27 / 59
第2章
年末の銀座飲み
しおりを挟む
今日は、赤堀を食事に連れて行くと約束した会社の最終日だ。兼ねてから行こう行こうと思っていた、銀座の鶏料理『鳥磨隆(とりまる)』のオーナー、佐久さんにメッセージを送る。
『大将~今日、2名で行きたいんですけど』
『茶谷さん!! マジっすか! あざます!!』
『混んでます? 時間とか決めて行った方が良いですか?』
『いつでも大丈夫です!』
良かった。大将の鶏が食える。あの鶴女は鳥類同士で共食いになるけど。まあ、前回の日本料理でも肉を旨そうに食ってたから肉食なんだろう。若いし。
大将の佐久さんとは、かれこれ3年くらいの付き合いだ。最初は佐久さんが有名店で修業していた頃の出会いだった。俺はたまたま取引先の営業担当に紹介されて、あまりにもいい店だったから時々通うようになった。佐久さんのノリとセンスが好きで、独立して『鳥磨隆』をオープンさせてからは、佐久さんの店にずっと通っている。
最近は雑誌にもよく取り上げられるようになって、客が安定して来たらしい。本当に良かった。
年末最終日はそこまで忙しくならなかった。トラブルも起きずに仕事納めになった。赤堀とは19時頃に新宿西口のロータリー待ち合わせにしたので、ひと足早く着いた俺は近くの喫茶店でコーヒーを飲んでいる。
19時前に、赤堀から西口に到着したというメッセージを貰った。
そっちに向かうと返信して会計を済ませ、赤堀が待っているらしい百貨店前に急いだ・・んだけど・・。赤堀が見当たらない。
あの赤堀に限って、勝手に動き回るとは思えない。焦って周りを見回したら・・全然赤堀じゃない赤堀がいた。
俺の中の赤堀結という女は、どこか女らしい格好を避けたような、身体のラインが出ない服を着る。ついでに言うと、髪型もキラキラ系の女子の雰囲気はしない。はずだ。
なのに、目の前にいる赤堀は、Aラインの白いウールコートに細いブーツを履いている。ハッキリと身体のラインが出ているし、顔周りに緩く巻いた後れ毛を残した複雑なヘアスタイル。これは、気合が違う。
「お前・・また化けたな」
ちょっと息が止まった。赤堀は、スタイルは良いと思っていた。やっぱり現代人は違うな、と感心はしていた。いや、だけど・・ここまで変わるか?
「茶谷さん・・」
お前・・妙に目が濡れてるのはあざといな・・。計算か? そんな目で見るな、おい。
「今日、銀座にしよーぜ」
「えっ、私、ほとんど縁が無い町なんですけど!」
「だろーな」
後輩との飲みだと思って、気軽に考えてたけど、こいつ俺のこと好きとか言ってんだよな・・。それで、ここまで気合入れて来たんだろうか。だとしたら、相当かわ・・いくねえよ。鶴がかわいいとか何だよ。鶴だぞ。
新宿でタクシーを捕まえて銀座に向かう。隣にいる赤堀の雰囲気が別人で、妙な居心地だ。
「私、さっき・・告白みたいなものをされちゃいました」
「・・へえ?」
「でも、私には茶谷さんがいるし」
「いや、いねえだろ」
「もー、なんでそういう事言うんですか! 私の心には茶谷さんがいるんですー」
告白か。青木なんだろうな。赤堀、そりゃ、勿体ねえよ・・。
「先輩後輩で良いって言ったよな?」
「言いました」
「じゃあ、別に誰と付き合ってもいいんじゃねえの?」
「良くないです」
赤堀がハッキリと言い切るのを、不覚にもかわいいと思ってしまう。これ多分、相当疲れてんな・・。
タクシーに店のある場所まで道を伝えて、佐久さん・・大将の店が入っているビルの前で降りて店に向かった。
『大将~今日、2名で行きたいんですけど』
『茶谷さん!! マジっすか! あざます!!』
『混んでます? 時間とか決めて行った方が良いですか?』
『いつでも大丈夫です!』
良かった。大将の鶏が食える。あの鶴女は鳥類同士で共食いになるけど。まあ、前回の日本料理でも肉を旨そうに食ってたから肉食なんだろう。若いし。
大将の佐久さんとは、かれこれ3年くらいの付き合いだ。最初は佐久さんが有名店で修業していた頃の出会いだった。俺はたまたま取引先の営業担当に紹介されて、あまりにもいい店だったから時々通うようになった。佐久さんのノリとセンスが好きで、独立して『鳥磨隆』をオープンさせてからは、佐久さんの店にずっと通っている。
最近は雑誌にもよく取り上げられるようになって、客が安定して来たらしい。本当に良かった。
年末最終日はそこまで忙しくならなかった。トラブルも起きずに仕事納めになった。赤堀とは19時頃に新宿西口のロータリー待ち合わせにしたので、ひと足早く着いた俺は近くの喫茶店でコーヒーを飲んでいる。
19時前に、赤堀から西口に到着したというメッセージを貰った。
そっちに向かうと返信して会計を済ませ、赤堀が待っているらしい百貨店前に急いだ・・んだけど・・。赤堀が見当たらない。
あの赤堀に限って、勝手に動き回るとは思えない。焦って周りを見回したら・・全然赤堀じゃない赤堀がいた。
俺の中の赤堀結という女は、どこか女らしい格好を避けたような、身体のラインが出ない服を着る。ついでに言うと、髪型もキラキラ系の女子の雰囲気はしない。はずだ。
なのに、目の前にいる赤堀は、Aラインの白いウールコートに細いブーツを履いている。ハッキリと身体のラインが出ているし、顔周りに緩く巻いた後れ毛を残した複雑なヘアスタイル。これは、気合が違う。
「お前・・また化けたな」
ちょっと息が止まった。赤堀は、スタイルは良いと思っていた。やっぱり現代人は違うな、と感心はしていた。いや、だけど・・ここまで変わるか?
「茶谷さん・・」
お前・・妙に目が濡れてるのはあざといな・・。計算か? そんな目で見るな、おい。
「今日、銀座にしよーぜ」
「えっ、私、ほとんど縁が無い町なんですけど!」
「だろーな」
後輩との飲みだと思って、気軽に考えてたけど、こいつ俺のこと好きとか言ってんだよな・・。それで、ここまで気合入れて来たんだろうか。だとしたら、相当かわ・・いくねえよ。鶴がかわいいとか何だよ。鶴だぞ。
新宿でタクシーを捕まえて銀座に向かう。隣にいる赤堀の雰囲気が別人で、妙な居心地だ。
「私、さっき・・告白みたいなものをされちゃいました」
「・・へえ?」
「でも、私には茶谷さんがいるし」
「いや、いねえだろ」
「もー、なんでそういう事言うんですか! 私の心には茶谷さんがいるんですー」
告白か。青木なんだろうな。赤堀、そりゃ、勿体ねえよ・・。
「先輩後輩で良いって言ったよな?」
「言いました」
「じゃあ、別に誰と付き合ってもいいんじゃねえの?」
「良くないです」
赤堀がハッキリと言い切るのを、不覚にもかわいいと思ってしまう。これ多分、相当疲れてんな・・。
タクシーに店のある場所まで道を伝えて、佐久さん・・大将の店が入っているビルの前で降りて店に向かった。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。



どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる