19 / 59
第2章
かわし方が分からない
しおりを挟む
実は、毎日赤堀から誕生日を祝えというメッセージが来る。もはや迷惑行為になりつつある。何度言わせるんだと思いながら返信してるのに、全く響いていない。
大抵は、一度断られたら納得するものだと思うんだが、あいつ、何でこんなしぶといんだろうか。粘れば覆るとでも思ってるんだろうか。
ここまで毎日誕生日を祝って欲しいと言われると、誕生日を祝う気のない俺が心の無い人間のように思えて来る。第三者に話そうものなら、そこまで言うんだから誕生日くらい祝ってやれよ、と言われる気がする。だけど、そこじゃない。
『茶谷さん、10月9日って、何の日か覚えてます?』
うぜええええ。忘れてええええ。
『目の愛護デーですよね』
『ブブー不正解! 正解は赤堀結の誕生日でーす』
返しづれえわ。毎日懲りもせずに誕生日を送られてきたら、さすがに覚える。実は、10月9日が散歩の日だというのを調べてしまい、うっかり散歩の日ですねと送りたくなった。が、散歩の日なんて普通に生きていると知らないから、さては調べたなと思われそうでやめた。
『はいはい、めでてえな、頭が』
『減らないですね、口が』
お前・・。俺も大概だけど、赤堀も相当だ。尊敬する先輩に対して、口が減らないとか言うか、ふつー。しかもお前俺のこと好きって言った割に、そんな態度か・・?
赤堀結という女にとって、男女の駆け引きというものは存在しないらしい。とりあえず押されてんのだけは間違いないとしても、こんな感じでアプローチされて心が動く男がいるんだろうか。
だから万年フリーなんだろうが、と狙われていることを棚に上げて思う。
でも、この下らないやり取りは案外楽しい。こんな生産性の欠片もないキャッチボールは大人になるとできなくなっていくもので、社会に出てから割と切り捨てて来た。学生時代は当たり前だったことを当然のようにやってのける赤堀は、もしかすると貴重な存在なのかもしれない。
かといって、赤堀とどうにかなろうなどと思うことは無く、連絡を取らなくなった菜帆のことを思い出していた。
なんであの時、別れようってハッキリ言わなかったんだろう。
目の前に菜帆が居て、気持ちがないと告げる度胸が無かったのかもしれない。菜帆を好きになりきれなかったのはこっちの問題で、傷付ける勇気が持てなかったのかもしれない。
『先輩に対してひでえ言い方だな』
思い付いたように、赤堀に返信した。
『同じテンションで返しただけです。そんな茶谷さんも、好きですよ』
相変わらず赤堀のメッセージはどこかおかしくて、あいつもしかすると相当歪んでんじゃねえかと疑った。
大抵は、一度断られたら納得するものだと思うんだが、あいつ、何でこんなしぶといんだろうか。粘れば覆るとでも思ってるんだろうか。
ここまで毎日誕生日を祝って欲しいと言われると、誕生日を祝う気のない俺が心の無い人間のように思えて来る。第三者に話そうものなら、そこまで言うんだから誕生日くらい祝ってやれよ、と言われる気がする。だけど、そこじゃない。
『茶谷さん、10月9日って、何の日か覚えてます?』
うぜええええ。忘れてええええ。
『目の愛護デーですよね』
『ブブー不正解! 正解は赤堀結の誕生日でーす』
返しづれえわ。毎日懲りもせずに誕生日を送られてきたら、さすがに覚える。実は、10月9日が散歩の日だというのを調べてしまい、うっかり散歩の日ですねと送りたくなった。が、散歩の日なんて普通に生きていると知らないから、さては調べたなと思われそうでやめた。
『はいはい、めでてえな、頭が』
『減らないですね、口が』
お前・・。俺も大概だけど、赤堀も相当だ。尊敬する先輩に対して、口が減らないとか言うか、ふつー。しかもお前俺のこと好きって言った割に、そんな態度か・・?
赤堀結という女にとって、男女の駆け引きというものは存在しないらしい。とりあえず押されてんのだけは間違いないとしても、こんな感じでアプローチされて心が動く男がいるんだろうか。
だから万年フリーなんだろうが、と狙われていることを棚に上げて思う。
でも、この下らないやり取りは案外楽しい。こんな生産性の欠片もないキャッチボールは大人になるとできなくなっていくもので、社会に出てから割と切り捨てて来た。学生時代は当たり前だったことを当然のようにやってのける赤堀は、もしかすると貴重な存在なのかもしれない。
かといって、赤堀とどうにかなろうなどと思うことは無く、連絡を取らなくなった菜帆のことを思い出していた。
なんであの時、別れようってハッキリ言わなかったんだろう。
目の前に菜帆が居て、気持ちがないと告げる度胸が無かったのかもしれない。菜帆を好きになりきれなかったのはこっちの問題で、傷付ける勇気が持てなかったのかもしれない。
『先輩に対してひでえ言い方だな』
思い付いたように、赤堀に返信した。
『同じテンションで返しただけです。そんな茶谷さんも、好きですよ』
相変わらず赤堀のメッセージはどこかおかしくて、あいつもしかすると相当歪んでんじゃねえかと疑った。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる