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第1章
年度の変わりと人事異動
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緑川との面談を終えて、藍木が営業企画部に、赤堀がマーケティング部に配属に決まった。
4月からは、また新卒社員が2名来ることになっている。会社にはずっと言ってるんだけど、毎年新人の面倒みるのは、正直だるい。
いや、絶対俺は向いてない、後輩の面倒とか。昔から年上にばかり可愛がられるところがあったし、後輩からの人望を集めたこともない。
ただ・・赤堀だけはちょっと違っていた気もする。あいつは、かなり俺に懐いていた。バレンタインに営業先から持たされたチョコをあげていたからかもしれない。餌付けに成功したか。
「茶谷さん、もう私たちって営業部を離れるじゃないですか」
「ああ、良かったな」
「そんな言い方しないで下さいよ」
それは、赤堀と藍木が営業に同行していた帰り道だった。赤堀に何故か寂しがられる。
「お前、営業志望じゃねえだろ」
「まあ、そうなんですけど・・もう茶谷さんと一緒に営業行くこともなくなっちゃうんですよね・・」
「ああ、良かったな」
「寂しがってくださいよ」
「何でだよ」
赤堀がこういう話をして付きまとって来る時、隣にいる藍木はひたすら笑っているだけだ。藍木のすごいのは、赤堀や俺に呆れたりせずに本当に楽しんでいるところだな。
「茶谷さんとこうやって営業行くのは、楽しかったです」
「へえ」
「あと、いつもすごいなあって思ってたし」
「当然だろ。新人にすごいと思われないレベルが、トップ取れる世界じゃねえよ」
こういうことを言う時の赤堀は、まあかわいいなと思う。藍木に比べると赤堀は男ウケしない格好ばっかりしている気がするけど、手足が長くてスタイルが良いのはさすが新人類だ。あと、男とのコミュニケーションが対等な目線でできてるから、こいつには兄貴がいる気がする。わざわざ家族構成とか聞かないけど。
「茶谷さんって、ほんっと謙遜しないですね」
「後輩に謙遜するほど人間出来てねえんだよ」
「でも、そういうところ、結構いいなあって思ってました」
そんなことを言った赤堀の表情は、なんだか普段と違って見えた。感慨にでもふけってんのかな。大して面倒見た気もしないけど、俺も随分と懐かれたもんだ。
赤堀がマーケに行ったら、仕事の無理難題を振ることになるだろう。お前、ほんと頑張れよ。
4月からは、また新卒社員が2名来ることになっている。会社にはずっと言ってるんだけど、毎年新人の面倒みるのは、正直だるい。
いや、絶対俺は向いてない、後輩の面倒とか。昔から年上にばかり可愛がられるところがあったし、後輩からの人望を集めたこともない。
ただ・・赤堀だけはちょっと違っていた気もする。あいつは、かなり俺に懐いていた。バレンタインに営業先から持たされたチョコをあげていたからかもしれない。餌付けに成功したか。
「茶谷さん、もう私たちって営業部を離れるじゃないですか」
「ああ、良かったな」
「そんな言い方しないで下さいよ」
それは、赤堀と藍木が営業に同行していた帰り道だった。赤堀に何故か寂しがられる。
「お前、営業志望じゃねえだろ」
「まあ、そうなんですけど・・もう茶谷さんと一緒に営業行くこともなくなっちゃうんですよね・・」
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「何でだよ」
赤堀がこういう話をして付きまとって来る時、隣にいる藍木はひたすら笑っているだけだ。藍木のすごいのは、赤堀や俺に呆れたりせずに本当に楽しんでいるところだな。
「茶谷さんとこうやって営業行くのは、楽しかったです」
「へえ」
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「当然だろ。新人にすごいと思われないレベルが、トップ取れる世界じゃねえよ」
こういうことを言う時の赤堀は、まあかわいいなと思う。藍木に比べると赤堀は男ウケしない格好ばっかりしている気がするけど、手足が長くてスタイルが良いのはさすが新人類だ。あと、男とのコミュニケーションが対等な目線でできてるから、こいつには兄貴がいる気がする。わざわざ家族構成とか聞かないけど。
「茶谷さんって、ほんっと謙遜しないですね」
「後輩に謙遜するほど人間出来てねえんだよ」
「でも、そういうところ、結構いいなあって思ってました」
そんなことを言った赤堀の表情は、なんだか普段と違って見えた。感慨にでもふけってんのかな。大して面倒見た気もしないけど、俺も随分と懐かれたもんだ。
赤堀がマーケに行ったら、仕事の無理難題を振ることになるだろう。お前、ほんと頑張れよ。
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