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第3章
恥ずかしいって何だよ
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会社から家に戻ると、赤堀が誰かとオンライン会議中だった。
あ、丁度いいかもと思って「誰?」とそのまま赤堀に尋ねたら、やたら焦っている。
「茶谷さん! 今、スピーカー切りましたけど声拾っちゃったらどうするんですか!」
「いや、だから別にバレても良いだろうと思って・・」
「嫌ですよ!」
「何でだよ」
「は、恥ずかしいじゃないですか!」
へえ・・。恥ずかしいのか・・。俺ら、そんな恥ずかしい付き合いをしているとでも? なんか、ちょっと気に入らねえと思う俺が間違ってんだろうか。
仕方が無いので、着替えてコーヒーを淹れ、赤堀の席の前に座って待つ。赤堀は時折こっちを見て気まずそうにしながら相手と話をしていた。どうやら営業1部の連中と打ち合わせ中らしい。
「もう! 前も言いましたけど、衝撃的にばらすのは勘弁して下さい!」
会議を終えた赤堀の第一声だ。会議中に声を掛けたのが、相当嫌だったらしいな。
「さっき緑川に、付き合ってること報告してきた。一緒に仕事してる奴らとかには、ちゃんと言っておいた方が良いだろうって意見だったよ」
「ええっ・・? 付き合ってるって、言っておいた方が良い事なんですか?」
なるほど、こいつは黙っていようと思っていたわけだな、俺と付き合ってんのを・・。何でだ? さっき恥ずかしいって言ってたけど、別に恥ずかしいようなことじゃないだろと思う俺がおかしいのか?
「なんか社内恋愛って、難しいんですね・・」
「どうしてその結論に至ったのかが分からねえよ」
「だって、男女の付き合いって、別に公表しなきゃいけないものでもないじゃないですか・・。芸能人だって、結婚してから初めて分かるケースも多いし・・」
うーん。何かが根本的に違う気がする。何だろう。赤堀と俺の考え方の、この決定的な違いは・・。
「でも、例えば一緒に仕事してるメンバー同士が付き合ってるとして、それを後から知ったらなんか気持ち悪くねえか?」
「それは・・そうですけど・・」
「多分、そのうちバレるんだよ、こういうのは。何かがきっかけで。だから、むやみに隠すんじゃなく、言っておいた方が良い相手にはちゃんと言っておきたい」
赤堀は何だか不安そうな顔をしている。何だろう。釈然としない。
別に悪い話をしているわけじゃないのに、なんでこんなに辛そうなんだろう。
「何考えてる? 何で、そんな嫌そうなんだ?」
「・・付き合ってる、って、結婚とは違いますから。そんな不安定な関係を公表するのは、伝えられた方も気まずいだろうなって・・」
独自の理論だな・・。伝えられた側が気まずい? そんなことってあるのか? 俺の生きて来た価値観では、そんなものはなかった。
「つまり、赤堀は周りに黙っておきたいのか?」
「端的に言うと、そうです」
「はあー・・そうかよ・・」
こんなことになるとは思わなかった。赤堀は俺との関係を隠したい、と。それって、バレないようにコソコソしろってことなんだよな?
「赤堀の気持ちは分かったけど、すんなりそうですかって納得はできねえわ。俺は、もともと社内恋愛は否定派だった。だけど、周りに知られても良いと思ったから赤堀と付き合うことにしたんだぞ?」
真剣に、目の前の赤堀に伝えた。俺は、赤堀が相手なら気持ちは伝わると、完全に自惚れていた。
「ごめんなさい・・。でも、私は・・茶谷さんと付き合ってるって知られたくないです・・」
赤堀と分かり合えないってことが、まさか起きるとは思わなかったんだ。
あ、丁度いいかもと思って「誰?」とそのまま赤堀に尋ねたら、やたら焦っている。
「茶谷さん! 今、スピーカー切りましたけど声拾っちゃったらどうするんですか!」
「いや、だから別にバレても良いだろうと思って・・」
「嫌ですよ!」
「何でだよ」
「は、恥ずかしいじゃないですか!」
へえ・・。恥ずかしいのか・・。俺ら、そんな恥ずかしい付き合いをしているとでも? なんか、ちょっと気に入らねえと思う俺が間違ってんだろうか。
仕方が無いので、着替えてコーヒーを淹れ、赤堀の席の前に座って待つ。赤堀は時折こっちを見て気まずそうにしながら相手と話をしていた。どうやら営業1部の連中と打ち合わせ中らしい。
「もう! 前も言いましたけど、衝撃的にばらすのは勘弁して下さい!」
会議を終えた赤堀の第一声だ。会議中に声を掛けたのが、相当嫌だったらしいな。
「さっき緑川に、付き合ってること報告してきた。一緒に仕事してる奴らとかには、ちゃんと言っておいた方が良いだろうって意見だったよ」
「ええっ・・? 付き合ってるって、言っておいた方が良い事なんですか?」
なるほど、こいつは黙っていようと思っていたわけだな、俺と付き合ってんのを・・。何でだ? さっき恥ずかしいって言ってたけど、別に恥ずかしいようなことじゃないだろと思う俺がおかしいのか?
「なんか社内恋愛って、難しいんですね・・」
「どうしてその結論に至ったのかが分からねえよ」
「だって、男女の付き合いって、別に公表しなきゃいけないものでもないじゃないですか・・。芸能人だって、結婚してから初めて分かるケースも多いし・・」
うーん。何かが根本的に違う気がする。何だろう。赤堀と俺の考え方の、この決定的な違いは・・。
「でも、例えば一緒に仕事してるメンバー同士が付き合ってるとして、それを後から知ったらなんか気持ち悪くねえか?」
「それは・・そうですけど・・」
「多分、そのうちバレるんだよ、こういうのは。何かがきっかけで。だから、むやみに隠すんじゃなく、言っておいた方が良い相手にはちゃんと言っておきたい」
赤堀は何だか不安そうな顔をしている。何だろう。釈然としない。
別に悪い話をしているわけじゃないのに、なんでこんなに辛そうなんだろう。
「何考えてる? 何で、そんな嫌そうなんだ?」
「・・付き合ってる、って、結婚とは違いますから。そんな不安定な関係を公表するのは、伝えられた方も気まずいだろうなって・・」
独自の理論だな・・。伝えられた側が気まずい? そんなことってあるのか? 俺の生きて来た価値観では、そんなものはなかった。
「つまり、赤堀は周りに黙っておきたいのか?」
「端的に言うと、そうです」
「はあー・・そうかよ・・」
こんなことになるとは思わなかった。赤堀は俺との関係を隠したい、と。それって、バレないようにコソコソしろってことなんだよな?
「赤堀の気持ちは分かったけど、すんなりそうですかって納得はできねえわ。俺は、もともと社内恋愛は否定派だった。だけど、周りに知られても良いと思ったから赤堀と付き合うことにしたんだぞ?」
真剣に、目の前の赤堀に伝えた。俺は、赤堀が相手なら気持ちは伝わると、完全に自惚れていた。
「ごめんなさい・・。でも、私は・・茶谷さんと付き合ってるって知られたくないです・・」
赤堀と分かり合えないってことが、まさか起きるとは思わなかったんだ。
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