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第3章
好まざる状況
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「え・・? ゴロー、赤堀と付き合ってんの?」
「つい先日からな」
「意外すぎて、ちょっと信じらんないんだけど・・」
会議室で、緑川に赤堀とのことを報告した。社内恋愛を人事に報告する義務なんか全くないが、噂が回る前に緑川を味方に付けておこうと思ったからだ。
「意外か?」
「だってゴローの好みって年上だし、赤堀って年相応っていうか・・かなり若い感じするから・・」
「まあ、そうだな・・」
緑川に改めて言われると、確かに赤堀は落ち着いた雰囲気も無いし、年上好きの俺が選ぶタイプとは違う。
「赤堀がゴローのこと気に入ってたのは知ってたけど、ゴローはなびかないと思ってたわ」
「まあ、色々あんだよ・・」
「社内はそれなりに難しいわよ? 簡単に別れたら相当大変だから許さないわよ? 大丈夫なのよね?」
「その覚悟が無かったら付き合ってねえよ」
緑川は難しい顔をしている。社内恋愛って、やっぱりなにかと面倒だよなあ、人事にとっては。
「青木くんがゴローのこと色々言ってるのと、もしかして関係ある?」
「大ありだろ。あいつ、多分まだ赤堀に未練タラタラなんだと思うぜ」
会議室のデスクに緑川が沈んだ。「あーーーー」と声を上げている。壊れたな。
「なんかおかしいと思ったのよ。あの青木くんがゴローのことそこまで悪く言うのって、心当たりが無かったから」
突っ伏したままの緑川の言葉に、知らないところで何かが起きてるんだなと嫌な予感がした。
「へえ・・そこまで悪く言われてんのか・・」
「ゴローを降格させるか、自分を部署異動させるかどっちかにして欲しいってハッキリ言って来たらしいわよ、灰原に」
ぶっ飛ばす。あいつ、格闘技の覚えはないはずだが・・関係ねえ、ぶっ飛ばす。一発殴っただけでは収まらない。この怒りを収める術が思いつかない。
「勘弁してよお・・。あんたも、もっとうまくやんなさいよー。青木怒らせてどうすんのよー」
「知るかよ。青木が怒ってんのは別に俺のせいじゃねえだろ」
「ただでさえ、ゴローは昇進して当たりが強くなってるんだから・・」
なるほどな。確かに、このタイミングでこの年齢で副部長に昇進するってのは、割と異例だと聞いた。つまり、それだけ妬みの対象でもあるんだろう。そこに来て青木からの評価が散々で社内の評判が落ちると、そういうのを楽しむ人間が一定数いるってことなんだろう。
「別に、当たりが強い位なんてことねえけどな。もともと当たりは弱くなかったタイプだし・・。でも、言われっぱなしのやられっぱなしってのは、気に入らねえっつーか、なんか釈然としねえわ」
「まあ、この際だからゴローと赤堀が付き合ってるの、公にしちゃった方がいいかもね」
「何でだ?」
「青木が赤堀のこと追っかけてたのは、有名だからよ」
なるほどなあ・・。確かに、俺と赤堀が付き合ってると知れば、赤堀を取られた青木が妬んでいるんだと気付く人間も多いかもしれない。でも、それは赤堀が望んでいることなんだろうか? 以前、オンライン会議中にバラそうかと言ったら嫌がっていた気がするんだけど・・。
「ちなみに、赤堀と俺が付き合ってるってのは、公にしても社内的に問題はないんだな?」
「まあ・・社内恋愛は過去にも無くはないし、社内結婚も多くないけど何人かいるからね。あんたと赤堀が一緒にやってる仕事の関係者には、噂で伝わる前に言っておいた方が良いと思うわよ。面白くないだろうから」
それがまた、赤堀と俺が同じチームでやってる仕事って、そんなに関係者いないんだよなあ。
「一緒に仕事してんのは・・浅黄とか部長とか碧井とか藍木とか」
「藍木は知ってるんでしょうね、恐らく」
「そうだな。俺より社内で色んな人と仕事してる赤堀に伝えてもらうのもありかなと思うんだけど・・」
「それ、かわいそうじゃない? 赤堀よりあんたが言って回るべきだわ」
緑川に釘を刺された。赤堀が自分から俺と付き合っているのを言うのは抵抗があるに違いない、らしい。でも、そんなの気にしてんだろうか。家に帰ったら赤堀に聞いてみよう。
「つい先日からな」
「意外すぎて、ちょっと信じらんないんだけど・・」
会議室で、緑川に赤堀とのことを報告した。社内恋愛を人事に報告する義務なんか全くないが、噂が回る前に緑川を味方に付けておこうと思ったからだ。
「意外か?」
「だってゴローの好みって年上だし、赤堀って年相応っていうか・・かなり若い感じするから・・」
「まあ、そうだな・・」
緑川に改めて言われると、確かに赤堀は落ち着いた雰囲気も無いし、年上好きの俺が選ぶタイプとは違う。
「赤堀がゴローのこと気に入ってたのは知ってたけど、ゴローはなびかないと思ってたわ」
「まあ、色々あんだよ・・」
「社内はそれなりに難しいわよ? 簡単に別れたら相当大変だから許さないわよ? 大丈夫なのよね?」
「その覚悟が無かったら付き合ってねえよ」
緑川は難しい顔をしている。社内恋愛って、やっぱりなにかと面倒だよなあ、人事にとっては。
「青木くんがゴローのこと色々言ってるのと、もしかして関係ある?」
「大ありだろ。あいつ、多分まだ赤堀に未練タラタラなんだと思うぜ」
会議室のデスクに緑川が沈んだ。「あーーーー」と声を上げている。壊れたな。
「なんかおかしいと思ったのよ。あの青木くんがゴローのことそこまで悪く言うのって、心当たりが無かったから」
突っ伏したままの緑川の言葉に、知らないところで何かが起きてるんだなと嫌な予感がした。
「へえ・・そこまで悪く言われてんのか・・」
「ゴローを降格させるか、自分を部署異動させるかどっちかにして欲しいってハッキリ言って来たらしいわよ、灰原に」
ぶっ飛ばす。あいつ、格闘技の覚えはないはずだが・・関係ねえ、ぶっ飛ばす。一発殴っただけでは収まらない。この怒りを収める術が思いつかない。
「勘弁してよお・・。あんたも、もっとうまくやんなさいよー。青木怒らせてどうすんのよー」
「知るかよ。青木が怒ってんのは別に俺のせいじゃねえだろ」
「ただでさえ、ゴローは昇進して当たりが強くなってるんだから・・」
なるほどな。確かに、このタイミングでこの年齢で副部長に昇進するってのは、割と異例だと聞いた。つまり、それだけ妬みの対象でもあるんだろう。そこに来て青木からの評価が散々で社内の評判が落ちると、そういうのを楽しむ人間が一定数いるってことなんだろう。
「別に、当たりが強い位なんてことねえけどな。もともと当たりは弱くなかったタイプだし・・。でも、言われっぱなしのやられっぱなしってのは、気に入らねえっつーか、なんか釈然としねえわ」
「まあ、この際だからゴローと赤堀が付き合ってるの、公にしちゃった方がいいかもね」
「何でだ?」
「青木が赤堀のこと追っかけてたのは、有名だからよ」
なるほどなあ・・。確かに、俺と赤堀が付き合ってると知れば、赤堀を取られた青木が妬んでいるんだと気付く人間も多いかもしれない。でも、それは赤堀が望んでいることなんだろうか? 以前、オンライン会議中にバラそうかと言ったら嫌がっていた気がするんだけど・・。
「ちなみに、赤堀と俺が付き合ってるってのは、公にしても社内的に問題はないんだな?」
「まあ・・社内恋愛は過去にも無くはないし、社内結婚も多くないけど何人かいるからね。あんたと赤堀が一緒にやってる仕事の関係者には、噂で伝わる前に言っておいた方が良いと思うわよ。面白くないだろうから」
それがまた、赤堀と俺が同じチームでやってる仕事って、そんなに関係者いないんだよなあ。
「一緒に仕事してんのは・・浅黄とか部長とか碧井とか藍木とか」
「藍木は知ってるんでしょうね、恐らく」
「そうだな。俺より社内で色んな人と仕事してる赤堀に伝えてもらうのもありかなと思うんだけど・・」
「それ、かわいそうじゃない? 赤堀よりあんたが言って回るべきだわ」
緑川に釘を刺された。赤堀が自分から俺と付き合っているのを言うのは抵抗があるに違いない、らしい。でも、そんなの気にしてんだろうか。家に帰ったら赤堀に聞いてみよう。
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