけないんですか」
「幸せそうな写真を見せた方が安心するんじゃないのか?」
「……多分これは、ただ八雲さんを見たいだけです」
「いいから、あの写真を送れ」
花森は渋々携帯電話をいじり、保存した写真を探す。
旅館の部屋で、ワンピース姿の花森を着物で後ろから抱きしめている東御の写真を見つけて「あ」と声を上げる。
改めて写真を見返してみると、東御が自分をきつめに抱きしめているのがよく分かる写真で、頬を寄せて幸せそうな二人が写っている。
「こ、これ、どう見たってイチャイチャしに行った時に撮ったんだなって感じがします」
「結婚するんだからイチャイチャだってするだろ。何をいまさら……」
「これは見せません! 私たち二人だけのものにします」
「まあ、沙穂がそう言うなら別のやつにすればいい」
花森は携帯電話に保存した写真を探し、東御の誕生日に撮った東御の顔が無表情で固まっているものを送ることにした。
「八雲さんは、私といる時に特別な顔をするんです。それは私だけのものです」
「……ぐっとくることを言ってくれる」
東御は先ほどまでの不機嫌を追いやり、気を取り直す。
「沙穂の家族に受け入れられたんだから、喜ぶところだな」
「そうですね、これからは、家族に自慢できる夫として堂々としてください」
「このまま、役所に向かうぞ」
「え? 日曜日ですけど」
「婚姻届は日曜でも受け付けてくれるんだよ」
そこで信号が赤になる。
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