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第2章
正月休み
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2020年1月1日 0:00――
『あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします』
赤堀は、律儀にメッセージを送って来た。カウントダウンライブの最中じゃねえのか??
『お前、渡り鳥なのに渡んなくて良いのか?』
『定住型なのでご心配には及びません』
定住型の鶴か・・。環境の変化に対応したんだな・・。
新年早々、鶴とやり取りしてるってどういうことだ・・。いや、正月に鶴ってのは、めでたいのかもしれない・・?
『初詣とか行くんですか?』
『まあ、一応行くんだろうな。家族が連れ立って行きたがるし』
『いいなあ、私も初詣行きたいです。茶谷さんと♡』
『うちの家族、みんな茶谷さんだぞ。甥っ子でも貸すか?』
『そこは茶谷吾郎さんでお願いしますー』
相変わらずの赤堀。また押されんだろーなというのが分かって来た。
たまには引いてみろとかアドバイスするつもりもないが、プッシュがすごい。それにしてもあいつ、ライブの最中にこんなメッセージ送ってて大丈夫なんだろうか? ライブってそんな感じなのか? 携帯の電源はオフにしないのか?
『茶谷さんに会いたいです!』
『会社始まるだろ、そのうち』
『だって、まだまだお休みが続くじゃないですか』
ぐいぐい来るなあ・・。なんでこいつ、そんなに俺?
電車で助けた以外で、赤堀に親切にした覚えもない。他の新人同様に適当で失礼な態度のままだったのは間違いないし、仕事でも厳しくしてる方だ。
敢えて言うなら、飲みに連れて行ったりしたのが悪かったのかもな・・。
餌付けはダメだ、鶴に。動物ってのは野生が一番だ。
そんなことを考えながら何気なくテレビを眺めていたら、緑川の好きな小学生が躍っていた。小学生が深夜に働くのは確か違法だったはずだから、録画番組か何かだろう。
「叔父さん、カザカミ好きなの?」
正月のムードに夜更かしをしている姪が嬉しそうに聞いて来る。そうか、小学生に人気のアイドルなんだったな。
「いや、叔父さんの会社の人が好きなんだ、このアイドル」
「へえ、叔父さんのお友達、誰担当?」
「・・担当? ・・緑のやつ」
「そっかあ、ルイーズなんだね。私はカザカミに箱推しだよ」
「日本語喋ってくれ」
つい、叔父さんって、自分で認めちまったじゃねーか。
カザカミに箱推しって何だよ。暖簾に腕押ししか知らねえわ。
「アイドルとか好きなんだな」
「うん、好きー。かっこいいじゃん。こんな子、学校にいないもん」
「そうねえ。よくもまあ、あんな笑顔振りまけるよなあ」
「叔父さんとは正反対だね、いつも機嫌悪そうだもん」
小学生の姪に、いつも機嫌悪そうと酷評された。俺はもうダメかもしれない。そう思ったら携帯がメッセージを受信した。
『茶谷さんー、どこを歩いても茶谷さん以上にカッコいい人がいませんよお』
赤堀! お前分かってるな。それだ、それを待っていた。
いや、なんで年明け早々、鶴に励まされてんだ、俺は。
『あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします』
赤堀は、律儀にメッセージを送って来た。カウントダウンライブの最中じゃねえのか??
『お前、渡り鳥なのに渡んなくて良いのか?』
『定住型なのでご心配には及びません』
定住型の鶴か・・。環境の変化に対応したんだな・・。
新年早々、鶴とやり取りしてるってどういうことだ・・。いや、正月に鶴ってのは、めでたいのかもしれない・・?
『初詣とか行くんですか?』
『まあ、一応行くんだろうな。家族が連れ立って行きたがるし』
『いいなあ、私も初詣行きたいです。茶谷さんと♡』
『うちの家族、みんな茶谷さんだぞ。甥っ子でも貸すか?』
『そこは茶谷吾郎さんでお願いしますー』
相変わらずの赤堀。また押されんだろーなというのが分かって来た。
たまには引いてみろとかアドバイスするつもりもないが、プッシュがすごい。それにしてもあいつ、ライブの最中にこんなメッセージ送ってて大丈夫なんだろうか? ライブってそんな感じなのか? 携帯の電源はオフにしないのか?
『茶谷さんに会いたいです!』
『会社始まるだろ、そのうち』
『だって、まだまだお休みが続くじゃないですか』
ぐいぐい来るなあ・・。なんでこいつ、そんなに俺?
電車で助けた以外で、赤堀に親切にした覚えもない。他の新人同様に適当で失礼な態度のままだったのは間違いないし、仕事でも厳しくしてる方だ。
敢えて言うなら、飲みに連れて行ったりしたのが悪かったのかもな・・。
餌付けはダメだ、鶴に。動物ってのは野生が一番だ。
そんなことを考えながら何気なくテレビを眺めていたら、緑川の好きな小学生が躍っていた。小学生が深夜に働くのは確か違法だったはずだから、録画番組か何かだろう。
「叔父さん、カザカミ好きなの?」
正月のムードに夜更かしをしている姪が嬉しそうに聞いて来る。そうか、小学生に人気のアイドルなんだったな。
「いや、叔父さんの会社の人が好きなんだ、このアイドル」
「へえ、叔父さんのお友達、誰担当?」
「・・担当? ・・緑のやつ」
「そっかあ、ルイーズなんだね。私はカザカミに箱推しだよ」
「日本語喋ってくれ」
つい、叔父さんって、自分で認めちまったじゃねーか。
カザカミに箱推しって何だよ。暖簾に腕押ししか知らねえわ。
「アイドルとか好きなんだな」
「うん、好きー。かっこいいじゃん。こんな子、学校にいないもん」
「そうねえ。よくもまあ、あんな笑顔振りまけるよなあ」
「叔父さんとは正反対だね、いつも機嫌悪そうだもん」
小学生の姪に、いつも機嫌悪そうと酷評された。俺はもうダメかもしれない。そう思ったら携帯がメッセージを受信した。
『茶谷さんー、どこを歩いても茶谷さん以上にカッコいい人がいませんよお』
赤堀! お前分かってるな。それだ、それを待っていた。
いや、なんで年明け早々、鶴に励まされてんだ、俺は。
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